チャーチルダウンズ競馬場の最後の直線では4頭の持久戦が繰り広げられた。BCクラシック(G1 約2000m)を1馬身差で制したのは、アクセラレイト(Accelerate 牡5)だった。同馬を管理するジョン・サドラー(John Sadler)調教師にとっては、これがブリーダーズカップ開催での念願の初勝利となった。
南カリフォルニアを拠点とする同調教師は、30年前からブリーダーズカップ開催に管理馬を出走させている。41戦0勝で迎えた今年のブリーダーズカップ開催(11月2日・3日)では、BCダートマイル(G1)で1.8倍の1番人気を背負ったカタリナクルーザー(Catalina Cruiser)が掲示板を外すなど3日(土)に3敗を喫し、連敗記録は44に伸びていた。
しかしアクセラレイトは、BCクラシックにおいて、目を見張るようなパフォーマンスでG1・4連勝を果たした。
サドラー調教師は、「感激しています。今年の日々の積重ねが開花したのでしょう。大勝利を挙げるのにこれ以上良い日はありません」と述べた。
アクセラレイトは大外の14番枠に入るのを嫌がり、ゲートボーイが何度か促さなければならなかった。昨年のBCジュベナイルターフ(芝G1)の優勝馬メンデルスゾーン(Mendelssohn)が先頭に立ち、ペンシルベニアダービー(G1)優勝馬マッキンジー(McKinzie)がそれを追跡していた。また、ドバイワールドカップ(G1)優勝馬サンダースノー(Thunder Snow)は内側に入り込んでいた。
ジョエル・ロザリオ(Joel Rosario)騎手を背に最終コーナーに差し掛かったアクセラレイトは4頭の外側を回り、優位な状態で最後の直線に向かった。コーナー直後、クリストフ・スミヨン騎手はサンダースノーを先頭に立たせ内側から挑戦してきた。アクセラレイトはサンダースノーが疲れるまで力強く走り続けた。
同馬は2分2秒93でこのレースを制し、最後に飛び込んできたウッドワードS(G1)2着馬ガンナヴェラ(Gunnevera 父ダイヤルドイン)が2着となった。
アクセラレイト(父ルッキンアットラッキー 母イシューズ 母父オーサムアゲイン)はマイク・エイブラハム(Mike Abraham)氏によりケンタッキーで生産された。2014年キーンランド9月1歳セールにブルーウォーターセールズ社(Bluewater Sales)により上場され、エージェントのデヴィッド・インゴード(David Ingordo)氏により38万ドル(約4,370万円)で購買された。
サドラー調教師はその日、あまり上機嫌ではなかったようだ。BCフィリー&メアスプリント(G1)ではセルコート(Selcourt)の勢いがつかず、BCダートマイルではカタリナクルーザーは実力を発揮しなかった。そしてBCマイル(芝G1)ではカタパルト(Catapult)は僅差の2着となっていた。
同調教師は、まるで最後まで最高の馬を取っておいたかのように、こう述べた。「私はいつも最悪の事態に備えつつ、最善の結果を期待します。アクセラレイトのおかげで今日は最高の気分です。馬主のコスタ・フロニス(Kosta Hronis)氏も同様のことを言ったことでしょう。アクセラレイトは今シーズンを通じこの部門で最強だったので、上手いレースをすると思っていました。本当にタフでした」。
ロザリオ騎手は今回のブリーダーズカップウィークエンドで絶好調だった。BCジュベナイルフィリーズ(G1)でジェイウォーク(Jaywalk)を勝利に導き、BCジュベナイル(G1)をゲームウィナー(Game Winner)で制していた。
今年8月のパシフィッククラシック(G1)の前まで、アクセラレイトの鞍上はビクター・エスピノーザ(Victor Espinoza)騎手が務めていた。しかし同騎手が怪我をしたため、米国最強の騎手の1人ロザリオ騎手が同馬に騎乗している。サドラー調教師は、気合を入れられるほうが実力を発揮しやすいアクセラレイトにとって、ロザリオ騎手は適任だと考えている。
ロザリオ騎手はこの勝利についてこう語った。「まったく見事でした。アクセラレイトはただただ驚異的な馬です。オーナーとジョンにお祝いを述べたいと思います。素晴らしいパフォーマンスでした。度胸のある馬です」。
馬主のフロニスレーシング社(Hronis Racing)の代表のコスタ・フロニス氏もサドラー調教師と同じくブリーダーズカップで優勝したのは初めてである。アクセラレイトは、パシフィッククラシック(G1)・オーサムアゲインS(G1)・ゴールドカップアットサンタアニタS(G1)を制した後にBCクラシック優勝でこのシーズンを締め括った。このため、フロニス氏は同馬が米国年度代表馬の座をめぐり三冠馬ジャスティファイ(Justify)と良い勝負をするのではないかと期待している。
アクセラレイトは2月前半に始動した今シーズンにおいて、サンタアニタH(G1)も制しており、G1・5勝、G2・1勝を果たしている(7戦6勝)。獲得賞金は500万ドル(約5億7,500万円)以上。
フロニス氏はこう語った。「アクセラレイトは特別な馬です。いつも困難に打ち勝ち、あらゆるレースに適応します。頼りになります。この優勝はこの1年間の日々の積み重ねの成果であり、彼は年度代表馬に選ばれるのにふさわしい馬だと私は考えています。」。
米国年度代表馬の選考者は、アクセラレイトの安定した戦績と史上13頭目の三冠馬ジャスティファイの見事な爆発力を比較しなければならないだろう。
サドラー調教師はレース後、こう語った。「アクセラレイトは明日、レーンズエンド牧場(Lane's End ケンタッキー州レキシントン)に発つ予定です。今週そこで、新種牡馬としてお披露目されるでしょう。私たちはその後、彼をカリフォルニア州に戻します。すべてが順調であればペガサスワールドカップG1 ガルフストリームパーク競馬場)に出走させます。昨年のBCクラシック優勝馬ガンランナー(Gun Runner)と同じプランになります。そしてレース後に種牡馬入りすることになるでしょう」。
アントニオ・サノ(Antonio Sano)調教師は、ガンナヴェラが2着に健闘したことで感激しており、こう語った。「ガンナヴェラにとても満足しています。発走で2~3馬身遅れたものの、2着に健闘しました。道中は他馬に挟まれてしまいましたが、レースをするたびにG1勝利に近づいています。彼は来年も現役を続け、ペガサスワールドカップを目指します」。
ゴドルフィンのサンダースノーを管理するサイード・ビン・スルール調教師は、こう語った。「サンダースノーは見事なレースをしました。とても満足しています。優勝したアクセラレイトは本当に強かったです。世界最強馬が集まるこのレースは特別です。今年は私たちの厩舎から強い馬が出て、素晴らしいシーズンを過ごしました。サンダースノーは再びドバイワールドカップに挑むでしょう」。
この夏にダートに転向してウッドワードS(G1)を制したヨシダ(Yoshida)は、4着となった。一方で、新しいことに挑戦して振るわなかった馬もいた。トップスプリンターのマインドユアビスケッツ(Mind Your Biscuits)は踏ん張りが利かず11着となった。今年欧州でG1・4勝を果たしロアリングライオン(Roaring Lion)は、発走がぎこちなくゆっくりと走っていたが、最後は失速してゴールした。
2番人気と3番人気のマッキンジーとカトリックボーイ(Catholic Boy)は、それぞれ12着と13着に大敗した。カトリックボーイはゆっくりと発走した後、早い段階で他馬とぶつかっていた。
By Frank Angst
(1ドル=約115円)
[bloodhorse.com 2018年11月3日「Accelerate Finds Top Gear to Win Breeders' Cup Classic」]