エイダン・オブライエン調教師は、セントマークスバシリカにより仏ダービー(G1 ジョッケークリュブ賞)初制覇がもたらされたことで、欧州競馬の現代史の中でも最も奇妙な例外の1つを見事に解決した。
オブライエン調教師は英オークス(G1)でのスノーフォールの眩いばかりの勝利に続きこの快挙を成し遂げたことで、クラシック競走の週末をバリードイル(クールモアの調教拠点)にとって素晴らしい形で締めくくった。一方、イオリッツ・メンディザバル騎手(47歳)にはキャリア後半での幸福な時期がもたらされた。3週間前の仏2000ギニー(G1)での馬および鞍上の努力は結実し、メンディザバル騎手は11ヵ月前にミシュリフで優勝したこのレースをふたたび制したのだ。
オブライエン調教師とメンディザバル騎手はレース後のオンライン記者会見で、お互いにどれだけ感謝しているかを競い合った。2人とも事前にこのシユーニ産駒への絶大な信頼を語っていたが、馬群が残り4ハロン(約800m)でシャンティイ城の前を通過したとき、セントマークスバシリカはまるでレースに参加したばかりのように走っていた。
シーリウェイとミルボスクは 馬群から抜け出しそれぞれの関係者にスリルを与えたが、1¾馬身の着差は優勝馬の優勢を覆すものとは言えない。
オブライエン調教師は「このレースを勝つためにはとても優秀な馬が必要です。勝つのがとても難しいレースです」と述べた。なお、これまで仏ダービーで敗れたオブライエン厩舎の39頭のうち最高の成績を収めたのは2015年にニューベイの2着となったハイランドリールである。
同調教師は、「セントマークスバシリカの資質は、かなりのスピードがあることと素早い身のこなしです。とても落ち着いた馬で、道中順調に走り、レースでは従順です。仏ダービーを勝つにはこれらの資質すべてが必要だと考えました」と語った。
パディパワー社は凱旋門賞(G1)でのセントマークスバシリカのオッズを17倍から10倍に下げた。また、コーラル社はスポンサーを務める7月のエクリプスS(G1 約2000m サンダウン)でのセントマークスバシリカのオッズを9倍から4.5倍に引き下げ、昨年の仏ダービーの覇者ミシュリフに次ぐ2番人気としている。
セントマークスバシリカのG1・3勝はすべて重馬場で達成されている。しかしオブライエン調教師はエクリプスSと英チャンピオンS(G1)に"出走する可能性は高い"としながらも、馬場がより良好な状態であるときにさらに良いパフォーマンスをするかもしれないと注意を促した。
オブライエン調教師はこう続けた。「彼は良馬場を得意とする馬のように動きます。体の動かし方を見れば、良馬場を走ったほうがいっそう有能に違いないと想像できるでしょう。素晴らしい動きをする馬で、脚をあまり曲げずにまっすぐ前方に出します。このことからも、良馬場の方が彼に合っていると考えられます」。
メンディザバル騎手は、残り2ハロン(約400m)を切ったところでわずかに前が開いたのを見て、調教師が理想としていた地点よりも早くにアクセルを軽く踏んだことを告白した。しかし、その段階ではセントマークスバシリカに全力を出させるようなことはしなかった。
欧州の2人の最も偉大な調教師のもとで仏ダービーを連覇した意味を聞かれたメンディザバル騎手は、「去年言ったとおりです。素晴らしい馬に乗れるのはとても光栄なことです。ミシュリフの騎乗依頼をしてくれたゴスデン調教師のおかげでしたし、それはオブライエン調教師にも言えることです。12ヵ月前にこのようなことが起こると言われたら、あなたを追い払っていたでしょう」と語った。
フランス人の気持ちは当然のことながら10月の凱旋門賞のほうに向くが、クラシック二冠馬が2400mの距離で持つかどうかを聞かれて、メンディザバル騎手は「迷うことなく"イエス"です」と答えた。
残りの英国とアイルランドからの遠征馬の中で最上位だったのは8着のディラブ(Derab)である。また、オブライエン厩舎からのもう1頭の出走馬ファンゴッホ(Van Gogh)はコリン・キーン騎手を背に10着に入り、調教師はおそらく競走距離をさらに伸ばすかもしれないと述べた。
フレデリック・ロッシ調教師は、昨年のジャンリュックラガルデール賞(G1)優勝馬シーリウェイが単勝54倍で2着となり、仏2000ギニーでの8着から着順を大きく上げたことに感激していた。
ロッシ調教師はこう語った。「優勝したわけではありませんが、いろんな意味で優勝したようなものです。驚くべきことですよ。私は常に彼をステップアップさせられると考えてきたのですが、これ以上のことはありません。フランク・ブロンデル騎手の騎乗にも満足しています。なんて素晴らしいレース、なんて素晴らしい馬なんでしょう。本当に強い馬に負かされましたが、見事な2着でした」。
ステファニー・ニジ調教師は調教師免許を取得して2年目のシーズンを迎えたばかりだが、管理馬のミルボスクが何とか3着に入ることができた。
ニジ調教師は、「全力で叫びましたよ。優秀な馬らしく見事に加速しました。今年の初めにちょっとした不安があったので、使い出しが遅れました。肉体的に大きく変化したので、私たちはいくつかのことを調整しなければなりませんでした。しかし彼は今日、最高のパフォーマンスを見せてくれました。秋には主役になるでしょうし、まだ4戦目なので底を見せていません。素晴らしい走りっぷりでした」と語った。
By Scott Burton
[Racing Post 2021年6月6日「A first for Aidan O'Brien as St Mark's Basilica dominates French Derby」]