今年際立って活躍したアルファセントーリ(Alpha Centauri)とサクソンウォリアー(Saxon Warrior)はいずれも、9月15日(土)にレパーズタウン競馬場で出走した際に故障を発症し引退することとなった。
アルファセントーリは今シーズン、愛1000ギニー(G1)、コロネーションS(G1)、ファルマスS(G1)、ジャックルマロワ賞(G1)を制し、大きな注目を浴びていた。
ニアルコスファミリー(Niarchos family)が所有するこの牝馬は、ジェシカ・ハリントン(Jessica Harrington)調教師に管理された。G1・5連勝を目指してメイトロンS(G1)に出走したが、勝利に向けて突き進むライバル馬ローレンス(Laurens)に反撃せず¾馬身差で敗れた。
しかし、アルファセントーリは左によれ、残り1ハロン(約200m)を切ってスパートを掛けようとしているときに躓いたように見えた。レース後に臨床診断により異常があると伝えられた。球節に骨片があることが明らかになり、16日(日)には、彼女の驚異的なキャリアを終わらせることが決定された。
ニアルコスファミリーのレーシングマネージャーを長年務めるアラン・クーパー(Alan Cooper)氏は、こう語った。「アルファセントーリの右前肢の球節には骨片があり、獣医師および調教師と話し合い、引退させることが決まりました。今シーズン彼女が我々に与えた喜びは夢のようなものでした。メイトロンSでは理想からかけ離れた状態でしたが、とても勇敢でした。立派な牝馬でした」。
ハリントン調教師はこう語った。「アルファセントーリのおかげでいまだかつてないような夏を過ごしました。私にとって彼女は初めてのクラシック優勝馬・ロイヤルアスコット勝馬であり、またフランスでの最初の勝馬となりました。何もかも初めてずくめでした。ニアルコスファミリーにはどれだけ感謝しても足りません。今後、もっと精進しなければなりません。彼女を管理することができたのは、信じられないほど素晴らしい経験でした。彼女が成し遂げた偉業を誰も過小評価できないでしょう。誰もが目にしたように、メイトロンSであのような怪我を負いながら走り続けてもう1頭の優良牝馬の2着を確保したことは、アルファセントーリがどれほど凄い馬であったかを存分に物語っています」。
アルファセントーリの通算成績は10戦6勝。獲得賞金は125万4,827ポンド(約1億8,195万円)。全てのレースでコルム・オドノヒュー(Colm O'Donoghue)騎手とコンビを組んだ。同騎手はこう語った。「アルファセントーリは最高レベルのレーティング(124ポンド)を獲得した牝馬として引退します。今シーズンは最も優秀な3歳牝馬として君臨していました。他馬を撃退するだけでなく圧勝し、心を挫けさせました。私のキャリアにおいてとても大きな存在でした。彼女とコンビを組めたことはとても光栄でした」。
「メイトロンSでは、ゲート順に満足していましたし、道中でのアルファセントーリの手ごたえは抜群でした。私はただ彼女を馬群から離して落ちつかせていました。その後、彼女は勢いを増して上がって行きました。着実に前進していましたが、そのときに躓き、失速しました」。
一方、サクソンウォリアーも、昨年のレーシングポストトロフィー(G1)や今年の英2000ギニー(G1 ニューマーケット)を制したトップクラスの競走馬だった。
同馬は5連敗したが、それらのレースでも立派なパフォーマンスを見せた。ロアリングライオン(Roaring Lion)に首差で敗れたスリリングな愛チャンピオンS(G1 9月15日 レパーズタウン競馬場)もその1つだ。
サクソンウォリアーは10月のクイーンエリザベス2世S(G1)に出走予定だったが、エイダン・オブライエン調教師は9月16日(日)に同馬を引退させることを発表した。
同調教師はこう説明した。「レパーズタウン競馬場から厩舎に帰るときに、サクソンウォリアーの歩様がややおかしかったのでバンデージを巻きました。そして今朝になってそのバンデージを取ってみると、腱にひどい腫れが見られました。ジョン・ハレー(John Halley)獣医師はサクソンウォリアーを診察しCT検査した後に、屈腱をひどく損傷していると言いました」。
「ライアン・ムーア騎手は愛チャンピオンSの後、サクソンウォリアーは内埒沿いを走っているときにいつもと違って先頭に立ちたがったと話していました。ライアンは全く鞭を入れずサクソンウォリアーの意のままに走らせました。わずか首差で敗れましたが、彼は自らがどれだけ勇敢な馬であるかを見せつけたのです」。
オブライエン調教師はさらにこう述べた。「彼を引退させなければならないのは大変残念です。優秀な馬で、英2000ギニーでは最高のパフォーマンスを見せました。私たちは彼を1マイル半(約2400m)の英ダービー(G1 エプソム)に出走させましたが、エプソムは彼に向いていなかったと思ったので愛ダービー(G1 カラ)にも参戦させました。その1週間後にエクリプスS(G1 サンダウン)にも挑戦させましたが、レース間隔が短かったにもかかわらず素晴らしいレースをしました」。
「エクリプスSの後にひどい病気に罹りましたが、英インターナショナルS(G1 ヨーク)には出走できる状態でした。今回サクソンウォリアーが英インターナショナルSよりもずっと進化していることは分かっていました。彼は私たちの期待に応え、レパーズタウン競馬場でその実力を見せつけました。彼の適性距離はマイルだったかもしれません。いずれにせよ才能溢れる競走馬で、トップクラスでした」。
ディープインパクト産駒のサクソンウォリアーはクールモアパートナーズに所有された。通算成績は9戦4勝。獲得賞金は111万2,467ポンド(約1億6,131万円)。
By Richard Forristal and Tony O'Hehir
(1ポンド=約145円)
[Racing Post 2018年9月17日「Massive double injury blow as Alpha Centauri and Saxon Warrior are retired」]