双子のミスターピン(Mr. Ping)とミスターポン(Mr. Pong)が4月6日(金)、チャールズタウン競馬場の第4レースで一緒にデビューする。
馬の双子、とりわけサラブレッドの双子の出産は、母子ともに危険に晒される。そのため、2頭が無事に生まれることは珍しい。サラブレッドの妊娠のうち約10%は双子である。しかし、そのほぼすべては獣医師によって1頭を堕胎させられるか、2頭とも流産してしまうか、あるいは合併症により少なくとも1頭が死産となってしまう。
出産後も困難は続き、双子の馬は調教を受け始めた段階で競走馬になる以外の進路を歩まざるを得ないことが多い。しかし、未出走馬ワシントニアン(Washingtonian 父ドメスティックディスピュート)を母とする双子の3歳馬(父デニスオブコーク)は、何とかデビューまでこぎつけた。
双子は、アマンダ・モロ(Amanda Morro)氏のアヴォンウッドファーム(Avonwood Farmウエストバージニア州チャールズタウン)で生まれた。オーナーブリーダーはジョン・P・ケイシー(John P. Casey)氏。最初の超音波検査では、母馬が双子を身ごもっていることは判明しなかった。そして体高およそ17ハンド(約173cm)のワシントニアンは、様々な妊娠時の合併症の心配から、予定よりも早くアヴォンウッドファームに到着した。
ラリー・カーティス(Larry Curtis)調教師は、「ワシントニアンは双子を身ごもっていましたが、馬体がとても大きかった以外は、その兆候を示していませんでした。しかし、彼女は妊娠前も大きかったので、私たちは双子が中にいるなどとは思ってもみませんでした」と語った。
分娩が始まったとき、いつもなら仔馬の2本の脚が出てくるのに、4本の脚が出てくるのをモロ氏は目の当たりにし、「これは閉塞性分娩で、難産になりそうだ」と考えた。獣医師が到着するまで、同氏は仔馬を適切な位置で支えようとした。まずミスターピンが現れ、その数分後にミスターポンが姿を見せた。
栗毛の双子には派手な作(額より鼻筋を経て鼻に続いている白斑)がある。ミスターピンは、母のソックス(肢の前膝や飛節よりも低い位置の全周を取り巻く白徴)を受け継ぐが、体は小さくてか弱く、体重は約25ポンド(約11kg)しかなかった。それに比べ、ソックスのないミスターポンは70ポンド(約32kg)近くあり、着々と成長していった。
モロ氏はこう語った。「通常、一方が他方より大きく、小さいほうの仔は大抵生き残ることができません。多くの場合、双子の仔馬は死産となります。ミスターピンはとても発育が遅れているように見受けられたので、手が掛かるだろうということは分かっていました」。
「私は約2週間、馬房の中で寝ました。そして約10日間、哺乳瓶でミルクを与えました。この仔馬が母馬の乳房に届くぐらい大きくなると、私たちは交代で彼の育成を手伝いました。彼は日に日に強くなりました」。
ミスターピンは生後数ヵ月間、生命を脅かされ続けた。しかし、生後6ヵ月には弟と一緒に離乳できるほど健康に育っていた。カーティス調教師はミスターポンを連れて行き、ミスターピンはさらに世話が必要だったのでモロ氏のもとに残った。ミスターピンは弟ほどの大きさにはならなかったが、最終的に合流して調教を受けられると判断された。
カーティス調教師は当然、2頭の中では発育の良いミスターポンの方が活躍するだろうと考えていた。しかし、2頭ともそれなりに体力があると述べた。
カーティス氏はミスターポンについてこう語った。「ミスターポンは、ミスターピンよりも多少成長が早く、才能があるところを見せていました。ただ、動きはあまり良くありません。一方、ミスターピンはミスターポンより少し敏捷な動きを見せていました」。
ミスターポンは、金曜日のデビュー戦(約900m)の予想オッズでは、2番人気の単勝4倍で支持され、ミスターピンにはそれほど差のない4.5倍のオッズが付いていた。
モロ氏は、アヴォンウッドファームのスタッフは大勢で競馬場に駆けつけ、双子が出走するレースを観戦するだろうと語った。この2頭が母乳を飲む様子を映した写真がフェイスブックに掲載されたことで、すでに多くの人々がこの双子をフォローしている。
モロ氏は、「フェイスブックのページは3万4,000人もの人に閲覧されています。私たちは特製のTシャツを着て、彼らを応援しに行くでしょう。良い走りができることを望んでいます」と語った。
カーティス調教師は、デビュー戦よりも長い距離の方が双子に向いていると考えている。しかし、2頭がレースでどのようなパフォーマンスをするかに関わりなく、すでに競走引退後のキャリアに可能性を見出している。
同氏はこう付言した。「ミスターポンは気質が本当に良く、いつか素晴らしい乗馬となるでしょう。ミスターピンは競走生活を終えたら、素晴しいポロ競技用の馬となるでしょう。しかし願わくは、彼らを競走させて、2勝ぐらい挙げさせたいと思います。彼らは現役を引退すればそれぞれふさわしい拠点を見つけるだろうと、確信しています」。
(訳注:ミスターポンとミスターピンは金曜日の6頭立てのレースで、それぞれ5着と6着になった。2頭の着差は½馬身)。
By Joe Nevills
[drf.com 2018年4月4日「Rare twins to debut together at Charles Town」]