BHA(英国競馬統轄機構)は3月25日、馬体内で許容されるコバルトの閾値(限界値)を定める新ルールがIFHA(国際競馬統括機関連盟)により合意され4月2日に発効すると発表した。
豪州のブラックキャビア(Black Caviar)を管理した有力調教師ピーター・ムーディ(Peter Moody)氏は、コバルト使用違反のために6ヵ月の調教停止処分を科され、調教師生活を終えることとなった。今回のコバルトに関する新ルールは、その後に発表されたものである。
競走当日におけるコバルトの新たな閾値は、尿1ミリリットル当たり0.1マイクログラムである。
BHAの上席獣医責任者であるジェニー・ホール(Jenny Hall)氏はこう語った。「英国競馬界において、コバルトがドーピング剤として使用されているという証拠は現在のところありません。近年実施された一連の調査では、この薬物が不適切に使用されている兆候はありませんでした」。
「しかし、公正確保と福祉に関わる全ての事柄において、英国競馬界が最前線に立ち続けることは重要です。これまでの英国のルールでも、この薬物の不正使用が判明すれば処罰することはできるでしょうが、閾値を設定することにより、薬物検査でコバルトが検出された場合に正式な決まりに基づいて処罰することができるようになります」。
競走能力向上薬としてのコバルトの効力は、かつて自転車ロードレースで蔓延した悪名高き薬物EPO(エポゲン Epogen)と共通するものがある。豪州競馬界では昨年、ムーディー調教師、ダレンスミス(Darren Smith)調教師、ダニー・オブライアン(Danny O'Brien)調教師、マーク・カヴァナー(Mark Kavanagh)調教師およびリー&シャノン・ホープ(Lee and Shannon Hope)親子がコバルト使用に関するルールに違反し、大きなニュースになった。
蹄鉄に関する新ルール
BHAは、上記の発表と併せ、蹄鉄装着ルールの変更についても発表した。
4月2日から、関係者が出馬投票前にBHAから許可を得ない限り、平地競走への出走馬は蹄鉄を完全に装着してパドックに入らなければならない。
この問題は当初、騎手協会(Professional Jockeys' Association: PJA)から持ちあがった。その後12ヵ月におよぶ研究により、馬が部分的にしか蹄鉄を装着されていない場合、芝コースで滑るリスクが高まることが示された。
PJAのCEOポール・ストラサーズ(Paul Struthers)氏はこう語った。「馬と騎手の福祉は私たちにとって最優先事項です。このルール変更は滑って転倒するリスクを軽減し、馬と乗り手の安全性を高めます。これにより平地騎手は常に高い信頼感を持って騎乗することができるでしょう」。
By Keith Melrose
(関連記事)海外競馬ニュース
2014年No.16「ヴィクトリア州、競走能力向上を目的としたコバルト使用を禁止(オーストラリア)」、
2015年No.5「ブラックキャビアの調教師の管理馬から禁止薬物コバルト検出(オーストラリア)」
[Racing Post 2016年3月25日「World racing authorities agree new cobalt limits」]