スノーフォールは先頭に立って他馬を引き離すというまったく傑出したパフォーマンスを見せ、5月12日のミュージドラS(G3 ヨーク)を制した。これにより亡き父ディープインパクトにほとんど残されていない欧州クラシック競走制覇のチャンスの1つをもたらしたようだ。
全能の種牡馬ディープインパクトは2019年に首の怪我の合併症によりこの世を去った。日本軽種馬協会(JBBA)の情報によると、ディープインパクトは最後のシーズンに24頭にしか種付けしなかった。それでも、今年デビュー予定の2歳産駒ははるかにたくさんいる。
クールモアとその提携グループは、ガリレオやサドラーズウェルズの牝馬のための強力なアウトクロス(異系交配種)としてディープインパクトを使ってきた。その最たる成功は、サクソンウォリアーの英2000ギニー(G1)優勝や、ファンシーブルーの昨年の仏オークス(G1 ディアヌ賞)とナッソーS(G1)の制覇で見られた。また、晩年にディープインパクトを訪れた牝馬の中には、ウィンターやマインディングなどの名牝が含まれる。
ロンコン・チェルストン&ワイナットが生産したスノーフォールは、クールモア&エイダン・オブライエン調教師のお馴染みのファミリー(牝系)に属している。母ベストインザワールドは5年前のミュージドラSで本領を発揮しなかったものの、最終的にギブサンクスS(G3 コーク)を制してその競走生活を終えた。
ベストインザワールドは、BCターフ(G1)と凱旋門賞(G1)を制したファウンドの全妹である。ファウンドは初仔のバトルグラウンドが昨年のヴィンテージS(G2)を制したことで、繁殖牝馬として幸先の良いスタートを切った。この姉妹の母はG1馬レッドイーヴィーである。
スノーフォールは英オークス(G1)の最有力候補の1頭となっている。一方、ニアルコスファミリーが所有するディープインパクト牝駒、ハラジュク(アンドレ・ファーブル厩舎)は5月1日のクレオパトル賞(G3 サンクルー)を制し、仏オークスに出走する可能性がある。
この日、ヨーク競馬場でミュージドラSよりも前に行われたレースでは、スターマンがデュークオブヨーククリッパーロジスティクスS(G2)を制し、チェヴァリーパークスタッドのベテラン種牡馬ダッチアートにとって15頭目の重賞優勝産駒となった。
これまで4戦しているスターマン(エド・ウォーカー厩舎)は、英チャンピオンスプリント(G1 アスコット)に挑んだときに唯一の敗北を喫している。この牡駒は、オーナーブリーダーのデビッド・ウォード氏がワットンマナースタッドで繋養する少頭数の繁殖牝馬が送り出した仔の中でも傑出した存在である。
ウォード氏はスターマンが昨年のガロウビーS(L)を制したことで、熱烈に愛するヨーク競馬場ですでに最高の瞬間を経験していた。スターマンは現役時代に格下レースを制した繁殖牝馬ノーザンスター(父モンジュー)が送り出したわずか3頭の仔のうちの2番目である。なお半姉のサンデースターは、スターマンと同じ陣営の下で競走してオーソ―シャープS(G3)で3着となっている。
ダッチアートは、G1スプリンターであるスレードパワー・マブスクロス・ガーズウッドを送り出している。17歳となってもプライベート価格で種付けを続けていることから、そのような可能性を秘めた産駒がふたたび現れると思われている。
By Tom Peacock