ドイツのリーディングジョッキーに4回輝いたフィリップ・ミナリク騎手(45歳)は、7月の落馬事故から4ヵ月間昏睡状態に陥り、その大きくて暗い穴のような状況を乗り越えるのに、友人や家族からの激励と支援がどれほど支えになったかを語った。
ミナリク騎手はマンハイム競馬場での落馬事故により、頭部外傷を負い、脚・足首を骨折し、入院生活を送っていたが11月初めに帰宅した。同騎手のために立ち上げられた募金サイト「ゴーファンドミー(Gofundme)」のページは、フランキー・デットーリ騎手のツイッターでの呼び掛けもあり、約12万ユーロ(約1,500万円)を集めた。
チェコ出身のミナリク騎手は、昨年のシャーガーカップ(アスコット)で欧州チームのキャプテンを務め、初騎乗を勝利で飾ったことで競馬ファンを驚かせた。
G1優勝ジョッキーはこう語った。「目が覚めてから、とにかく家族が待つ我が家に帰りたいと思いました。過去4ヵ月間のわずか4週間しか思い出せません。それ以前は大きな暗い穴のようです。これまで時々ひどい落馬事故に遭いましたが、奇跡的に無傷ですみました。しかし今回は、いたって通常の落馬事故に遭ってしまいました」。
「医師は記憶は戻ってくるが1年かかるかもしれないと言います。彼らを100%信じています。これが普通のことだと言われれば、それを信じるまでです」。
「車椅子でどのように生活しているかについて聞くために、元騎手のフレディ・ティリキ(Freddie Tylicki)氏、クリスチャン・ツァヘ(Christian Zschache)氏、ぺーター・ウーグル(Peter Heugl)氏に電話しました。これから車椅子生活になるかもしれないと心配でしたが、彼らは"僕らができたのだから、たとえそうなったとしても君ならできるさ"と言いました」。
ミナリク騎手の最愛の人たちは愛情と激励の気持ちを伝えるためにトニーボックス(録音機)にメッセージを残し、同騎手は病院で1人きりのときに再生していた。
カーチャ夫人はこう振り返った。「フィリップは私が病院にいないとき、ずっとその録音を再生していました。私たちは友人や家族から多くの素晴らしいメッセージを集め、フィリップはそれを四六時中聞いていました」。
ミナリク騎手は人に助けを求めることの難しさについて語った。「ドアを開けるとき、階段を上り下りするとき、トイレを利用するときはいつも、助けが必要です。これまでスポーツ選手として活躍してきて人の手を借りることなどなかったので、とても苦労しています」。
2014年バーデン大賞(G1)をアイヴァンホウで制してキャリア最高の勝利を挙げたミナリク騎手が、このようなひどい落馬事故に遭ったことを機に引退したとしても驚くにはあたらないだろう(訳注:アイヴァンホウは2014年ジャパンカップでミナリク騎手の手綱によりエピファネイアの6着)。
同騎手はこう語った。「いずれにしても引退は間近に迫っていました。あと5年ぐらいは乗ったかもしれませんが、それよりは長くなかったでしょう。肉体的に乗れたとしても、不安にさいなまれるのは時間の問題だったでしょう」。
「2014年のバーデン大賞にはCNNやBBCなどあらゆるメディアが駆けつけました。誰もがシーザムーン(それまで無敗だった2014年独ダービー馬)をお目当てにしていました。だから私が勝てたのは素晴らしいことでした。そしてそれはアルコール中毒のために入院してからちょうど1年後のことでした」。
By Kitty Trice
(1ユーロ=約125円)
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