2018年最優秀2歳牡馬トゥーダーンホット(Too Darn Hot)の適性距離について、関係者と賭事客は頭を悩ませてきた。昨年10月にデューハーストS(約1400m)を圧倒的な強さで制したので、3歳になればマイル以上の距離でその才能は開花すると信じられていた。しかし英2000ギニー(G1)を回避したトゥーダーンホットは、その後出走したダンテS(G2 約1900m)、愛2000ギニー(G1 約1600m)、セントジェームズパレスS(G1 約1600m)において先頭でゴールすることができなかった。
トゥーダーンホット(ジョン・ゴスデン厩舎)は、オーナーブリーダーのロイド・ウェバー卿夫妻(Lord and Lady Lloyd Webber)により所有されている。7月7日(日)にドーヴィル競馬場のジャンプラ賞(G1 1400m)において、同馬は私たちがこれまでの競走成績から予想していた以上にスピードがあることを見せつけ、3馬身差の圧倒的勝利を収めた。ただ、このレースは強敵揃いとは言えなかった。
トゥーダーンホットの適性距離を知るために血統を手掛かりとすることは、問題をややこしくするだけである。
同馬は、ダーラムホールスタッドの名種牡馬ドバウィを父とする。トップマイラーのドバウィは英ダービー(G1)で3着となり、この距離で能力を持たせられないことがはっきりした。しかし、血統から予想されるよりも、同馬にスピードがあったのは間違いない。なぜなら、ドバウィの父ドバイミレニアムは2000mで活躍した傑出馬であり、ドバイミレニアムの母ゾマラダー(Zomaradah)は伊オークス(G1)優勝馬だからである。なお、ゾマラダーは英ダービー馬ハイライズ(High-Raise)の近親馬でもある。
一方、トゥーダーンホットの母ダーレミ(Dar Re Mi)は12ハロン(約2400m)のG1競走に7回出走した優秀な中距離牝馬だった。同馬が獲得した最高の栄光は、ドバイシーマクラシック(G1)でブエナビスタとスパニッシュムーン(Spanish Moon)を下して獲得した勝利である。
ダーレミは、スタミナのあるシングスピールを父とし、ヴェルメイユ賞(G1)優勝馬ダララ(Darara)を母とする。プリンスオブウェールズS(G1)とドバイシーマクラシックを制したリワイルディング(Rewilding)を半弟とし、クイーンエリザベス2世カップ(香港G1)優勝馬リバーダンサー(River Dancer)とランヴェットS(G1)優勝馬ダラザリ(Darazari)を半兄とする。母ダララは、仏ダービー馬トップヴィルを父とし、ダルシャーンを半兄とする。
ダーレミは、トゥーダーンホットを受胎する前に2回ドバウィと交配している。その結果生まれたのが以下の2頭である。
・ ソーミダー(So Mi Dar 牝6歳) ... ミュージドラS(G3)優勝。オペラ賞(G1)3着。10ハロン(約2000m)前後で活躍。
・ ラーティダー(Lah Ti Dar 牝4歳)... 英セントレジャーS(G1)2着。12ハロン(約2400m)のG1競走で2回3着。
トゥーダーンホットの競走成績は、同馬がこれらの全姉よりも短距離に適性があることを物語っている。全兄弟の間でも遺伝分散が生じることを思い出させる例である。
それゆえ、トゥーダーンホットの1歳下の全弟がどのような競走生活を送るかについて、興味がそそられる。現在ダレイン(Darain)と名付けられているこの馬は、昨年のタタソールズ社10月1歳セール・ブック1にて最高価格350万ギニー(約4億9,613万円)でデヴィッド・レッドヴァース氏(カタールレーシング社の代理人)に購買された。トゥーダーンホットやダーレミと同様、ゴスデン調教師に管理されている。
ダーレミは現在1歳のドバウィ牝駒も送り出しており、昨年もドバウィと交配した。ダーレミは現在、娘のソーミダーとともにウォーターシップダウンスタッド(Watership Down Stud)の優良繁殖牝馬群に加わっている。ソーミダーは2月に初仔(牝 父ガリレオ)を出産しており、今年はガリレオの半弟シーザスターズと交配した。
ジャンプラ賞はドバウィにとって素晴らしい結果をもたらした。トゥーダーンホットだけでなく2着のスペースブルース(Space Blues)もドバウィ産駒だったからだ。スペースブルースの母はチャレンジS(G2)優勝馬ミスルシファー(Miss Lucifer)である。
By Martin Stevens
(1ポンド=約135円)
[Racing Post 2019年7月7日「Pedigree puzzler Too Darn Hot shows his speed in Prix Jean Prat romp」]