改築工事後のパリロンシャン競馬場における初めての凱旋門賞開催日では、一般入場券の価格が著しく引き上げられただけでなく、来場者は飲食・トイレ・馬券購入のために長い行列を作らなければならなかった。このことは、フランスギャロ(France Galop)に寄せられる批判の中に盛り込まれるだろう。
英国とアイルランドから同競馬場に足を運んだ競馬ファンは10月7日、その日経験したことについて厳しい意見をぶちまけたが、その翌日になっても大きな不満を表し続けた。そして彼らの多くが、二度と凱旋門賞開催日にパリロンシャン競馬場には行かないと明言した。
パリロンシャン競馬場の総工費1億4,100万ユーロ(約183億3,000万円)のグランドスタンドは、10月7日に最初の大きなテストに臨んだが、来場者の意見の大半は"惨めにも落第した"というものだった。
フランスギャロは10月8日、「現地で業務に当たったさまざまなチームから詳細な報告書が提出されるのを待っています。それぞれの観点から凱旋門賞開催日がどのようなものだったかについて意見を出してもらい、それについて話し合います」と述べた。
そのうち、一般入場券に75ユーロ(約9,750円)を支払った来場客の意見が伝わってくるだろう[長年、一般入場券は10ユーロ(約1,300円)だった]。
フランスギャロは、"長蛇の列"、"食べ物の売切れ"、"PMU(フランス場外馬券発売公社)の窓口で馬券がなかなか買えなかったこと"のために、前回のロンシャン競馬場での凱旋門賞開催日と比べて入場者数が激減したこと、そして天気の面では恵まれていたのに来場者の満足度が下がってしまったことに留意しなければならない。
前回ロンシャン競馬場で施行された2015年凱旋門賞開催日の入場者数が5万2,000人だったのに対し、今年の入場者数は3万5,000人にとどまった。
レーシングポスト紙の読者グラハム・レイフィールド(Graham Leyfield)氏はこう語った。「凱旋門賞開催日の体験はまさにひどいものでした。多くのスポーツイベントを現地で観戦してきましたが、これまでで最もイライラするものの1つでした。あれだけの観客がいるのに、軽食を出す売店は3つしかありませんでした。まず支払いに45分以上待ち、注文したものを受け取るのにさらに待たされました。英国で同じような規模のイベントがあれば、4倍~5倍の売店が営業していたことでしょう。PMUでの馬券購入にもイライラさせられました。しかし、最悪だったのは男性用トイレを利用しようとしたときだったかもしれません」。
ロンドンから来たポール・フィールダー(Paul Fielder)氏はこう語った。「凱旋門賞を見るためにパリに来たのは10回目です。しかし今回ひどい目に遭ったので、11回目はないですね。飲食したり、トイレに行ったり、馬券を買ったりするたびに、行列に並ばなければなりませんでした。大勢のスタッフがいましたが、そのほとんどは、観客が場内のいくつかのエリアに入ろうとしたときに制止する係でした。どうしたらこんなに計画性のないことができるのでしょうか?彼らは白紙の状態から、現代的ニーズに応える競馬場に改築しましたが、その計画は惨めにも失敗しました」。
同じくロンドンから来たアラン・カー(Allan Kerr)氏はこう記している。「大変がっかりしました。もう二度と来ないでしょう。一般入場券が75ユーロ(約9,750円)もしたことにもショックを受けました。新しいグランドスタンドには座るところも、立っているところもありませんでした。まずくて高い料理や、すごく高いアルコールを買うために、45分以上待たされました。凱旋門賞を見るために何度もロンシャンに来ましたが、レース観戦、飲食物の質、雰囲気については以前の方がずっと良かったです」。
ツイッター上にはこのようなコメントがあった。「パリロンシャン競馬場に着いてすぐに入場料35ユーロ(約4,550円)のアークガーデンズに行きましたが何も見えないので、50ユーロ(約6,500円)支払って席種をアップグレードしました。食べ物を購入するために2つの列に並びましたが、"売切れ"と言われるだけでした。40分並んで買えたのは欲しかったホットドックではなくチーズサンドイッチでした」。
馬券については、「PMUの窓口は全然足りていません。以前は中央ホールに100ほどの窓口があったのに、今では10ぐらいしかありません。私は発売端末を操作できますが、できない人も沢山います」というコメントが見られた。
さらには、「新しいグランドスタンドは綺麗で、案内がうまく表示されています。それに最高に素晴らしいパドックも健在です。1つ否定的な点を挙げるとすれば、飲食物の提供です。チェルトナム競馬場でまだ第2レースが終わったところなのにハンバーガーが売り切れている様子を想像してみてください!」というコメントもある。
PMUの発売金は実際のところ、1年前のシャンティイ競馬場での凱旋門賞開催日に比べ、全レースで見ても(11.5%増)、凱旋門賞だけで見ても(7.4%増)大幅に増加した。もっと増えたかもしれないが、馬券購入のために行列することを諦めた人が多かった。
アレックス・ドノヒュー(Alex Donohue)氏はフランスギャロに一筋の光明を与えた。「"今年の凱旋門賞開催日は長い列に並ばなければならず楽しくなかった"という多くの意見に賛成します。しかし、彼らにもう一度チャンスを与えたいと思います。なぜなら、適切に運営されれば、英国で最高の競馬イベントに匹敵するかそれを超えるものになると思うからです」。
「このように改装直後に生じた問題で、驚くほど色彩豊かな凱旋門賞開催日を台無しにしたくはありません」。
不満げな英国とアイルランドの競馬ファンが来年戻って来ないとすれば、パリロンシャンの失敗はITVにとっては有利となる。ITVは、今年の凱旋門賞の視聴率はエネイブルとシーオブクラス(Sea Of Class)の対決のおかげで堅調だったと報告した。
ITVでの2018年凱旋門賞の視聴者は91万1,000人に達し、2017年の82万9,000人よりも9%増加した。
By Scott Burton
(1ユーロ=約130円)
[Racing Post 2018年10月8日「Longchamp facilities under fire as unhappy racegoers wrestle with long queues」]