競走馬の禁止薬物との継続的な戦いにおいて、"チーニー(Chini)"という麻薬探知犬が注目を浴びている。
ニューメキシコ州のルイドソダウンズ競馬場は夏開催(5月最終月曜日~9月第1月曜日)の間、3歳のシェパードであるチーニーを配備した。同競馬場の理事長兼場長のジェフ・トゥルー(Jeff True)氏は、12月4日にアリゾナ大学競馬グローバルシンポジウム(アリゾナ州ツーソン)における"競馬の公正確保に関する公開討論会"で、チーニーの配備計画について説明した。
トゥルー氏はこう語った。「チーニーは、クレンブテロール(clenbuterol)やアルブテロール(albuterol)を探知できます。私たちはチーニーを朝5時に競馬場の厩舎の入口に連れて行き、車をくまなく捜索しました」。
厩舎エリアでレクリエーショナルドラッグ(訳注:快楽を得るために使われる化学物質。マリファナ・コカイン・LSDなど)を探知するために犬が使われてきたので、麻薬探知犬は競馬場において全く馴染みのないものではない。ただトゥルー氏は、チーニーは馬への禁止薬物を探知するために使われる初めての犬であるようだと述べた。チーニーがそのために配備された一方で、もう1匹の犬が人間の使うレクリエーショナルドラッグを探し出す役割を担っていた。
トゥルー氏はセッションの後、こう述べた。「捜索した厩舎地区や馬運車からいくつかの禁止薬物を見つけ出しました。私たちはレクリエーショナルドラッグだった場合はそれを地元警察に引き渡しました。一方、注射器に禁止薬物が入っている場合は裁決委員に送りました」。
トゥルー氏は、どのような物質からできているか正確な報告書を提出するために、見つかった薬物は研究所に送ったと述べた。その物質が特定された後は、検査結果はニューメキシコ州競馬委員会(New Mexico Racing Commission)もしくは競馬場の裁決委員に提出された。
ただし同氏はこう語った。「チーニーをルイドソダウンズ競馬場に配備することの当初の主目的は "抑止力"とするためでした。薬物を探し出すために厩舎に入るというメッセージをはっきり伝えようとしていました。それは抑止力であり、大勢を摘発しようとしたわけではありません。もちろんルールを破っている犯人を特定することは大事ですが、チーニーは摘発隊の先鋒として活躍してくれたというだけです」。
トゥルー氏は、2匹の犬は馬への禁止薬物と人間用のレクリエーショナルドラッグを合わせて12ほどを見つけ出したと語った。そしてチーニーが未使用のプラスチック注射器や12種類の薬物を探知するほど能力が高いことを説明した。
同氏はこう語った。「厩舎門で車が止まり、通行証をチェックしている間に犬が車を捜索します。犬が何かを見つけたら、その物質を第二次検査に回します。ある婦人がハンドバッグを床に置いていて、その中にアルブテロールの吸引器が入っているのを見つけたこともあります。探知の感度はそれほど優れています」。
チーニーの飼い主は、ルイドソダウンズ競馬場である。同競馬場の公正確保担当者であるルイス・アルバレス(Luis Alvarez)氏は、正式な資格を持つ探知犬トレーナーとなることを目指している。トゥルー氏は、ニューメキシコ州の他の競馬場にも禁止薬物探知のためにチーニーを派遣していると述べた。
By Jeremy Balan
[bloodhorse.com 2018年12月4日「Ruidoso Downs Deploys Drug-Detecting Dog」]