同世代の騎手の中でも最高級の騎乗能力を誇った2人が、3月初旬に冒険的な競馬事業を立ち上げようとしている。ダリル・ホランド元騎手が、なんとあのキーレン・ファロン元騎手をアシスタントとし、調教師として第2のキャリアに乗り出そうとしているのだ。
以前ライバル同士だった2人は、調教師免許保持者とその右腕になる者としてハラトンコートステーブル(Harraton Court Stables)を共同で運営しようとしている。ホランド氏が所有する同ステーブルはニューマーケット近郊のエクスニングに位置し、50馬房を備える。
ホランド氏は、「私たちは経験豊富です。2人合わせて70年ほどの経験があるなんて信じられますか?だから少ししか勝てないとすれば、どこかがおかしいのです」と語った。
ホランド氏は2008年、ロイヤルアスコット開催で優勝したヒュー・コリングリッジ調教師のかつての調教拠点だったハラトンコートステーブルを購入した。同ステーブルは1905年英ダービー馬キケロ(Cicero)がいた厩舎でもある。
この新たなコンビは3月から管理馬を出走させる予定だ。自らの厩舎を所有できるという財政面での安全性と2人のきらびやかな経歴に魅かれて所有馬を預けてくれる馬主たちのおかげで、ホランド氏は現在の経済状況において他の多くの意欲的な調教師よりも、開業しやすい状況にある。
ホランド氏はこう語った。「私たちはさまざまな馬を預かっており、まずは20頭ほどの管理馬から始めたいと思っています。馬を預けてくれそうな馬主はたくさんいるので、2歳調教セールに行くのが待ち遠しいです。そこで、より良い馬を何頭か手に入れられればと思っています」。
ホランド氏(48歳)は世界中のほとんどの主要競馬国で大きな勝利を挙げ、近年は極東と北米を中心に騎乗してきた。
その騎手生活では、2003年にファルブラヴでエクリプスS・英インターナショナルS・クイーンエリザベス2世Sを制して国内G1・3勝を達成するなど、数々のハイライトがあった。
ファロン氏(55歳)は2011年まで10年連続で年間100勝以上を達成し、華やかな騎手生活を送った。またリーディングジョッキーのタイトルを6回獲得し、クラシック競走を英国で16勝、母国アイルランドでは6勝した。2005年にはハリケーンランに騎乗して凱旋門賞(G1)で優勝し、その2年後にもディラントーマスで同レースを制した。
ファロン氏は近年、ゴドルフィンなどの有力厩舎の調教で騎乗してきた一方で、リーディング見習騎手に2度輝いた息子のキアラン・ファロン騎手の指導者の役割も果たしてきた。
キアラン・ファロン騎手は昨シーズン、1988年のゲイリー・バードウェル騎手以来の2年連続のリーディング見習騎手となった。同騎手はハラトンコートステーブルの管理馬に頻繁に騎乗することになるだろう。
ホランド氏はこう語った。「ご存じのとおり、キアランはカタールレーシングと第2騎手としての契約を結びました。しかし機会があって彼が騎乗可能であれば、若くて優秀な騎手であるキアランは、ここに父親もいることだし、そんな要望も聞いてくれるだろうと思います」。
ホランド氏は幅広い経験のおかげで、リーディング見習騎手としては2年先輩のフランキー・デットーリ騎手にも騎乗を依頼できるだろう。
「フランキーは幸運を祈るメッセージとともに本当に素晴らしいビデオを送ってくれました。彼は古くからの仲間で、英国にいるときは検量室で仲良くしていました。彼には"ズブい馬には乗せないよ。単勝1.8倍の馬だけお願いするよ"と言いました」。
ブックメーカーのパディパワー社は、ハラトンコートステーブルが今年のロイヤルアスコット開催で優勝馬を出すことに41倍、年内にG1馬を出すことに67倍のオッズをつけている。そして、ホランド氏が調教師として2022年末までにクラシック競走で優勝することには151倍のオッズをつけている。
By Scott Burton