海外競馬ニュース 2020年07月09日 - No.27 - 2
ミシュリフ、最後の2完歩で仏ダービーを制覇(フランス)[その他]

 クラシック競走の常連である名伯楽たちは次代のスター馬を発掘することを夢見ている。その一人ジョン・ゴスデン調教師は同じ日にサンダウンで名牝エネイブルが破れてがっかりすることになるが、仏ダービー(G1 ジョッケークリュブ賞)でミシュリフ(Mishriff)が勝利に向かって駆け抜けて真のG1馬となったことにより、大きな満足感を得られただろう[訳注:ミシュリフは2月のサウジカップで日本馬フルフラットの2着となった]。

 ゴスデン調教師はこの大舞台にベテランジョッキーのイオリッツ・メンディザバル騎手(46歳)を起用した。同騎手は長年、外国から遠征してくる調教師にとって地元情報を知る上で大変好まれるジョッキーである。

 ミシュリフはファイサル殿下の自家生産馬であり、殿下が所有する仏2000ギニー(G1)優勝馬メイクビリーヴ(Make Believe)の産駒である。このレースにおいて、同馬はまずまずのスタートを切ったが、馬群の壁に阻まれているように見えた。その後、メンディザバル騎手は外にそっと抜け出し、ミシュリフは躊躇なくチャンスをつかみ取った。

 仏2000ギニーで1着・2着だったヴィクタールドラム(Victor Ludorum)とザサミット(The Summit)は、このレースで3着・2着となったが、優勝馬と差のないレースぶりだった。

 ゴスデン調教師はこう語った。「メンディザバル騎手は今朝話し合ったとおりに騎乗してくれました。ペースに合わせて進んで馬群から抜け出すチャンスを待つような乗り方を望んでいました。シャンティイのコースは一筋縄ではいきません。最終コーナーを回るときに位置取りが固定してしまって抜け出すことができず、奇妙な展開となったレースがこれまで沢山ありました」。

 この勝利は、ファイサル殿下にとってとりわけ喜ばしいものとなった。殿下は1990年にシャンティイで、ウィリー・カーソン騎手が鞍上を務めたラファ(Rafha)で仏オークス(G1 ディアヌ賞)優勝を果たしている。ラファはミシュリフの偉大な3代母である。

 ゴスデン調教師はこう続けた。「ミシュリフは素晴らしい動きをしました。最後の100mがこのレースの一番の見どころでした。オーナーブリーダーであるファイサル殿下は、この馬を仏ダービーに出走させることにとても積極的で、それが正しかったことが証明されました」。

 この週末(7月4日・5日)にサンダウンとエプソムでビッグレースが行われていることで、凱旋門賞(G1)の予想オッズは目まぐるしく変動している。ブックメーカーのコーラル社はミシュリフの凱旋門賞での単勝オッズを11倍としている。

 ゴスデン調教師はこう語った。「レース後の馬の状態を見てから、メンディザバル騎手の意見を聞かなければなりません。幸いなことに、彼の英語は私のフランス語よりもマシなので、話合いができます。ミシュリフは血統的にこの距離(2100m)止まりかもしれませんが、それ以上の距離で走れないという風にも見えません(凱旋門賞は2400m)」。

 メンディザバル騎手は、ミシュリフの主戦を務めてきたデヴィッド・イーガン(David Egan)騎手からの乗り替わりである。

 メンディザバル騎手はフランスで今最も人気のある騎手とは言い難いが、ニューマーケットの調教師の間では堅実な人気を誇っている。思い出せるかぎりでは、ゴスデン調教師、マイケル・ベル調教師、サー・マーク・プレスコット調教師と協力関係がある。

 同騎手はこう語った。「あのように2完歩で決着をつけてしまうのですから、ミシュリフは凄い馬です。2008年のヴィジョンデタ(Vision d'Etat)で制して以来の仏ダービー優勝です。信頼してくれたファイサル殿下とゴスデン調教師に感謝しなければなりません。これは騎手にとって大きな力になります。今朝ゴスデン調教師のコメントを読んで、さらに自信を持ちました」。

 レース後、パオアルト(Pao Alto 6着)の鞍上マキシム・ギュイヨン騎手が"メンディザバル騎手が馬群から抜け出すときに走行妨害した"と申し立てて審議が行われた。裁決委員は走行妨害がなかったとしてもパオアルトはミシュリフよりも上位入着しなかったと判断したが、メンディザバル騎手に4日間の騎乗停止処分を言い渡した。

 メンディザバル騎手はこう語った。「騎乗依頼を受けてミシュリフの過去レースをビデオで見たところ、彼は頭をずいぶん低く下げていました。そのため、直線半ばで彼を奮い起こす必要がありました。しかし彼はやる気を出すと、2完歩で決着を付けました」。

 アンドレ・ファーブル調教師はレース前に、ヴィクタールドラムはレース前半の反応が良くないので、1番ゲートからの発走は都合が悪いかもしれないと懸念を表明していた。実際、ゆっくりとしたスタートが不利となった。ミカエル・バルザローナ騎手は最後の直線で、同馬を全出走馬の外に持ち出して差しに行かなければならなかった。

 ザサミットは新たな中国人オーナーたちをワクワクさせたことだろう。競走距離を伸ばすことが正しかったことを証明した。

 アンリ-アレックス・パンタール調教師はこう語った。「ザサミットがこの競走距離を持ちこたえるかどうかが大きな疑問でした。しかし彼は持ちこたえられることを証明し、素晴らしいレースをしました。道中上々な走りぶりで果敢にチャレンジしましたが、前に1頭いました」。

By Scott Burton

[Racing Post 2020年7月5日「'He had it won in two strides' - Gosden's Mishriff powers home in French Derby」]