燃料費の高騰は今後数ヵ月間にわたって、調教師・騎手・馬主の行動に影響を与えそうだ。英国で燃料価格は1年前に比べて約50%上昇している。
障害競走のリーディングジョッキー、ブライアン・ヒューズ騎手はすでにエージェントに対して、1つの競馬場での1回の騎乗は"まったく採算が取れないので"予約しないようにとアドバイスしている。また馬輸送業者は、馬主が請求額の増加に直面すると注意喚起しており、このことは調教師が馬の進路を変更する事態を引き起こすかもしれない。
アフターコロナの経済開放やロシアのウクライナ侵攻の結果として、ガソリンや軽油の価格が昨年から急騰している。
RAC財団(王立自動車クラブ)によると、6月上旬の平均軽油価格は188.05ペンス(約310円)/リットルに達した。2021年6月1日の131.64ペンス(約217円)/リットルから43%上昇したことになる。
英国政府が3月に燃料税を5ペンス/リットルに引き下げたにもかかわらず、コストは上昇を続けている。この夏、平均軽油価格が2ポンド(約330円)/リットルに達する可能性があると予測されている。
馬輸送業者NRT(ニューマーケット)を経営するジェイソン・アンダーソン氏はこう語った。「燃料の価格は基本的に1年で50%上昇しており、馬運車1台あたり年間およそ1万ポンド(約165万円)のコストがかかってしまいます。20台の馬運車を走らせているので、追加コストは20万ポンド(約3,300万円)に上り、小さい会社にとっては莫大な額です」。
「このようなコストを転嫁したくはないのですが、そうせざるを得ない状況になりつつあります。ただ、すでにコストが高くて賞金がご覧のような状況であるこのスポーツにとって、それは難しいことなのです」。
「馬をレースに出走させるのにはお金がかかります。最終的にコストを支払うのは馬主であることも理解しています。シェアリングサービスを提供するなどしてコストをできるだけ削減する方法を見つけようとしていますが、それがいつでも可能というわけではありません。コストを吸収しようと努力していますが、ずっと継続できるものではありません」。
BBA運送(BBA Shipping)のケヴィン・ニーダム社長は、輸送業者が大型の馬運車で1マイル輸送するにあたり10ペンス(約17円)のコストアップに直面していると推測する。こうした事実は、とりわけ格下レースについて、長距離の輸送をあきらめるよう馬主や調教師を説得するには十分なものだろう。
ニーダム社長はこう語った。「これが軽油価格の一時的な急上昇でまた下がることを期待していますが、そうは思えないですね。昔から価格は一方通行なのです」。
「誰もがすべてのコストが上がっていることに気づいていて、人々は理解しています。しかしレーティングの低いハンデ戦常連馬を抱えているような人は、ニューマーケットからニューキャッスルまで輸送するのを考え直すでしょうね」。
昨シーズン、2度目のリーディングタイトルを獲得したヒューズ騎手は燃料費の高騰を"心配している"と語った。また、騎手たちは今年騎乗手当が12%増加したものの追加的な出費を補填するのに苦労していると述べた。
ヒューズ騎手はノヴィベット(ベッティングサイト)のブログでこう語っている。「燃料費の高騰は騎手の移動に影響を及ぼすと強く感じています。もし1回だけの騎乗のために移動するとしたらひどく高くついてしまいますね。だから、まだ駆け出しの騎手は不安だと思います」。
「エージェントに対してたった1回の騎乗ならば引き受けないように話しました。まったく採算が取れないからです。すべてのコストが上がっているので心配ですね」。
「騎乗手当は少し上がりましたが、一般的なインフレにあわせただけです。今度は燃料費が天井知らずに上がっているので、カバーしきれないのです」。
By Peter Scargill
(1ポンド=約165円)