ボリス・ジョンソン首相は、英国の競馬場が12月2日から入場者数を制限して観客を再び迎えることができ、ベッティングショップも営業を再開できると発表した。この動きは、競馬界と賭事業界によって驚きと喜びをもって歓迎されている。
イングランドにおいて新型コロナウイルスの感染拡大が最小の地域「ティア1」では、屋外スポーツ会場で上限を4,000人として観客が入場できるようになる。「ティア2」では、入場者数の上限は2,000人までに引き下げられる。
競馬界へのさらなる後押しとして、イングランド全域でのロックダウンが終了したときに、イングランド中のベッティングショップは他の「必要不可欠でない店舗」と同様に営業を再開できる。
競馬関係者はこの思いがけない展開を歓迎した。BHA(英国競馬統括機構)のCEOニック・ラスト氏は、4,000万ポンド(約56億円)の融資という形での財政援助の申出に続く英国政府の今回の発表を"大歓迎のニュース"と表現した。また、競馬場協会(RCA)のCEOデヴィッド・アームストロング氏は"歓迎すべき展開"と称賛した。
イングランドのロックダウン解除に向けて取り組む冬期計画では、首相が11月23日に庶民院で発表したゾーニング制度の下で「ティア3」とされる地域において、スポーツは引き続き無観客で開催される。
英国政府の冬期計画は、ロックダウン前にイングランド全域で実施されていた3段階制度(ティア1~3)に本質的に依拠する。一方、明らかになる決定的な違いは、ベッティングショップが他の「必要不可欠でない店舗」と同様に扱われることである。つまりベッティングショップはたとえ新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な地域であっても営業を許される。
賭事業界が提示した1つの重要な譲歩案が、英国政府の考えに効果をもたらしたようだ。それは、「ティア3」のベッティングショップにおける強化された感染予防策である。その中には、椅子の撤去、一度に入場できる顧客数の制限、ライブスポーツの放映中止などが含まれていた。
カジノは「ティア3」において引続き閉鎖となるが、イングランドのすべてのベッティングショップが12月2日から営業を再開できるというニュースはブックメーカーだけではなく、競馬界の財政を担当する人々にも歓迎されている。
1ヵ月にわたるロックダウンは、イングランドのベッティングショップ5,681店舗が閉鎖されたために、競馬界への賦課金・メディア権料収入に1,250万ポンド(17億5,000万円)の損害を与えたと見込まれる。
BHAも賭事・ゲーミング協議会(Betting and Gaming Council: BGC)も、「ティア3」のベッティングショップへの営業禁止命令を解除するようにホワイトホール(日本の霞が関にあたる)に対してロビー活動を行っていた。
BGCのCEOマイケル・ダガー(Michael Dugher)氏はこう語った。「イングランドの大半の地域に住む顧客にとっても、大手ブックメーカー店舗の従業員にとっても素晴らしいニュースです」。
英国では競馬は6月1日に再開されたが、9月にドンカスター競馬場とウォリック競馬場で試験的に有観客開催が行われた以外は、無観客で実施されている。11月26日に見直された3段階制度(ティア1~3)の正確な内訳が発表されれば、英国の大部分が「ティア2」と「ティア3」に改められると予想されている。それでも、12月2日以降に多くのスポーツ会場が何らかの形で観客を迎えることが期待されている。
ジョンソン首相は、「『ティア1』と『ティア2』において、観客を迎えるスポーツイベントやビジネスイベントは、入場数を制限しソーシャルディスタンスを確保することで再開できます」と述べた。
オリバー・ダウデン文化相は11月23日にこう語った。「慎重なアプローチを取り、まず感染リスクが最も低い地域から始めることで、予想よりも早くに入場ゲートを開けることを嬉しく思います」。
「スポーツ界がファンの安全を確かにするためにあらゆる措置を取り、ファンも本分を尽くして互いに気を配り、いずれすべての観客が再び安全に迎えられるようになると、私たちは信じています」。
12月2日にリングフィールド競馬場とケンプトン競馬場で平地競走が施行され、ヘイドック競馬場とラドロー競馬場で障害競走が施行される予定である。
10万人あたりの新たな感染者数が現在のレベルであるならば、ヘイドック競馬場はほぼ確実に無観客のままだが、11月26日に他の3競馬場がどのティアに指定されるかはまだ不明である。
12月5日には、サンダウン競馬場でティングルクリーク開催が行わる。先週、ロンドンと南東イングランドでは感染者数が増加したが、サンダウン競馬場があるエルブブリッジ特別区は新たな感染者数を10万人あたり144人に抑え、感染率が比較的低い地域となっている。
チェルトナム競馬場は「ティア3」には指定されないだろう。すなわち、インターナショナル開催(12月11日・12日)にはある程度の観客が入場できそうだ。
ラスト氏はこう語った。「競馬界と、3月から愛する競馬を生で見られない数百万人のファンにとって大歓迎のニュースです。まずは入場者数が制限されること、そしてすべての競馬場が観客を迎えられるわけではないことは分かっていますが、これは新たな展開です」。
「競馬場に戻ってくるすべての競馬ファンが政府の公衆衛生ガイドラインを守り、そのことが徐々に入場者数を増やすことにつながると確信しています。競馬界は責任ある行動を取るのだといつも述べてきました。私たち全員が競馬が軌道に乗ることを楽しみにしているのです」。
政府が援助する4,000万ポンド(約56億円)の競馬界における主な中継点は競馬場となるようである。アームストロング氏は観客が戻って来ることが競馬が良い方向に進むための一助となると強く主張した。
「先週の財政援助の発表に続き、この発表はイングランド全域の競馬場にとって大変喜ばしい展開です。入場者数が制限されていても、競馬場はファン・来賓客・馬主のための施設を再開できます。スポーツ部門全体にわたり大規模な試験的開催を準備するための取組みは続けられ、競馬界はこの大切な回復期においてこれからも中心的な役割を果たすでしょう」。
馬主協会(ROA)のCEOチャーリー・リヴァートン氏は、ホースメングループ(Horsemen's Group)にむけてこう語った。「これは歓迎すべきニュースであり、試練の時期を経た競馬界にとって大きな前進です」。
「私たちがここまで来るために尽力してくださった競馬産業や政府の人々に感謝します。そして競馬場への馬主の入場について建設的な会話ができることを楽しみにしています」。
「馬主などの競馬参加者は、無観客および厳しい制約の下で競馬を確実に続行させるために決定的な役割を果たしてきました。彼らの尽力は引き続き大いに評価されるでしょう。すべての馬主がもうすぐ競馬場に戻って来られることを強く望んでいます」。
By Scott Burton
(1ポンド=約140円)
[Racing Post 2020年11月23日「Crowds to return and betting shops to reopen in England next week」]