オークションでは、稀有なもの、平凡なもの、そして時には全く奇妙なものなど、実に様々な品が登場する。
11月13日にニューボンドストリートのサザビーズ(Sotheby's)で開催される、年に一度のグラハム・バッド社競馬オークションに出品予定の1点は、間違いなく奇妙なもののカテゴリーに入るだろう。
伝説の名馬エクリプス(Eclipse)は、競馬界に消すことのできない足跡を残した。そして今年は、その歴史的名馬の保存されてきた皮の一部を購買するチャンスが到来する。
18世紀に無敗の18勝を達成したエクリプスの優れた能力は競馬場に留まらず、種牡馬になっても大いに発揮され、全サラブレッドの約95%の血統はエクリプスにたどり着くという驚くべき状況となっている。
"エクリプスの皮(Skin of Eclipse)"とインクで書かれた栗色の皮は、額に入れられて展示されており、本物であるという手書きの証明書が付いている。
これは存在が確認されている2枚のエクリプスの皮の1枚である。もう1枚はニューマーケットの国立競馬博物館に展示されており、第6代ローズベリー伯爵(6th Earl of Rosebery)がジョッキークラブに寄贈したものである。
この競馬史に残る珍しい品には、世界中の注目が集まっており、1万5,000~2万ポンド(約218万~290万円)で落札されると予想されている。現在の所有者は、熱心な競馬ファンであった祖父からこの皮を相続していた。
1789年にエクリプスが24歳で死んでから、競馬界は同馬のかけ離れた能力と魅力を探るための調査に着手した。
獣医師のヴィアル・ド・サンベル(Vial de Saint Bel)氏は、英国で初めて公式に記録された死体解剖を実施した。
サンベル氏の最も有名な研究成果は、エクリプスが平均的なサラブレッドよりも少なくとも25%大きな心臓を持っていたという事実を発見したことである。トップクラスの馬は大きな心臓を持つ傾向があり、もう1頭の有名な例はセクレタリアト(Secretariat)である。
サンベル氏の研究業績は、エクリプスの骨格を所有する現在の王立獣医大学の前身となる獣医大学の創設につながった。
このエクリプスの皮は、残存している唯一の同馬の遺物ではない。蹄の1つはレースのトロフィーに姿を変え、エクリプスの尻尾の毛とたてがみは"ニューマーケットチャレンジ"の鞭に織り込まれている。いずれもジョッキークラブが所有している。
By David Baxter
(1ポンド=約145円)
[Racing Post 2017年7月5日「A piece of racing history - but not for the fainthearted」]