海外競馬ニュース 2019年09月19日 - No.36 - 4
BHAの報告書、不適切なセリ取引の是正を求める(イギリス)[生産]

 英国におけるサラブレッド取引に関して、手厳しい見解が明らかになった。BHA(英国競馬統轄機構)の報告書には、「生産界にはほとんど規制がなく、不届き者によってその信頼性が損なわれており、犯罪になり得る不適切な行為に手を染める関係者も何人かいる」と記されており、変革が求められている。

 以前警察のトップを務めていたジャスティン・フェリス(Justin Felice)氏は、BHAから任命されてレビューを実施し、8つの勧告を含む報告書をまとめた。この報告書はエージェント(馬売買仲介業者)に関して批判的な内容であり、「エージェントの5%が周囲に悪影響を与えているが、大多数は全般的に適切な行動をしている」と主張している。また、同氏は主要関連団体に対して、BHAによる生産界への規制を受け入れるように迫っている。

 フェリス氏は、生産界の大多数の誠実な人々の将来および英国競馬界の評判は危険な少数派の行動によって脅かされていると考えている。報告書によれば、大手セリ会社のタタソールズ社やゴフス社も改革の必要性を認識している。

 本紙(レーシングポスト紙)に伝わってきた報告書の結論と勧告は以下のとおりである。

・ エージェントは全くの野放し状態であり、生産界の現行の実施規則は事実上、目的を満たしていない。

・ 生産界の多くの参加者は、非倫理的行為の被害者になったことがあること、もしくはその被害者を知っていることを認めた。非倫理的行為の多くは、不適切な勧誘および支払にまつわるものである。

・ 最も蔓延している非倫理的行為・違法行為は、"露見しない不当利得行為"であることが判明した。これは、同一取引の売り手と買い手の双方を代表するエージェントが、少なくとも一方がその事実に気付いていない状態で売り手に対して謝礼金(luck money)を要求し、事前に共謀された競り上げを通じて購買価格を人為的に釣り上げる行為である。

・ レビューを実施したチームが知るかぎりでは、生産界の現行の実施規則は現状に即していない。恐怖心ゆえに誰もが"見て見ぬふり"をするため、BHAあるいはセリ会社に対してクレームが寄せられた形跡がない。

・ BHAが生産界の規制機関として正当な権限があると考えることには妥当な理由があり、生産関係者はその管轄下に置かれることに同意すべきである。

・ アイルランドの主要な競馬・生産団体の支持を得るために努力しなければならない。

 2017年6月に作成が委託されたこの広範囲にわたる報告書の序文において、BHAのCEOニック・ラスト氏は"生産界における非倫理的な行為やその被害に遭った経験に関する一般の認識は、すでに脆弱となっている馬主基盤を傷付けるかもしれない"と記している。BHA理事会がまさにそのような状況に懸念を抱いたことが発端となり、この報告書は作成された。

 フェリス氏のレビューは、大多数の生産関係者の誠実さにお墨付きを与えたが、BHAの見解が厳しい現実となりつつあることも確認することとなった。

 フェリス氏は報告書の序盤で、自らの全体的な所感をこう説明している。「すべてのインタビュー回答者が、時間を割いて、寛容で協力的な態度でレビューに応じてくれたことに感謝しています。多大な支持をいただき、生産界の将来の発展について楽観的にさせられました」。

 「このレビューは、"英国の生産界はサラブレッドの取引を行うには概ね安全な環境にあり、大多数の関係者の行動には高い水準の公正性があるように見られる"と結論付けました」。

 「しかしインタビュー回答者の反応により、生産界では長年、非倫理的行為を行った者が適切に罰せられていないと広範囲で認識されていることもはっきりしました。複数の回答者は、生産界全体の公正と評判を損なわせる危険のある少数の不届き者を特定しました」。

 フェリス氏はこれらの者の名を明かすことはなく、こう続けた。「かなり多くのインタビュー回答者が、自らがそのような非倫理的行為の被害者である(もしくは直接の被害者を知っている)と主張しました。それらの行為の多くは、不適切な勧誘と支払にまつわるものでした。それらの行為は時には違法となります」。

 「レビューチームは、インタビュー回答者が行った個別の訴えについて調査することは求められていません(いずれにせよ、その時間と人手がありませんでした)。しかし、この報告書に記された懸念と調査結果はフェアで正当化されるものであり、彼らが行った訴えは疑う余地のないものでした」。

 生産界に身を置いたことがない人々は、フェリス氏が産業全体の自主規制へのアプローチを軽視していることに衝撃を受けるかもしれない。同氏は、実施規則(2004年導入。直近では10年前に改訂)に関連するこの自主規制を全く無力だと見なしている。

 フェリス氏はこう記している。「自主規制のモデルは2009年の実施規則改訂の際に合意されました。しかし目的にかなっておらず、早急な対応と全面的な見直しが必要であることは疑う余地もありません。つまり、生産界は現在有意義な方法で規制されておらず、また、意外にも大多数の人々は実施規則が存在していることさえも認識していません。これは是認できませんし、看過できる状況ではありません」。

 「生産界のいくつかの業務分野の関係者については実際、その行為が規制されていません。その最たる例がエージェントです」。

 8月上旬、BHA主導のグループが初めての会合を行い、タタソールズ社、ゴフス社、サラブレッド生産者協会(Thoroughbred Breeders' Association)、サラブレッド仲介業者協会(Federation of Bloodstock Agents)、馬主協会(Racehorse Owners Association)、全国調教師連合会(National Trainers Federation)の代表者たちが一堂に会した。これに先立ち、この報告書は生産界の数名の重要人物に送付されていた。

 この会合は前向きなものであったと伝えられており、ラスト氏は積極的な参加を称え、こう述べた。

 「前途が明るくなったことにとても満足しています。馬主を引き留めさらに増加させることを目標とした実施計画を進展させるため、9月に再び会合を行う予定です」。

By Lee Mottershead

[Racing Post 2019年8月14日「Leaked report calls for end to 'unethical' and 'unlawful' sales ring practices」]