シーザスターズを手掛けたジョン・オックス調教師が今シーズン限りで引退すると発表したことをうけ、元騎手のマイケル・キネーン氏は10月12日、「オックス調教師は素晴らしい調教師で卓越した紳士です」と称賛した。
7月に70歳となったオックス調教師は、41年間の調教師生活においてG1馬33頭を送り出した。それでも一番記憶に残るのは、驚くべき無敗の3歳シーズンを送ったシーザスターズである。同馬は2009年、英2000ギニー(G1)、英ダービー(G1)、エクリプスS(G1)、英インターナショナルS(G1)、愛チャンピオンS(G1)、凱旋門賞(G1)を制した。
1995年にリーディングトレーナーに輝いたオックス調教師は10月12日夜、本紙(レーシングポスト紙)に対して、1979年に始まった調教師生活に何の悔いもないとし、こう述べた。「ちょうど潮時で、私たちは今シーズンをもって終わりにすることに満足しています」。
「もっとも、この類の決定は出来心でするものではありません。数年前から私たちの心の中にありました。しかし、ちょうど今がその時だと感じたのです」。
「何の悔いもありません。何度も最高の瞬間を過ごしました。長い調教師生活において、素晴らしい馬主や優秀な馬に出会えたことは本当に幸運でした」。
「英ダービーと凱旋門賞を同じ年に制した馬を2頭送り出すことができました。またリッジウッドパール(Ridgewood Pearl)は私が管理した中でトップを争う馬で、彼女はそれぞれ異なる国でG1・4勝を挙げました(愛1000ギニー・コロネーションS・ムーランドロンシャン賞・BCターフ)。ティマリダ(Timarida)も素晴らしい牝馬でした」。
「馬を預託してくださったすべての馬主、それらの馬に乗った偉大な騎手たち、厩舎で働いてくれたひときわ有能なスタッフに感謝します。彼らと会えなくなると思うと調教師をやめるのは寂しいですが、ちょうど潮時です」。
「平地シーズンが閉幕する11月に私たちの調教事業は停止します。そのため、スタッフが次の職を見つけられるかということが当面の心配事です。調教場を借りてくれる人が現れることも望んでいます」。
オックス調教師の卓越した調教師生活を振り返ると、最初に思い出すのはシーザスターズである。2009年にレースごとに体調をピークに持ってこさせて同馬にG1・6勝を達成させた名伯楽は、ハイライトとして凱旋門賞優勝を挙げてこう語った。
「シーザスターズを管理しているときは一日一日が重要でした。私たちが知る彼の真価を証明するために、彼は全部のレースを勝たなければなりませんでした。最後の一戦である凱旋門賞を勝つことは非常に重要だったので、凱旋門賞当日こそが最大の山場だったのです」。
「ニジンスキーが英国三冠達成後に、凱旋門賞で能力が劣る馬に負かされたことを思い出します。それはすべてを台無しにしました。彼が負けるのを見て心が痛みました。だからこそ、シーザスターズが凱旋門賞で勝つことはとても重要だと分かっていました。そして彼の真価はきわめて明白に証明されました」。
キネーン氏はシーザスターズと9戦すべてでコンビを組んだ。オックス調教師について聞かれて、同氏は「素晴らしい調教師で卓越した紳士です」と答えた。
ホースレーシングアイルランド(HRI)のCEOブライアン・カヴァナー氏はこう語った。「ジョンは競馬産業とアイルランドの素晴らしいアンバサダーです。いつも紳士的な対応をしてくれ、時間と知識を惜しむことなく与えてくれます。本当に一時代の終わりです」。
オックス調教師にとって、英ダービーと凱旋門賞を同じ年に優勝した初めての馬はシンダー(Sinndar)である。同馬は2000年にその偉業を達成した。また、アラムシャー(Alamshar)は2003年に愛ダービー(G1)とキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)を制した。アザムール(Azamour)とリッジウッドパールはそれぞれG1・4勝を達成し、リッジウッドパールはジョン・ムルタ騎手を背に1995年BCマイル(ベルモントパーク)で優勝するという快挙を遂げた。
オックス調教師は、1987年愛セントレジャー(G1)をユーロバード(Eurobird)で制してG1初優勝を達成した。同調教師にとって最後のG1優勝となったのは、シーザスターズが凱旋門賞を制した1時間半後にアランディ(Alandi)が達成した2009年カドラン賞(G1)優勝である。
By David Jennings