ジョアン・モレイラ騎手(32歳)は3月5日、シャティン競馬場で8勝を挙げたことで、自ら打ち立てていた香港の1競馬開催日における最多勝記録を塗り替え、すでに高いその評価をさらに押し上げた。
モレイラ騎手は最後から2番目のレースをマイティマーヴェリック(Mighty Maverick)で優勝して、最多記録となる7勝を挙げていたが、最終レースをプローンババ(Prawn Baba)で制したことでさらにこの記録を塗り替えた。
香港でマジックマンの異名をとるモレイラ騎手は、第1~4レース、第6レース、第8レース、第10~11レースを制して、またもや観客をあっと言わせた。
同騎手は香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)にこう語った。「どう言い表せば良いのかわかりませんが、素晴らしいことです。香港でこれを達成するのがどれだけ難しいかは分かっています」。
「正直なところ、このような記録を達成できるとは思っていませんでした。香港で1日に8勝もできるなんて、舞い上がるような気分です」。
最後から2番目のレースですでに7勝目を挙げていたモレイラ騎手は、それだけでは納得しなかった。最終レースでは、プローンババは馬群の中団にいて外側を走っていたが、最終コーナーを回ってからはゴールに向けて突進した。
ライバル馬も直線の入り口で良い動きをしているように見えたが、モレイラ騎手は貪欲な騎乗フォームであと1勝をもぎ取るために急伸した。
実況アナウンサーはこう叫んだ。「魔法の杖を振り、煙を吹きかけ、マジックマンは帽子の中から8勝目を取り出しました!」
モレイラ騎手はこの日、全11レース中10レースで騎乗して8勝を挙げた。レース後、この快挙を祝うためにシャンパンファイトが行われ、同騎手は仲間にシャンパンをかけられた。
これまで香港で1開催日に6勝が達成されたことは4回あるが、そのうち2回はモレイラ騎手によるものである。
ブラジル出身のモレイラ騎手は香港のほかに、シンガポールでは8戦8勝、札幌競馬場では6勝を達成している。
マジックマン、世界最多まであと1勝
モレイラ騎手の今回の快挙は1開催日における最多勝の世界記録ではないが、以前1開催日に8勝を達成したとき、同騎手は異なるカテゴリーでの世界記録を打ち立てている。2013年9月6日にシンガポールのクランジ競馬場で8戦8勝を果たしたとき、競馬史において誰も達成したことのないパーフェクトデーを達成した。つまり、無敗の最多勝である。
モレイラ騎手はそのナイター開催(全9レース)において、最初の4レースを制した後、見習騎手戦である第5レースには騎乗しなかったが、その後の4レースで優勝した。
1開催日における最多勝の世界記録は、2005年6月4日にエディー・カストロ(Eddie Castro)騎手がコールダー競馬場(フロリダ州)で達成した9勝である。
カストロ騎手はその日、全13レースのうち11レースに騎乗した。そしてスナッグハーバー(Snug Harbour)でオフィスクイーンSを制すなど、9勝を挙げた。
このパナマ出身の騎手は2003年に北米最優秀見習騎手としてエクリプス賞を受賞し、2006年にミエスクズアプルーヴァル(Miesque's Approval)でBCマイル(G1)を制した。
クリス・アントレー(Chris Antley)騎手も1987年10月31日に1日9勝を達成したが、これは同一開催ではなかった。午後にアケダクト競馬場で4勝し、夜にメドウランズ競馬場で5勝したのだ。
世界中を見れば、1開催日に1敗以上したものの8勝を達成した騎手は何人かおり、パット・デイ(Pat Day)氏や武豊騎手もその快挙を果たしている。クリストフ・ルメール騎手も4ヵ月前に東京競馬場で8勝を達成した。
英国の1開催日における最多勝記録はフランキー・デットーリ騎手により樹立されたことは有名である。同騎手は1996年9月28日にアスコット競馬場で、マークオブエスティーム(Mark Of Esteem)でクイーンエリザベス2世S(G1)を優勝するなど7戦全勝を達成した。リチャード・ヒューズ(Richard Hughes)元騎手も2012年10月15日にウィンザー競馬場で7勝を達成したが、1敗を喫している。
パット・エデリー(Pat Eddery)氏も1992年6月26日に1日7勝を達成したが、それは2つの開催にまたがり、午後にニューマーケットで3勝し、夜にニューキャッスルで4勝を果たしたものである。
By Peter Scargill
[Racing Post 2017年3月5日「Moreira stuns Sha Tin with record-breaking eight winners」]