海外競馬ニュース 2020年07月09日 - No.27 - 3
有名馬主のSNSでの人種差別的な発言が大騒動に発展(アメリカ)[その他]

 有名サラブレッド馬主・生産者のトム・ヴァンミター(Tom VanMeter)氏がSNS上で人種差別的な発言をしたために、競馬産業は好ましくない注目を浴びている。同氏がセリに上場する馬をボイコットするように呼びかける競馬関係者もいた。

 ケンタッキー州サラブレッド牧場マネージャーズクラブ(Kentucky Thoroughbred Farm Managers' Club)のドニー・スネリングス(Donnie Snellings)会長は自身のフェイスブックにおいて、「まだNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の観戦をボイコットするのならばシェアしてください」とフォロワーに呼びかけた。ヴァンミター氏はそれに対して「黒○ぼのフットボールリーグを廃止しろ」と反応した(訳注:トランプ大統領は6月14日、もし選手たちが国歌演奏で起立しないのならNFLと米国サッカーの試合を観戦しないと自身のツイッター上で発言している)。

 本誌(ブラッドホース誌)はヴァンミター氏に説明を求めたが回答はなかった。

 ヴァンミター氏の人種差別的な発言に注目を集めさせたのは有名馬券予想家マイケル・ベイチョク(Michael Beychok)氏である。同氏は、ヴァンミター氏のフェイスブックでの問題発言をスクリーンショットに撮って投稿したブリアナ・モット(Bri Mott)氏(競馬ゲームソフトを提供するステーブルデューアル社のマーケティング担当役員)のツイートをリツイートしていた。

 米国ジョッキークラブは7月6日、ツイッターにおいて「米国ジョッキークラブとTOBA(サラブレッド馬主・生産者協会)が共同運営する馬主向け情報サイト"オーナービュー(OwnerView)"のトム・ヴァンミター氏のアカウントを、再調査を済ませるまで停止します。競馬産業あるいは社会一般において、人種差別的な憎しみに満ちた言葉は許されません」と発表した。

 ヴァンミター氏は長年、競馬産業でサラブレッドを購買・売却・上場してきた。生産者として、ケンタッキーオークス(G1)優勝馬サマリー(Summerly)など数頭の重賞勝馬を送り出している。また、2015年米国三冠馬アメリカンファラオ(ザヤットステーブル所有)は、ヴァンミター氏のストックプレイスファーム(Stockplace Farm)で誕生している。

 本誌はケンタッキー州競馬委員会(KHRC)に連絡し、ヴァンミター氏の馬主資格は現時点でも有効か、またこの問題発言により同氏の地位が脅かされる可能性はあるかについて尋ねた。KHRCの代表者は、「KHRCはヴァンミター氏の馬主資格や今回の出来事について調査を続けます」と述べた。

 ヴァンミター-ジェントリー・セールズ社(VanMeter-Gentry Sales)は昨年、セリに81頭を上場し63頭を売却した。総売上額は564万7,000ドル(約6億2,117万円)。

 ファシグ・ティプトン社のボイド・ブラウニング(Boyd Browning Jr.)社長はこう語った。「私たちはこのSNSでの発言が弊社の社員あるいは代表者によってなされたのではないと明確にする以外は、第三者の立場としてコメントしません。この発言は弊社の価値観を反映していません。弊社はセリ参加者に対して多様性に富んだ開放的な環境を促進しようとしており、それにそぐわない言動を許容も支持もしません」。

 キーンランド協会は次のような声明を出している。「キーンランド協会はトム・ヴァンミター氏の投稿を非難します。競馬界もしくは社会一般において人種差別主義は許されず、同氏の非倫理的な発言はキーンランド協会の尊重・コミュニティー・平等を重んじる価値観とは対極にあります。競馬産業は、多様性の欠如に誠実かつ直接的に対応し、その根本原因によく目を向けなければなりません。それは正しいことであるだけでなく、競馬の将来にとって必要不可欠です」。

 有名なサラブレッド生産・販売事業体であるデナリスタッド(Denali Stud)も、7月6日にツイッターで次のような声明を出した。

 「デナリスタッドに勤務するスネリングス氏の個人アカウントに、第三者が人種差別的な発言を投稿しました。これをめぐる騒動を踏まえ、デナリスタッドがこのような発言を許容しないことをぜひ知ってもらいたいと思いました。それらの発言は我々の基本的価値観を示しておらず、競馬産業や社会一般においてもそれらを野放しにすることは許されません」。

 NTRA(全米サラブレッド競馬協会)の理事長兼CEOのアレックス・ウォルドロップ(Alex Waldrop)氏も、ヴァンミター氏のコメントについてツイッターで次のように述べている。

 「トム・ヴァンミター氏のSNSアカウントに投稿された人種差別的な意見や見識は、我々の社会一般、言うまでもなく競馬産業において許されるものではありません。NTRAはもはやどのような形であれ同氏もしくは同氏の見識を共有する人々からの資金提供を受け付けられません」。

 [訳注:ヴァンミター氏はこの記事が出た翌日にブラッドホース誌に対して謝罪の声明を出し、善意のしるしとして全米黒人地位向上協会に寄付することを表明した。また、キーンランド協会は同氏のセリやレースへの参加を禁止するという対応を行った]。

By Evan Hammonds

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2020年7月7日「Owner's Racist Social Media Post Draws Ire」]