海外競馬ニュース 2017年04月20日 - No.16 - 4
EU離脱プロセス開始でジブラルタルの賭事産業に緊迫ムード(イギリス)[その他]

 ジブラルタルで遠隔賭事を営むブックメーカーは、リスボン条約第50条に基づき欧州連合(EU)離脱のプロセスが始まったことを受けて、ジブラルタルを巡る緊迫した雰囲気に巻き込まれないようにしている。

 EUが3月31日に離脱交渉ガイドラインを提示したことを受け、この騒動は引き起こされた。離脱交渉ガイドラインには、「英国がEUを離脱した後、その離脱合意内容はスペインと英国の合意なしにはジブラルタルに適用されない」と記されている。

 元保守党党首のハワード卿(Lord Howard アリーナレーシング社元会長)が、「35年前にサッチャー首相が英領フォークランド諸島をアルゼンチンから守ったように、メイ政権もスペインからジブラルタルを守るために戦争をする覚悟があるだろう」と述べたことで、緊張が高まった。

 ジブラルタルの賭事産業は、約3,000人を雇用しているほかに、約1,000人の間接雇用があると見込まれており、その多くが国境のスペイン側に住んでいる。

 ジブラルタル賭事ゲーミング協会(Gibraltar Betting and Gaming Association)の代表者たちは4月3日、コメント要求に応じなかった。

 しかし、ウィリアムヒル社(William Hill)のコミュニケーション部長であるキアラン・オブライエン(Ciaran O'Brien)氏はこう語った。「このような誇張は抑えきれません。正式な交渉で議論されるときには、両者ともこの問題をデリケートに取り扱うことでしょう。しかし、このような発言は監視し続けなければなりません」。

 ラドブロークス社(Ladbrokes)のメディア部長であるデヴィッド・ウィリアムズ(David Williams)氏は短い声明において、通常通り賭事事業が継続されることを期待していると述べた。

 そして、「弊社は長年ジブラルタルで賭事を運営してきており、今後もそれを維持することを望んでいます」と語った。

 ジブラルタルの賭事産業のある上級職員は、長年、賭事部門の廃止が予想されてきたが、すべての障害は克服されてきたと述べた。

 しかしこの人物は、「とは言え、英国のEU離脱、とりわけスペインとの国境問題に発展する可能性は、これまでで一番大きな問題です」と付言した。

 遠隔賭事協会(Remote Gambling Association)のCEOクライヴ・ホークスウッド(Clive Hawkswood)氏はこう語った。「ジブラルタルは、オンライン賭事産業にとって非常に重要な拠点であり続けています。それを危険にさらす可能性があるものはすべて、懸念要因となるでしょう」。

 シェンゲン国境規則(Schengen Borders Code)の改定を受けて、4月7日から出入国に厳格な審査が義務付けられるので、スペインとの国境問題は、英国がEUを離脱するかなり前から重要な要因となるだろう。

 EU内の多くの国境の自由な移動を可能にするシェンゲン協定にジブラルタルと英国は加盟していないが、スペインは加盟している。このためスペイン当局は4月7日から、ジブラルタルを車あるいは徒歩で行き来するすべての人物に審査を実施しなければならない。

By Bill Barber

[Racing Post 2017年4月3日「Bookmakers refuse to be drawn into Gibraltar Brexit row」]