6月5日(日)仏ダービー(G1 ジョッケクルブ賞 シャンティイ)
英ダービー(G1 エプソム)でデザートクラウンがライバルを数完歩で退けてからわずか24時間後のことである。同じように、仏ダービーでヴァデニがエルボデゴンと仏2000ギニー(G1)の覇者モダンゲームズを撃退し、フランスの新星らしく圧倒的な強さを見せつけた。
ダルシによる仏ダービーでの勝利から16年が経ち、ヴァデニが達成したこの勝利により、アガ・カーン殿下は一族が競馬に関わってから100周年という節目を実にふさわしいかたちで祝えることになった。
過去に仏ダービーを3勝しているクリストフ・スミヨン騎手にとって新たにもたらされた1勝でもあった。彼はこの見事な勝利を決勝線のかなり手前で祝うことができた。
スミヨン騎手はこう語った。「残り400mから300mの地点でライバルを抜き去りました。鞭で1回軽く叩いただけで、見事に発射したのです。すごかったですね。たしかに彼があんなことをするなんて予想外でした。並外れていましたね」。
「殿下のためにもう一度クラシックを勝ちたいとずい分前から考えていました。ジャン-クロード・ルジェ調教師とそのチームは綿密な技でこの馬を仕上げました」。
ルジェ調教師は距離が2100mになった2005年以降の仏ダービーにおいて文句なしの名人となっており、このレースの5勝目を挙げた。2016年以降では4勝目である。
レースの直後、ルジェ調教師はヴァデニがシーズン末に栄誉をかけてデザートクラウンに挑むことになる牡馬であることを確信した。
「あまり立派な体はしていませんが、才能あふれる馬であることは分かっていました。そして、今日はその才能を爆発させましたね。このレースではG1で活躍していなかった馬が急成長することが本当によくあります。アルマンゾルやソットサス、そして今日のヴァデニのように。ヴァデニは先に挙げた2頭よりも足取りの軽いタイプですが、同じような速さとスタミナを持っているので、すごく興味深いキャリアを送るんではないでしょうか」。
ルジェ調教師はこう続けた。「この日にピークに持って行けるように準備していたのですが、ギッシェ賞(G3 5月10日)を楽勝してしまいました。でもラグビーと同じようにコンバージョン(トライを決めた後のゴールキック)を決める必要があるのです」。
「彼は見事にそれをやってのけました。そして、今日はただ勝負をつけただけでなくそのまま後続馬を引き離したのですから、今後は本当の実力を見せてくれるでしょう。このレースで楽勝した馬を見ることはしばらくありませんでした。それに後方には優秀な馬もいました」。
パディパワー社とコーラル社は凱旋門賞でのヴァデニにオッズを9倍としており、本命のデザートクラウン(3倍)、英オークス(G1)2着馬エミリーアップジョンに次ぐ3番目としている。
ルジェ調教師はヴァデニ(父チャーチル)を凱旋門賞に向かわせる可能性を否定しなかったが、2100m前後の中距離路線のG1で古馬相手に勝利を挙げることを第一に考えていることを明らかにした。
「2100mを得意とする馬がいるとすれば、その距離で走らせ続けたいと考えます。まずはアルマンゾルの路線で行こうと思います。そうすれば、おそらくシーズン末には凱旋門賞も狙えるかもしれません」。
「現在のところ彼には2000mを走らせ続けようと思います。ドーヴィルのギヨームドルナノ賞(G2 2000m 8月15日)にはよほど重馬場でない限り出走させるつもりです。そしてうまくいけば、アルマンゾルとの最高の思い出となった愛チャンピオンS(G1 約2000m レパーズタウン)に挑戦させます」。
ルジェ調教師は2020年に凱旋門賞を勝つことになるソットサスも愛チャンピオンSに出走させている。
By Scott Burton
[Racing Post 2022年6月5日「'He completely took off' - Vadeni 8-1 for Arc after Prix du Jockey Club rout」]