昨年アルゼンチンで国際的な麻薬密輸の捜査に巻き込まれた馬の1頭が、今度は良い話題で見出しを飾った。2月7日(日)のシンガポールでのデビュー戦で、見事な勝利を達成したのだ。
昨年1月にブエノスアイレス近郊のエセイサ空港で気づかぬうちにおとり捜査に巻き込まれたことから、馬主はこの馬にウィズフィズ(Whiz Fizz)という名前を付けた。ウィズフィズ(父オーペン)は英国人のジェームズ・ピーターズ調教師に管理され、クランジ競馬場でのデビュー戦に挑んだ。
優勝したウィズフィズは、捜査により80kg以上のコカインが押収されたことで、離陸を見合わせた輸送機に乗っていたアルゼンチン産馬6頭のうちの1頭だった。6頭はシンガポールに輸送されようとしていた。
これら6頭のうち、2頭は出走経験のある古馬、4頭は未出走の2歳馬だった。そしてウィズフィズは当時2歳だった4頭中で、一番早くに勝馬となった。
以前は故ジョン・ヒルズ調教師の助手を務め、現在はシンガポールを拠点とするピーターズ調教師はこう述べた。「ウィズフィズは少し気難しく、成長具合は一進一退でしたが、日曜日のパフォーマンスには本当に満足しました。彼はもっと進化していくでしょう」。
「昨年入厩した6頭には何の問題もなく、マンドレイク(Mandrake)という古馬も勝利を挙げました。マンドレイクはすぐに慣れましたが、若い馬はまったく新しい環境に馴染むのに少し時間が掛かりました」。
輸送機からのコカイン押収事件はアルゼンチンでトップニュースとなり、世界中で報じられており、6頭がシンガポールに到着してから、地元の競馬コミュニティーは騒然としていた。
ピーターズ調教師は、「今回優勝したことで、私たちは各方面から少しお仕置きを受けました。ワッツアップ(メッセージアプリ)で馬主たちとグループを作っていますが、よくからかわれています。日曜日のレース終了後には2秒ごとに着信音が鳴っていました。でも誰もが大喜びでした。この物語はハッピーエンドとなったわけです」と語った。
By Andrew Dietz
[Racing Post 2021年2月8日「Gee Whiz! Racehorse caught up in major cocaine bust dazzles on debut」]