フランスで最も成功した女性騎手の1人、ミカエル・ミシェル騎手(26歳)が荷物をまとめて米国に向かい、北米を拠点に名を成そうとしている。
ミシェル騎手は4月にサンクルー競馬場で最後となるレースに騎乗した。10日後にはケンタッキー州に飛び、夫でマネージャーのフレデリック・スパニュ元騎手とともにそこで拠点を構える予定である。
以前フランスで見習騎手としてリーディングに輝いたミシェル騎手は、数々のフランス人騎手が通ってきた道を進む。同国出身のフラヴィアン・プラ騎手、フロラン・ジェルー騎手、ジュリアン・ルパルー騎手、最近ではヴァンサン・シュミノー騎手などがより多くのチャンスを求めてこの道を辿っている。
ミシェル騎手は当時の女性騎手の最多勝記録である72勝を挙げてリーディング見習騎手となってから、フランス国内よりも海外でずっと多くの勝利を収めてきた。今年はフランスでまだ1勝も挙げていない。2020年には、日本で短期騎乗を果たしてアイドル的な地位を獲得し、イタリアで歴史あるジョッキークラブ大賞(G2)を制し、ドバイやドイツでG1勝利を達成した。そして昨年はシャーガーカップ(アスコット)に参戦した。米国でのエージェントはジェーン・ブキャナン氏である。
ミシェル騎手はこう語った。「冬のあいだ怪我による戦線離脱中に決断しました。フレッドと私は米国へ移住することを何年も前から考えていたのですが、今それが実現します。靴がたくさんあるので何とか荷物をまとめなければなりません」。
「私の家族にもフレッドの家族にも別れを告げました。あと1週間か10日ほどでフランスを発ちます。ケンタッキー州に行きます。夏にはサラトガ、冬にはおそらくニューオリンズで騎乗するかもしれません」。
騎乗拠点を欧州から米国に移す他のジョッキーとは違い、ミシェル騎手はすでに日本でダート競走の経験が豊富である。
ダート競走を施行する地方競馬全国協会(NAR)の南関東で騎乗したミシェル騎手は、短期騎手免許で騎乗し30勝を挙げた。この活躍によりファンが増え、彼女のSNSのフォロワーは7万人近くに迫っている。
JRAの騎手免許を取得するために日本に本格的に戻る計画があり、日本語も学んでいたが、新型コロナウイルスの感染拡大によりその願望は打ち砕かれていた。
「日本から騎乗依頼があったとき、すでに米国という考えもありました。将来は日本でキャリアを積もうかと考えていましたが、日本では依然として新型コロナが感染拡大しており、国境は閉ざされたままです。そこで最初の考えに戻りました」。
「米国での騎乗はとてもいい経験になるでしょうね。馬主や調教師が私の騎乗ぶりを気に入ってくれることを望んでいます。日本やサウジアラビアのダート戦で300回ほど騎乗してきました」。
「それは私の強みになるでしょうね。米国に拠点を移したフランス人ジョッキーが皆、必ずしもダートでの経験があったわけではありませんが、私は十分に経験を積んできました」。
ミシェル騎手は女性騎手の先駆け的存在だった。フランスでは女性騎手に騎乗機会を増やすために、重賞やリステッド競走よりも格下のレースで1.5㎏のアローワンス(減量特典)が導入されている。ミシェル騎手は2018年に72勝を挙げてリーディング見習騎手となったが、それ以降は最多で年間22勝だ。
ミシェル騎手はこう続けた。「私の考えでは、フランスでは女性騎手が置かれている環境はまだ良くはありません。騎乗機会があまり多くはありませんし、クレーミング競走やハンデ戦のような格下レースに限られているような状況です。調教師や馬主は、ビッグレースに乗れるだけの才能があることを証明するチャンスを女性騎手に与えてくれません」。
「日本ではそのようなチャンスが与えられました。そして米国にはシャンタル・サザーランドやソフィー・ドイルのような素晴らしい女性騎手がたくさんいます。その前に活躍していたロジー・ナプラヴニクやジュリー・クローンなどもとても優秀でした」。
「フランスにはそのような女性騎手がいないのです。そのような状況を受け入れる準備が整っていないのです。米国のほうが向いているかどうか分かりませんが、とにかくやってみます」。
By Jon Lees
[Thoroughbred Racing Commentary 2022年5月12日「On the road again: record-breaker Mickaelle Michel joins French jockey exodus to US」]