アガ・カーン殿下の優秀な自家生産馬で、G1馬10頭を送り出した種牡馬ダラカニは21歳で死んだ。
ダラカニの父は仏ダービー(G1 ジョッケークリュブ賞)優勝馬ダルシャーン、母はステークス勝馬ダルタワ(父ミスワキ)である。ダラカニは2歳シーズンにクリテリウムアンテルナショナル(G1)などで勝利を挙げて3戦3勝を果たした。
さらに3歳シーズンでもリュパン賞(G1)、仏ダービー、凱旋門賞(G1)などで勝利を収め、素晴らしい活躍をした。
ダラカニはアラン・ド・ロワイエ-デュプレ調教師に手掛けられ、9戦8勝の成績を収めた。そして2003年の欧州年度代表馬と欧州最優秀3歳牡馬に輝き、その年に引退してからはアガ・カーン殿下のギルタウンスタッドで種牡馬として供用された。
アガ・カーン殿下はダラカニがラストランの凱旋門賞を走り終えたとき、こう述べた。「2歳のときも3歳のときも、あらゆる競走距離と馬場状態において彼は傑出したパフォーマンスを見せました」。
「比較するのはたいへん難しいのですが、この馬にはさまざまな優れた才能が集結していました。それゆえ、加速すべきときにはダッシュする能力、ペースを合わせなければならないときには追走する能力を発揮し、あらゆる馬場状態に対応する能力も備わっていました」。
クリストフ・スミヨン騎手はダラカニの9戦すべてで手綱を取った。激しいたたき合いとなった愛ダービー(G1)でアガ・カーン殿下のもう1頭の自家生産馬アラムシャーにねじ伏せられ½馬身差で敗れたのが唯一の黒星となった。
ロワイエ-デュプレ調教師はこう語った。「ダラカニがダルシャーンの産駒であることは私にとってとても重要でした。ダルシャーンは調教生活において初めて出会ったとても優秀な馬で、仏ダービーでさまざまな強豪馬を負かしました。その20年後に彼と同じぐらい優秀な産駒、ダラカニと出会ったのは本当に素晴らしいことでした」。
「仏ダービーで優勝したことがダラカニにとって最高の瞬間でしたが、リュパン賞でも素晴らしいパフォーマンスを見せました。どんな馬場状態でもこなしましたが、速い馬場を一番得意としていたような印象を受けました」。
「私たちはとても自信を持って仏ダービーに挑みました。彼はたやすくダッシュしてゴール間近でさらに加速することができました。それが彼の本当の強みでした」。
「ダラカニはアイルランドでアラムシャーに敗れました。アラムシャーも殿下の馬だったので、その敗北を受け入れるのはさほど難しいことではありませんでした。カラ競馬場を拠点とするジョニー・ムルタ騎手がコースを熟知していたことが、違いを生んだのだと思います」。
「一方凱旋門賞では、ダラカニが不得意とするうんざりするような重い馬場状態だったために、彼は地の利を生かすことができませんでした。どの優良馬でもそうですが、彼はどのような状況にも適応できました。見栄えの良い勝ち方ではありませんでしたが、彼は勝ちきることができました。その日は根性を見せたのです」。
ダラカニは第2のキャリアでも印象的な成績を収め、G1馬10頭を送り出した。とりわけ、愛オークス優勝馬ムーンストーン、仏ダービー優勝馬リライアブルマン、英セントレジャーS優勝馬コンデュイット、愛セントレジャーS優勝馬ダンカンが有名である。
ダラカニは、昨年調教中に故障して悲しいことに予後不良となったコロネーションカップ(G1)優勝馬デフォーも送り出している。また、ファルマスS(G1)とサンチャリオット(G1)を制した牝馬インテグラルの父でもある。
ブルードメアサイアー(母父)としても実績を作った。ダラカニの牝馬は、欧州最優秀2歳牡馬でダーレーの新種牡馬であるピナトゥボ、日本のG1馬タワーオブロンドン、英ダービー(G1)2着馬ユーエスアーミーレンジャー(US Army Ranger)を送り出している。
魅力的な芦毛のダラカニは、トップクラスの牝系に属しており、デイラミの半弟である。デイラミはロワイエ-デュプレ調教師とサイード・ビン・スルール調教師に手掛けられて複数のG1を制し、英セントレジャー優勝馬ロジシャンとステークス競走2勝馬デイマルティ(Daymarti)の母父となっている。
ダラカニは2016年に種牡馬生活から引退し、ノルマンディー地方のウイイ牧場(Haras d'Ouilly)で平穏な引退生活を送っていた。
ロワイエ-デュプレ調教師は「数年前に牧場にいる彼に会いに行きました。とても幸せそうに引退生活を送っていました」と付言した。
By Kitty Trice & Scott Burton
(関連記事)海外競馬ニュース 2016年No.31「16歳のダラカニ、種牡馬生活引退(フランス)」
[Racing Post 2021年1月15日「Dalakhani, the Aga Khan's champion racehorse and leading sire, dies aged 21」]