6月12日(日)にゴーランパーク競馬場できわめて異例の対戦が繰り広げられるようだ。1つのレースに同じ馬名の2頭が出走登録されたのだ。
いずれもシエラネバダ(Sierra Nevada)という馬名の3歳牝馬(ジェシカ・ハリントン厩舎)と4歳牝馬(チャールズ・オブライエン厩舎)がEBF牝馬未勝利レース(午後4時50分発走)に出走予定である。そのため、競馬ファンやベッティングショップのスタッフは混乱することになるかもしれない。
最後にこのような対戦があったのは28年ほど前のヤーマス競馬場の条件戦においてである。アイルランド産のアヴァーティ(Averti)が米国産のアヴァーティを6着に抑えて5着に入った。
12日(日)に同一馬名対決が生じることになりそうなのは、一方が米国で血統登録され、他方が英国で血統登録されたことが原因だ。
ホースレーシングアイルランド(HRI)の競走担当理事であるジェイソン・モリス氏はこう語った。「英国とアイルランドは血統書を共有していますので、英国産とアイルランド産の馬が同じ馬名をつけられることはありません」。
「しかし、ほかの競馬管轄区や血統書に登録された馬は同じ馬名をつけられることがあり、その場合は馬名の後にアルファベットで記される馬の出生国により区別することができます」。
「このケースでは、4歳牝馬の馬名の後には英国産の(GB)、3歳牝馬の馬名の後には米国産の(USA)がつけられます」。
この対戦が実行されることなっても、レースカードに2頭を区別するような調整はされないと考えられている。アイルランド競馬監理委員会(IHRB)のルールやHRIの指令にはこのようなシナリオを除外するものはないのだ。
ジェシカ・ハリントン厩舎のシエラネバダはニアルコス家のフラックスマン社により生産・所有されている。今シーズンは2戦して3着と4着に健闘しており、12日(日)の1マイル1½ハロン(約1900m)のレースでは有力候補の一角と見られている。
チャールズ・オブライエン厩舎の同名の馬はスー・マグニア氏により所有されている。昨年10月にゴーランパークの15頭立てのレースでキャリア唯一の出走を果たしたが、スタートで出遅れたこともあり先頭から28馬身差の12着に終わった。今回のレースではかなりの巻き返しが必要となる。
ラドブロークス社のニコラ・マクギーディ氏は本紙(レーシングポスト紙)に対して、これら2頭の牝馬が対戦するのであれば混乱を避けるためにあらゆることを試みると語った。
「たしかに珍しいことです。ベッティングショップのスタッフにはこのことを周知しておきます。そうすれば、顧客はどちらの馬に賭けたいかをはっきり示すことができるでしょう。また混乱がないように発走時間が近づいてくればレース画面や音声でメッセージを伝えます」。
「さらに2頭とも出走することになれば、それに加えて馬名に出生国を追加すると確認しています」。
[訳注:2頭はいずれも12日(日)のEBF牝馬未勝利レース(15頭立て)に出走した。そしてジェシカ・ハリントン厩舎のシエラネバダ(USA)が優勝。チャールズ・オブライエン厩舎のシエラネバダ(GB)は8着に終わった。]
同じ馬名の2頭が対戦するのは初めてではない
同じ馬名の2頭が対戦した例としては、1896年大晦日の障害レース(キールパーク)で2頭のラムトン(Lambton)が決めたワンツーフィニッシュが有名だ。それ以前にも1835年ダービーに2頭のイブラヒム(Ibrahim)が出走したが、いずれも3着内に入れなかった。
1979年8月、ヘンリー・セシル厩舎のジニストレリ(Ginistrelli)はヤーマスの未勝利戦で優勝し、一方もう一頭のジニストレリは4着に終わった。このとき勝馬になったジニストレリはその翌年にリングフィールドダービートライアルを制している。
一方、一日に同じ馬名の2頭が別のレースで出走することはもっと多い。1996年9月には2頭のタート(Tart)がそれぞれヤーマスとサンダウンで勝利を挙げた。
同じ馬名だが出生国が異なる有名な例としては、2頭のガリレオ(Galileo)がいる。アイルランド産のガリレオは2001年ダービーを制して競馬界で最も偉大な種牡馬の1頭となった。一方、ポーランド産のガリレオ(トム・ジョージ厩舎)は2002年のロイヤル&サンアライアンス・ノーヴィス・ハードルを制した。
また、フランス産のビノキュラー(Binocular ニッキー・ヘンダーソン厩舎)が2010年チャンピオンハードル(G1)を制した翌年、英国産のビノキュラー(パット・フリン厩舎)がレーティング107でクロンメル競馬場のハンデキャップハードル競走を制したという例もある。
最近ではアイルランドにシャルジャ(Sharjah)という馬が2頭いた。スザンナ・リッチ氏が所有するフランス産のシャルジャ(ウィリー・マリンズ厩舎)はマシソンハードル(G1 12月29日)でG1・6勝目を挙げた。一方、アイルランド産のシャルジャ(アンディ・スラテリー厩舎)はオールウェザーのダンドーク競馬場を中心に活躍するベテランである。通算15勝のうち9勝をこの競馬場で挙げている。
By Mark Boylan