第100回コックスプレート(G1 10月24日 ムーニーバレー)は歴史上異例なものとして語り継がれようとしていた。しかし、グレン・ボス騎手が一流輸入馬で元エイダン・オブライエン厩舎所属馬のサードラゴネットの手綱を取って、自身にとってのコックスプレート4勝を果たしたことで、このレースはこの先何年も人々の記憶に残るものになった。
サードラゴネットがアーモリー(Armory)とロシアンキャメロットを相手に高速決着を制したことで、ヴィクトリア州の競馬界で頭角を現しつつあるキアロン・マヘア&デヴィッド・ユースタス厩舎(Ciaron Maher and David Eustace)はコックスプレート初優勝を達成した。
サードラゴネットは中団からアーモリーを追跡してとらえ、1½馬身差の勝利を決めた。1番人気馬ロシアンキャメロットはそのさらに¾馬身後ろの3着に敗れた。
最終コーナーで大外から先頭を目掛けて追い込んできたマガトゥー(Mugatoo)は4着に健闘し、レース半ばで躓いた不運な牝馬アルカディアクイーン(Arcadia Queen)は5着となった。
ボス騎手はコックスプレート4勝を達成したことで、ヒュー・ボウマン騎手とブレント・トムソン騎手の記録に並んだ。ボウマン騎手がコーフィールドカップ(G1 10月17日)でのアンソニーヴァンダイクへの騎乗を優先して、不注意騎乗による騎乗停止処分の適用を今週にしたため、ボス騎手は急遽サードラゴネットに騎乗することになった。
ボス騎手はコックスプレートのウィナーズサークルをすでに3回経験していたが、それでもこのレースがもたらしたスリルに圧倒されており、こう語った。
「少年時代に、キングストンタウンとマニカトが対戦したコックスプレートのビデオを擦り切れるほど見たものです。そのためコックスプレートは少年時代の私の心理に深く根付いていました」。
「特別なレースです。これ以上の良い展開を望むことはできなかったでしょう。サードラゴネットは素晴らしい騎乗をさせてくれました。レース中ずっと私は馬の動きを指先に感じているだけでしたが、彼はしっかり走ってくれました。"ほぼ勝ちに行くようなものだ"と考えていました。彼は任務を達成するために意気込んでいました」。
「もともと重馬場だと本領を発揮する馬だと思っていました。彼は絶好調で、メルボルンカップ(G1 フレミントン)ではもっと良くなるにちがいありません。でも、実際のところ決勝線に近づくにつれて活気づきました。本当に加速してゴールを駆け抜けました」。
「今日彼に騎乗した感触では、彼はメルボルンカップに出走すれば、とても良いレースをするかもしれません」。
ボス騎手はこれまで、コックスプレートを2005年にマカイビーディーヴァ、2009年にソーユーシンク、2012年にオーシャンパークで制している。しかし同騎手は今回、レース中とレース後に歓喜のために取った行動により、裁決委員から合計2,000豪ドル(約15万円)の過怠金を言い渡された。
裁決委員はまず、ボス騎手がゴール板を通過する前に喜びのあまり鐙に高く立ち上がった行動に1,000豪ドル(約7万5,000円)の過怠金を科した。
またその数分後、ボス騎手が下馬する際に厩舎スタッフにハグした行動を、裁決委員は新型コロナウイルス予防対策の違反としてさらに1,000豪ドル(約7万5,000円)の過怠金を科した。
元障害騎手のマヘア調教師は現役時代にグランドアニュアルスティープルチェイスを4勝しているが、今回のコックスプレート優勝は彼の調教師生活において最高の瞬間と評してこう語った。
「最高です。コックスプレートは優勝するなんてことは言うまでもなく、ただ馬を出走させることでさえも夢のようなレースです。このレースに出走できるほど優秀な馬を管理することだけでも十分なぐらいです。信じられないほど素晴らしいことです」。
マヘア調教師はメルボルンカップに、今回すでに深い印象を与えたサードラゴネット、そしてペルサン(Persan)とエタジェームズの少なくとも3頭を出走させることを望んでいると語った。
そして「サードラゴネットはまだ燃え尽きていないでしょう。彼はレース後は誘導馬のように落ち着いていました」と付言した。
By Andrew Eddy/racing.com
(1豪ドル=約75円)