ジョン・ゴスデン調教師はエネイブル（牝5歳）に不意打ちが掛けられるのを分かっていた。しかし同調教師とパリロンシャン競馬場の観客全体の願いは、同馬の凱旋門賞（G1）三連覇という歴史的偉業を阻む非常に重い馬場状態を変えられなかった。

　名伯楽は重い期待を背負いながらも、レース前の満員のパドックでは冷静な表情であり、レース後も同様に落ち着いた様子で解説した。

　ゴスデン調教師は、エネイブルが困難な状況でも素晴らしい走りを見せたことに満足しており、同馬の今後の予定はカリド・アブドゥラ殿下が数日内に決定するだろうと述べた。

　また、力のいる馬場で一番よく粘った優勝馬ヴァルトガイスト（Waldgeist アンドレ・ファーブル厩舎）を絶賛した。

　ゴスデン調教師はこう語った。「エネイブルは、アンドレ（・ファーブル調教師）が今年自信を持って送り出した優良馬ヴァルトガイストに負かされました。優勝馬はエネイブルよりもよく粘りました」。

　「稍重であれば、2着になったことにがっかりするでしょうが、不意打ちを掛けられるのは分かっていました。フランキー（・デットーリ騎手）とコースを歩いたとき、スティックがとても深く食い込むのを見て、"これは問題だ"と思いました」。

　「エネイブルはゴールの400m手前で素晴らしい末脚を見せましたが、それは重い馬場によって鈍らされました。この距離で激しいレースをしたので、彼女のスタミナは尽きてしまいました。単純な話です」。

　「エネイブルがレース後も元気なので、この失望を受け入れることができます。また、優勝馬とその関係者に多大な敬意をもっています。私たちはその日の条件にうまく適応した馬に負かされました」。

　パドックに戻ったエネイブルは、観客の喝采によって迎えられた。ゴスデン調教師はこう付言した。「素晴らしい歓迎を受けました。これが競馬の素晴らしいところです。三連覇をうまくやってのけることができず申し訳なく思っています」。

　エネイブルはその華やかなキャリアにさらに1勝を加えることはできなかった。それでもアブドゥラ殿下のレーシングマネージャーを務めるテディ・グリムソープ（Teddy Grimthorpe）氏は、競馬に大きな貢献を果たした名牝エネイブルを称え、こう語った。

　「期待がとてつもなく大きく、善意に満ち溢れていました。望んだ結果ではありませんでしたが、どうして不満を言うことができるでしょうか？彼女は信じられないほど素晴らしい牝馬であり、私たちはたまらなく彼女を愛しています。負けたからと言って彼女への愛が減るわけではありません」。

　「エネイブルは多くの人々にとって特別な馬であり、私たちを決して失望させませんでした。素晴らしいレースを走り、難しい馬場でよくとどまりました。彼女を連れて帰って様子を見たいと思います」。

　「彼女はジャドモントファームの4代目の自家生産馬です。そのファミリー（牝系）を発展させるのに、とてつもなく多くの人々が関わってきました。そのため、とても感動し、興奮しました。素晴らしいレースでした」。

By Jonathan Harding