BHA(英国競馬統轄機構)のアンナマリー・フェルプス(Annamarie Phelps)新会長は、「社会的態度(個人・集団・文化など社会的対象に対する評価の傾向)の変化に伴い、競馬界は馬の福祉について"重大な倫理的チャレンジ"に直面しています」と注意喚起した。
フェルプス会長は、馬主協会(Racehorse Owners Association)の年次総会(7月2日 ロンドンで開催)において、6月上旬のBHA会長就任以来初の演説を行った
同会長はこの多岐にわたる演説において、競馬界は女性の参加をさらに拡大するべきであり、今こそ女性・男性の間に調和がもたらされるときであると述べた。
またフェルプス会長は福祉をめぐる問題について、デジタル技術と人口動態により、意見の世代交代が引き起こされていると述べた。
そしてこう続けた。「私たちは現実社会をよく観察し、20歳ぐらいの人々がその親世代とは全く異なる意見を持っていることを理解しなければなりません」。
「競馬界が重大な倫理的チャレンジに直面する動物愛護をめぐる問題について、人々の意識に影響が現れ始めています」。
「"何を購入するか"、"購入した物が地球・人々・生き物に害を及ぼさないか"を非常に気に掛けるソーシャル・コンシューマー(消費を通じて社会的課題の解決を目指す個人)の増加を、私たちは目の当たりにしています」。
フェルプス会長は演説後の談話において、競馬に参加する人を含む福祉をめぐる一層幅広い問題について触れ、こう語った。「メンタルヘルス報告は、競馬界内部におけるいくつかの真の難題をかなり明らかにしていました。しかし、参加者全員が確実にケアされることを強く望む面倒見の良い人々が大勢いると感じています。そのため、将来に全く期待が持てないわけではありません」。
同会長は、これまでブリティッシュ・ローイング(British Rowing)、英国オリンピック・パラリンピック協会でスポーツガバナンスを担当しており、あらゆるスポーツの競争環境への意識を高めることができたと述べた。そして自らのバックグラウンドにより、従来の競馬ファン以外の観客に働きかけることができると付け加えた。
同会長はこう続けた。「競馬界の大使というだけではなく擁護者になるつもりです。競馬界は、従来の競馬ファン以外の人々にも、数々の"素晴らしい瞬間"を届けてきました。さらに多くの人々にそれを届けるためには何ができるでしょうか?」
「他のスポーツは近代化されており、新機軸を導入しています。また、女性参加への投資を拡大しています。しかし勘違いしないでください。競馬界では女性と男性が公平に対決していることを大切に思っています。それは競馬界にとって大きなセールスポイントです」。
「それよりも、その独自性を存分に活用しているのかということが私の問いです。競馬が報道されて収益を上げることで注目を集め、従来の競馬ファン以外の人々にアピールする一助となるかどうかを見て行きたいと思います」。
フェルプス会長はBHAの役割について話す中で、BHA・競馬場協会(Racecourse Association)・ホースマングループ(Horsemen's Group)の三者からなるガバナンス体制には課題があると述べた。
同会長はこう付言した。「三者が足並みを揃えるときには、競馬界は強化されます。しかしその体制は、意見の分裂や不協和が生じたときには脆弱になります。もしそのような状況に陥れば、機能してきたものが中断されます。私がはっきり意識していることは、一連の課題やチャンスを目にしたところでは、今は分裂するときではなく結束が求められているということです」。
By Bill Barber
[Racing Post 2019年7月2日「New BHA chair warns of 'ethical challenge' facing racing over welfare」]