英国政府は賭事賦課金の徴収範囲を、英国内で提供される"海外競馬を対象とした賭事"にまで拡大するかもしれないと発表した。BHA(英国競馬統轄機構)はこれによって、ベッティングショップのゲーム機"FOBT(固定オッズ発売端末)"の賭け限度額の大幅引下げで見込まれる損失の3分の1以上を補填できると考えている。
BHAの予測によれば、FOBTの賭け限度額を100ポンド(約14,500円)から2ポンド(約290円)にまで引き下げる政府決定が2~3年後に実施に移されれば、多くのベッティングショップが閉鎖に追い込まれ、競馬界の収入は年間4,000万~6,000万ポンド(約58億~87億円)減少するかもしれない。
マシュー・ハンコック(Matthew Hancock)文化大臣は同省のスタッフに対し、海外競馬を対象とした賭事からどのように賦課金を徴収するかを競馬界とともに検討するよう命じた。BHAのCEOニック・ラスト(Nick Rust)氏はこれを受け、アイルランド競馬を対象とした賭事からも徴収されることになるので、ここから得られる賦課金収入は1,500万~2,000万ポンド(約21億7,500万~29億円)と見込まれると述べた。
ラスト氏はこう語った。「アイルランド競馬界は、愛国内で提供される"英国競馬を対象とした賭事"から収益を挙げてアイルランド競馬の財源としています。英国では現在、アイルランド競馬は賦課金徴収範囲に入っていませんが、もしそうなれば賦課金収入を増加させる最大の財源となるでしょう」。
「海外競馬を対象とした賭事から徴収できる賦課金は、1,500万~2,000万ポンドに上るかもしれません。もしこれが実施に移されるのであれば、今後2~3年間に生じることが見込まれる減収額を半減させる唯一の方法となるでしょう」。
「競馬と競馬が関係する農村経済を支えるために、政府が競馬界を支援する方法について、私たちは政府とともに話し合うことに関心を抱いています」。
さまざまな議論の中でもとりわけ目立っていたのは、"粗利益への賦課"を"ブックメーカーの発売金をベースとした賦課金"に戻す可能性についての議論である。しかし、ラスト氏はこの議論をさらに一歩進めることは時期尚早だと語った。そして、ブックメーカーがベッティングショップの営業を続けられるようにメディア権料を引き下げるかどうかについては、権利者(競馬場)次第であると述べた。
ラスト氏は、ビッグレースを中心にボーナスを提供するブックメーカーのオンライン賭事に最小限の手数料を要求することにはメリットがあると述べた。
ラスト氏はこう続けた。「政府は賭事依存症患者を保護するための対応策を取ることで、断固とした姿勢を見せました。FOBTの有害性についてははっきりとした証拠があり、対策を講じることに社会的関心が向けられ、超党派の支援があります」。
しかし同氏は、FOBTの賭け限度額の引下げによって、競馬の健全性が損なわれることは、少なくとも短期的にはないと"はっきり確信している"と述べた。
そして、「政府は競馬界に対し緩和策を取ることを約束しています。また、文化大臣は競馬界に対し、他の競馬国に合わせて海外競馬を対象とした賭事からの賦課金徴収を検討するように指示しています」と語った。
ラスト氏はこう付言した。「現在、FOBTの賭け限度額の引下げの影響を受けない2018年の競馬開催と資金調達に専念しています。競馬賭事賦課公社(Levy Board)の収入も堅調です。それゆえ、急いで実行に移すには及ばず、状況が落ち着くのを見る必要があります」。
「2週間前に2019年競馬開催日程とそれに関連する財源についての発表を行いましたが、現時点で変更する予定はありません。その時点で、FOBTの賭け限度額が大きく引き下げられるだろうということや、競馬は好調な状況にあることは認識しており、発表内容はそれらを踏まえたものです」。
「しかし、多くの良好な経済指標が示されており、4,000万~6,000万ポンド(約58億~87億円)の減収が見込まれるのは2~3年後のことです」。
「そのうち緩和策が取られますし、競馬界が過去18ヵ月間行ってきた将来への投資が今後も続けられることを、切に願っています」。
「私たちは前進することに順応しなければならないのかもしれません。しかし、競馬賭事における基本的な傾向を考えてみてください。現役馬頭数や現在の政府からのサポートを考慮すれば、今後数年間において競馬が健全な状態を保つことに自信を持っています」。
By Jon Lees
(1ポンド=約145円)
[Racing Post 2018年5月18日「BHA looks to foreign racing in bid to limit the damage」]