ターフクラブ(Turf Club)は、競馬産業が結束を乱すのを嫌ってアナボリック・ステロイドを所有している者の通報に消極的であることに対し、不満を表明した。
フィリップ・フェントン(Philip Fenton)調教師と元獣医師のジョン・ヒューズ(John Hughes)氏がステロイド所有のかどで業務停止処分となったことを受けて、競馬統轄機関ターフクラブは、この問題への対応に多額の資金が必要であることや、農業省から受けた多くの支援、さらには、今年2月に発表された競技外検査(out-of-competition testing)の実施に加えて来年実施を計画している追加措置について語った。
ターフクラブのCEOデニス・イーガン(Denis Egan)氏は、ターフクラブが承知している範囲では懸案の事件はないが、それはアイルランドにステロイド問題が存在しないという意味ではないと強調し、次のように述べた。
「私たちはこの戦いに勝利しつつあると考えたいのですが、目下のところ定かではありません」。
「今のところアイルランド競馬界でステロイドが使用されている証拠は何もありません。ステロイドを輸入したいと考える者がいれば、その方法が数多くあることが主な問題で、その輸入規模を把握することは非常に困難です」。
「関係者が私たちと面と向かって会いたくないことは十分に承知していますが、違反となりそうな事案の情報を持つ人が私たちと会ってくれれば、私たちはその情報を極秘扱いに致します。情報源はその後も極秘扱いで、事件の一部として開示されることもありません」。
イーガン氏は次のように続けた。「アイルランド競馬界で薬物がどの程度使用されているか聞かれても、私たちには分かりません。ただそれを知っている人もいるので、私たちがこの問題に対処することができるよう、情報提供を奨励しています」。
「私たちは来年1月に新たな競技外検査手順を確立することを目指しており、また、常時禁止されている薬物の使用を確信させるような情報の提供に報奨金を支払うことにして、極秘の通報ラインを導入したいと思っています。これは禁止薬物との戦いにおいて非常に重要な部分です」。
資金調達は競馬産業の沈黙と同じぐらい大きな問題であり、ホースレーシングアイルランド(Horse Racing Ireland: HRI)はさらなる支援ができるだろうと、イーガン氏は述べた。
ターフクラブは十分に資金を得ているか聞かれ、イーガン氏は次のように語った。「資金は得つつあります。十分とは言えませんが、まだ承認されていないいくつかの分野で資金援助を申請し、もっと多くの資金で取り組んでいくことができるでしょう」。
「私たちは昨年この分野に多くの資金を費やしました。今後はさらに支出しなければならず、そのための資金提供についてHRIの支援を必要としています」。
フランスをはじめとする他の競馬国ですでに実施されている競技外検査プログラムにより、ターフクラブは調教中であるかないかを問わずあらゆる現役馬、そして1月1日以降にハント競走出走免許(hunter certificate)が付与されたあらゆる馬に対し薬物検査を実施することができるようになる。さらに、イーガン氏は検査中に薬物が見つかった場合これを押収する権限を職員に与えることにも取り組んでいる。
同氏は次のように説明した。「私たちは今年、農業省と共同で35件の検査を実施しており、今後さらに実施するつもりです」。
「非常に良い関係にあり、農業省の特別検査班からは格別な協力を得ています。1年前まではこのような関係を築けていませんでしたが、今ではその関係はとても強固なものになったと認識しています」。
「昨年はこの他に単独で100件の抜き打ち検査を実施しましたが、農業省職員を伴わなかったために、検査中に薬物を押収することができませんでした。現在この分野において私たちに権限を与えるルール制定の可能性を模索しておりますが、農業省は私たちが持つことのできない権限を依然として持ち続けるでしょう」。
農業省は、ヒューズ氏とフェントン調教師のいずれの事件においても、二人宛ての輸入薬物を途中で押収することに関与した。
By Jessica Lamb
[Racing Post 2014年11月28日「Turf Club chief in call for vigilance on steroids」]