ホリー・ドイル騎手(24歳)は、英チャンピオンズデーのスプリントS(G1 10月17日 アスコット)でグレンシール(Glen Shiel せん6歳)が勇敢にもブランド(Brando)を鼻差で凌いで勝利を達成したとき、そのG1優勝の快挙を"夢が叶った"と言い表した。
ドイル騎手はその日すでに、英チャンピオンズデーを盛り上げていた。第1レースのロングディスタンスカップ(G2)においてトゥルーシャン(Trueshan)とコンビを組んで他馬を撃退して優勝し、この権威ある競馬の祭典において勝利を挙げた初めての女性ジョッキーとなっていた。それでも、スプリントSでの自身初のG1優勝は重大な瞬間となった。ドイル騎手は、英国の平地競走でG1優勝を果たしたわずか2人の女性ジョッキー、アレックス・グリーヴス(Alex Greaves)氏とヘイリー・ターナー氏の仲間入りを果たしたのである。
また、グレンシールがスプリントカップ(G1 9月5日 ヘイドック)での2着よりも着順を1つ上げたことで、同馬を管理するアーチー・ワトソン(Archie Watson)調教師にとってもG1初優勝となった。グレンシールはこれで偉大なスプリンターであることを証明したが、以前は10ハロン(約2000m)のレースで走っていた。
ドイル騎手は呆然としながらこう語った。「今のところ少し動揺しています。まさに夢が叶いました。年初の目標は重賞優勝であり、"いつかはG1を勝ちたい"と言い続けてきました。それが今年叶うとは思ってもみませんでした」。
これは急上昇中のドイル騎手に訪れた最も新しい重大な転機だった。10月14日(水)にはケンプトン競馬場で、昨年自ら樹立した英国の女性騎手の年間最多勝記録を更新している。
今ではドイル騎手の騎乗の質は量に追いついている。グレンシールは今年6頭目の重賞勝馬であり、今シーズンは目覚ましい活躍を遂げた日がいくつもあった。ロイヤルアスコット開催での初勝利を挙げ、ジュライフェスティバル(ニューマーケット)で重賞を制した。そして8月にはウィンザー競馬場で1日5勝を挙げた(ブックメーカーはこの快挙達成に900倍のオッズをつけていた)。
同騎手はこう語った。「我を忘れて喜ぶような気にはなれません。今起こっていることは何か妄想のようなものです。すべてがあわただしく進展しましたが、それでも素晴らしい数年間でした」。
ドイル騎手は競走結果が確定するのを、わずかだが不安を感じながら待っていた。単勝81倍のブランド(せん8歳)が終盤に猛追してきて、ワンマスター(One Master)、アートパワー(Art Power)、オクステッド(Oxted)も間近に迫っていた。しかし最終的に、ケヴィン・ライアン騎手を背に立派に戦ったブランドをグレンシールが鼻差で下して優勝した。
ドイル騎手はこう続けた。「僅差で安心できませんでした。勝てなかったと思っていました。だから結果を見たとき、私たちは有頂天になりました。オクステッドとは残り3ハロンの付近から長くて激しい叩き合いを演じ、持ちこたえさせるためにうまくやれているだろうと考えていました。実際そうすることができましたが、グレンシールは実に勇敢な馬です」。
「グレンシールは年を重ねるごとにスプリンターとしての才能を開花させました。彼に初騎乗したのは10ハロンのレースであり、それほどスピードがあるとは感じませんでしたが、後方につけるほど加速しました」。
グレンシールはドイル騎手を背に素早いスタートを切り、道中ずっと追われていたが、その驚くほどのスタミナが有利だったことを証明した。ジュライカップ優勝馬オクステッドとスプリントカップ優勝馬ドリームオブドリームズ(Dream Of Dreams)は残り2ハロンの付近で威圧的に並びかけてきたが、グレンシールはそれを引き離し、ゴール手前でブランドとワンマスターの強襲を阻止するために力を振り絞った。
ドイル騎手はこう付言した。「アートパワーに乗ったシルベストル・デ・ソウサ騎手が前半に私をとらえに来なかったので、先頭を主張しました。そのようなことはG1ではあまりありません」。
「ドリームオブドリームズを撃退する唯一の方法は、この馬場状態だと彼より先行してゴール板の先まで粘ることだと考えました。残り3ハロン付近で腹を蹴ってグレンシールに合図を送り、私たちは長くて激しい叩き合いを戦い抜きました」。
By Matt Butler
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[Racing Post 2020年10月17日「History maker Doyle lands first Group 1 in thrilling Champions Sprint Stakes」]