ニック・ウィリアムズ(Nick Williams)氏は、メルボルンカップ(G1)への海外調教馬の出走を制限すべきとの声があがっていることを受け、豪州とニュージーランドの生産界に課題を投げ掛けた。
この豪州最高峰のレースの歴史において、6勝を果たし最も成功している馬主ロイド・ウィリアムズ(Lloyd Williams)氏の息子であるニック・ウィリアムズ氏は、メルボルンカップ(3200m)への海外調教馬の出走を制限すべきではないと述べた。
同氏は、近年上位に食い込んでいる欧州の強豪馬と互角に戦うには、地元の生産馬はただ単に力不足であると述べた。
ウィリアムズ氏はラジオ番組『レーシングパルス(Racing Pulse)』においてこう語った。「ヴィクトリアレーシングクラブ(Victoria Racing Club)あるいはレーシングヴィクトリア(Racing Victoria)はメルボルンカップへの海外調教馬の参戦を制限してはならないと、私は考えています」。
ウィリアムズ氏は過去6年のメルボルンカップ優勝馬のうち3頭(全て欧州産)の共同馬主である。
2012年優勝馬グリーンムーン(Green Moon 愛国産)と2016年優勝馬アルマンダン(Almandin 独国産)は豪州に輸入された後に、マセドンロッジ調教場(Macedon Lodge)でロバート・ヒックモット(Robert Hickmott)調教師に手掛けられた。一方、2017年優勝馬リキンドリング(Rekindling)はアイルランドのジョセフ・オブライエン(Joseph O'Brien)調教師に管理された。
ウィリアムズ氏は、「スピード馬の生産にますます重点が置かれていることを考えれば、地元における優良ステイヤーの不足は、誰にとっても驚くべきことではありません。そのため、私と父は外国に目を向けざるを得ませんでした」。
同氏は単刀直入にこう語った。「豪州人がステイヤーの生産に長けていないことは事実です。なぜそれが得意でないかについて、私にはある考えがあります。生産者たちがステイヤーを重視してこなかったので、調教師たちは質の高いステイヤーを手掛けられなかったのだと思います。それゆえ、馬を輸入しなければならない事態が生じています」。
「本当は、豪州やニュージーランドの生産馬を買いたいと思っています」。
「過去50年において、私たちほど多くの豪州産馬・NZ産馬を購買してきた一族はいないでしょう。私たちにとって地球の裏側で生産された馬を購買するのは、嬉しいことではありません」。
「それよりも、カラカ1歳セールやイングリス社のセリ(シドニー)に行き、傑出した中距離馬やステイヤーとなる見込みのある馬を買いたいと思っています」。
ウィリアムズ氏によれば、2015年のザビール(Zabeel)の死亡がこのぽっかりと空いた穴を作った。ザビールは2007年のエフィシエント(Efficient)をはじめ3頭のメルボルンカップ優勝馬を送り出した。
同氏はこう語った。「ザビールは競馬界に本当に多くの優良ステイヤーを送り出しました。素晴らしい種牡馬でした」。
「私たちの所有馬にもその傾向は見られますが、ジャメカ(Jameka)やウィンクス(Winx)のような怪物級の馬を手に入れないかぎり、同世代で競い合うオークスやダービーが終わってしまえば、それなりのレースに馬を出走させるチャンスはありません。したがって、低レベルの馬と競うレースに馬を出走させるのですが、それは私たちが望んでいることではありません」。
ウィリアムズ氏は、最近引退した欧州最優秀長距離馬オーダーオブセントジョージ(Order Of St George)を共同で所有している。そして、豪州のステイヤーが息を吹き返す一助とするために、同馬をシャトルしたいと考えている。
同氏はこう付言した。「オーダーオブセントジョージがニュージーランドで供用されるのを見たいと思っています。ニュージーランドはこれまでステイヤーの拠点であり、これからもそうであり続けるでしょう」。
「ニュージーランド人はステイヤーを生産し育成するのにとても長けています。ただここ数年は本当に優れた種牡馬を供用できず、優秀な仔を出せるように繁殖牝馬の質を高めることができないでいました」。
By Brad Bishop
[Racing Post 2018年9月13日「Melbourne Cup winning owner laments lack of Australasian stamina breeding」]