ルビー・ウォルシュ騎手(39歳)は、ケンボーイ(Kemboy)でパンチェスタウンゴールドカップ(G1)を制した。そしてその直後に、輝かしい24年間の騎手生活から直ちに引退することを発表し、競馬界を唖然とさせた。
同騎手は、「これでおしまいです。パンチェスタウンで馬が勝つのは見られますが、私が騎乗しているのは二度と見られないでしょう。ここまでです。すべて終わりです」と語った。
同騎手は、テッド・ウォルシュ調教師(元チャンピオンアマチュア騎手)とその妻ヘレンの間に長男として生まれた。1995年7月の初勝利から20年以上にわたる騎手生活において、名伯楽のウィリー・マリンズ(Willie Mullins)調教師やポール・ニコルス(Paul Nicholls)調教師と組んで多くの勝利を挙げてきた。
ウォルシュ騎手はこう続けた。「最高です。素晴らしいキャリアでした。騎手のキャリアは大きなレースに騎乗できるかどうかがすべてですが、希望どおり沢山のことができました。子供のときからパンチェスタウン競馬場に来ており、ここは故郷のようなものです。それでも、今は新しいことを始めるときです。永遠に続くものなどありません」。
同騎手はどうにか最高の気分で引退することができる。なぜなら、マリンズ厩舎の2頭の所属馬、ケンボーイとチェルトナムゴールドカップ優勝馬アルブームフォト(Al Boum Photo)が手に汗握るレースを繰り広げ、最終的にはケンボーイのほうがよく粘り、アルブームフォトを2馬身差で破ったのだ。
マリンズ厩舎は、ベルシル(Bellshill)が3着のザストーリーテラー(The Storyteller)に続いて入線したことで、優勝馬・2着馬・4着馬を送り出したことになる。ウォルシュ騎手は、長い道のりを悠々とこなすように見えたデフィニットリーレッド(Definitly Red)と激しい先頭争いをしたが、決して慌てることはなかった。ケンボーイは、チェルトナムゴールドカップにおいて第1号障害で鞍上のデヴィッド・マリンズ(David Mullins)騎手が落馬するという不運があったが、このレースでは本来の実力を見せることができた。
ウォルシュ騎手は、プロの騎手となる前の1996-97年シーズンと1997-98年シーズンにアイルランドのアマチュア騎手のリーディングタイトルを獲得した。そのときすでに、その才能は明らかになっていた。
同騎手はプロ入り初シーズンにアイルランドの障害リーディングジョッキーとなり、その後このタイトルを11回獲得して、威光を見せつけた。
チェルトナムフェスティバルは、障害競走のレジェンドたちが歴史における自らの地位を確認する競馬の祭典である。ウォルシュ騎手は同フェスティバルにおいて、トップジョッキーに11回輝いており、史上最多勝騎手(通算59勝)である。
同騎手のチェルトナムフェスティバルの勝利には、以下が含まれる。チェルトナムフェスティバルはウォルシュ騎手にいつも幸運をもたらすものではなかった。同騎手は何度か重傷を負っており、2015年メアズハードル(この年からG1)においてアニーパワーで落馬したことはよく知られている。圧倒的な1番人気馬が競走中止となったことで、ブックメーカー産業は繰越馬券に関連して約5,000万ポンド(約72億5,000万円)近くをセーブできたと考えられている。
なお、ウォルシュ騎手はグランドナショナルを2勝したことで、エイントリー競馬場の伝説にもなるだろう。2000年には父テッド氏が管理するパピヨン(Papillon)で、2005年にはマリンズ調教師が管理するヘッジハンター(Hedgehunter)でこのレースを制した。
そして以下のように、英国だけでなくアイルランド・スコットランド・ウェールズのグランドナショナルも制覇した。
ウォルシュ騎手は英国とアイルランドの障害競走で通算2,756勝を挙げ、歴代最多勝騎手ランキングの中でトニー・マッコイ騎手、リチャード・ジョンソン騎手に次ぐ3位となっている。同騎手が最高賞金を獲得したレースは、ブラックステアマウンテン(Blackstairmountain)で制した2013年中山グランドジャンプ(J・G1)である。また、サウザンドスターズ(Thousand Stars)でオートゥイユ大ハードル(G1)を2勝している。
ウォルシュ騎手の騎手生活には、他にも次のようなハイライトがあった。
―コートスターでキングジョージ6世チェイス(G1)5勝(2009年は36馬身差で勝利)
―ビッグバックスで16連勝
―ハリケーンフライでG1・16勝
By Tony O'Hehir
(1ポンド=約145円)
[Racing Post 2019年5月2日「'That's it, it's all over' - Ruby Walsh ends dazzling career after farewell win」]