世界最大の競馬・生産事業体の1つ、シャドウェルは国際的な事業見直しを経て、南半球から事業を段階的に撤退させることにした。
この動きは競馬の国際シーンに重大な経済的影響を及ぼすだろう。シャドウェルの創設者ハムダン殿下(75歳)は今後数ヵ月間にシャドウェルスタッド・オーストラレーシア社を解散し、豪州と南アフリカに所有している優良馬を売却することを決定した。
ハムダン殿下はこの決定の主な理由として、望んでいるほど密接に競馬に関与できないことを挙げた。
ハムダン殿下の有名な青と白の勝負服は、ナシュワン、サルサビル、デイジュール、バターシュなどの活躍により、ヨーロッパの競馬場を華やかに彩ってきた。豪州ではメルボルンカップ(G1)をアトタラク(1986年)とジューン(1994年)で制したことが最も有名である。
シャドウェルのレーシングマネージャー、アンガス・ゴールド氏はこう語った。「ハムダン殿下は、最初はコリン・ヘイズ調教師、そしてその息子で調教師免許を引き継いだデヴィッド・ヘイズ調教師との親交のおかげで、豪州競馬に長年関わり成功を収めてきました」。
「その間、最初の少頭数の管理馬からアトタラク、アルマーラド(1989年コックスプレート優勝馬)、ザビール(1990年オーストラリアンギニー優勝馬)、ジューンなどのチャンピオンが出てきました。他にも、G1馬のアッザーム(1993年シドニーカップ優勝馬)、フラー(1993年コーフィールドカップ優勝馬)、イスティダード(1999年オーストラリアンカップ優勝馬)、タウキート(2006年コーフィールドカップ優勝)、リワーヤ(2006年サールパートクラークS優勝馬)、カフィラ(2019年サウスオーストラリアンダービー優勝馬)が世界的に有名な勝負服を背負って競走しました」 。
「しかし殿下を知る人たちが認めるように、殿下はシャドウェルの馬との密接な関わりを好む"実践的な人"です。アラブ首長国連邦(UAE)で積極的に活動しているために、豪州でシャドウェルの馬に携わりたいと思われていても、十分な時間を割くことができませんでした」。
「その結果、シャドウェルの競馬事業の国際的な見直しの一環として、今後数ヵ月間で南半球の競馬・生産事業を段階的に撤退する決定がなされました。豪州の1歳馬はすべて今後開催されるさまざまなセリで上場されます。その中でも優良馬はイングリス豪州イースター1歳セールで取引されるでしょう。また、繁殖馬は5月末のマジックミリオン繁殖セールに上場されます。現役馬はやがて段階的に売却されるでしょう」。
ハムダン殿下は長年、ヘイズ家と親交を深めてきた。コリン・ヘイズ調教師は殿下と協力関係を結んで間もなく、アトタラクを1986年メルボルンカップ優勝に導いた。
同調教師が1989-90年シーズン終了時に引退したとき、息子のデヴィッド・ヘイズ調教師がシャドウェルの豪州に所有する馬を手掛けるようになり、1994年にジューンでシャドウェルにとって2回目のメルボルンカップ優勝を達成した。デヴィッド氏の息子ベン氏、甥のトム・ダバーニグ(Tom Dabernig)氏が現在、シャドウェルの馬を管理している。
ゴールド氏はさらにこう語った。「ハムダン殿下に代わって、ヘイズ家、すなわちコリン氏、ピーター氏、デヴィッド氏とトニー・マカヴォイ調教師、そして現役のベン・ヘイズ氏、トム・ダバーニグ氏、その優秀なスタッフに感謝したいと思います。彼らはハムダン殿下とシャドウェルのために長年にわたり傑出した仕事をしてくれました。同様に、20年以上にわたって私たちの生産馬を世話するために尽力してくれたヤラマンパークスタッドのアーサー&ハリー・ミッチェル両氏とそのチームに敬意を表したいと思います」。
「シャドウェルは長年、豪州の1歳市場の熱烈な支持者であり続け、豪州と南アフリカの両方で多くステークス勝馬を送り出すという成果を挙げてきました。先に言及した馬の他に、ブルーダイヤモンドS(G1)をマハーシン(1990年)、ナディーム(2006年)、リアーン(2008年)で制しています。残念なことに、ミスフィンランドとエスティジャーブを競り落とせなかったばっかりに、私たちはゴールデンスリッパー(G1)での勝利を逃してしまいました。最近のステークス勝馬には、エンビハール(Enbihaar)、リムラーン(Rimraam)、マディーナティ(Madeenaty)、ザムザム(Zamzam)、ミンハージ(Minhaaj)がおり、これらはすべてセリで上場されます。また、南アフリカではラフィーフ(Rafeef)、マスターキーム(Mustaaqeem)、マジム(Majmu)、エンティサール(Entisaar)が最優秀馬に選出されました」。
「私たちはここ数年、生産馬の質を向上させるために意識的に努力してきました。今後のセリに参加される購買者には素晴らしい馬の購買チャンスがあるだろうと確信しています」。
「私たちがもはや豪州の競馬場に馬を出走させないことはとても悲しいことですが、これを機にハムダン殿下が長年にわたって競馬産業を忠実に支援してきてくださったことに感謝したいと思います。そして最近の大盛況だったゴールドコーストでの1歳セールやシドニーのクラシックセールで見てきたように、今後数年間にわたって購買者すべてに幸運が巡ってくることを願っています。繁栄する競馬産業に参加するのに、今ほどワクワクするような時期はないでしょう」。
By Andrew Dietz
[Racing Post 2021年2月12日「Shadwell to disband racing and breeding operation in Australia and South Africa」]