タタソールズ社10月1歳セール・ブック1は10月6日に終了した。この日はさらに5頭が100万ギニー以上で購買され、最高価格馬は200万ギニー(約3億3,600万円)で購買された。前例のない3日間(10月4日~6日)の取引は、すべての主要指標で過去の記録をあっさりと打ち破った。
3日間の総売上額は驚異的な1億2,667万1,000ギニー(約212億8,073万円)となった。これは前年比47%増であるだけでなく、2018年に樹立されたこれまでの最高総売上額1億650万3,000ギニー(約178億9,250万円)を19%も上回るものだ。
平均価格も前年比30%増の29万8,752ギニー(約5,019万円)で新記録となり、中間価格は前年比25%増の20万ギニー(約3,200万円)で2018年に記録された16万7,500ギニー(約2,814万円)を19%上回った。売却率は87%で、489頭が上場され424頭が購買された。
3日目の最高価格馬はリチャード・ナイト氏が匿名のクライアントのために200 万ギニー(約3億3,600万円)で落札したフランケルの牡駒である。この牡駒を上場したウォーターシップダウンスタッドは、280万ギニー(約4億7,040万円)で落札された前日の最高価格馬の上場者でもある。
この将来有望なフランケルの牡駒はビョルン・ニールセン氏により生産された。母は現役時代に4勝を挙げたボールドラス(父シーザスターズ)である。ボールドラスにとって初仔であり唯一の出走馬、牝馬アムニアリックス(父スペイツタウン)はリステッド競走で3着に入っている。
ナイト氏はこのセリで二度目の7桁(100万ギニー以上)の売買契約書への署名を行ったあと、「見るからにフランケルの牡駒ですね。昨日フランケルの牝駒を落札しようとしたのですが競り負けました。フランケル産駒はすごく人気があって買うのが難しいので、手に入れるためにはかなりの額を支払わなければならないことは十分承知していました。彼は躍動的な、質の高い牡駒で、とても落ち着いていて、念入りに検査された競走向きの馬です」と語った。
「母馬はすでにレーティング100の仔を送り出しており、この牡駒は素晴らしいファミリー(牝系)の出身です。愛らしい牡駒であり、彼を手に入れるためにゴドルフィンと競り合わなければなりませんでした。決して簡単ではありませんでしたね。予算ぎりぎりだったものの、彼を獲得するために必要な金額だと考えていました」。
ボールドラスの母マイブランチはリステッド競走を2勝し、チェヴァリーパークS(G1)では惜しくもブルーダスターの2着に敗れた。繁殖牝馬としては、ヘイドックスプリントカップ(G1)優勝牝馬タントローズなど勝馬8頭を送り出した。マイブランチのもう1頭の娘、ロージーズポジーはG1馬のドバウィハイツとメイクビリーヴ(ミシュリフの父)の母である。
ブック1の2日目には144頭が購買され総売上額が4,954万5,000ギニー(約83億2,356万円)に上り、欧州のセリ史上最高の総売上額を記録した日となった。3日目も序盤から立て続けに活発な取引が行われ同様の形で始まった。
ナイト氏は活況ぶりを振り返りこう語った。「セリ名簿には、今年見てきた1歳セールの中で最高の上場馬が揃っていました。これまでの1歳セールはとても好調であったうえに、ここへ来て最高の馬が上場されていたのです。だから、これほど素晴らしいセールになったのは驚くに値しません」。
「最高級のサラブレッドは、現実の世界から離れた夢のような世界にいるように見えるのが常ですが、実際にいつもそうなのです。人々が英国、欧州、世界中のレースで出走するような馬を欲しがっているのは、生産界としてとても幸運なことだと思います」。
ナイト氏は3日間で1歳馬16頭を1,045万5,000ギニー(約16億7,280万円)で購買し、2番目の高額購買者となった。フランケルがトップサイアーとなりセリは終了した。フランケル産駒は25頭が購買され、売上額の合計が1,874万5,000ギニー(約31億4,916万円)に上ったのだ。種付料17万5,000ポンド(約2,800万円)で生産されたこれらの産駒の平均価格は74万9,800ギニー(約1億2,597万円)だった。
クールモアもフランケルフィーバーに乗る
そのわずか2つ前にリングに登場したフランケル牡駒を、クールモアのM・V・マグニア氏とピーター・ブラント氏が190万ギニー(約3億1,920万円)で落札した。モハメド殿下とともに立っていたゴドルフィンの購買担当者アンソニー・ストラウド氏に競り勝ったのだ。このフランケル牡駒はルカ&サラ・クマーニ夫妻のフィトックススタッドにより上場された。母はブルーワルツである。
マグニア氏はブラント氏のホワイトバーチファームとともに、3日間で13頭を合計1,021万5,000ギニー(約17億1,612万円)で購買した。その65%はフランケル産駒4頭に支出しており、中でもブルームの半弟を手に入れるために240万ギニー(約4億320万円)を支払った。
ルカ・クマーニ元調教師はこう語った。「とてもエキサイティングなことです。生産についてはまだ見習いですから。今年で3年目ですが、昨日は1頭が160万ギニー(約2億6,880万円 JSカンパニーと矢作芳人調教師が購買したドバウィ牡駒)、今日は牡駒が190万ギニーで購買されました。素晴らしい1週間でした。とても活況でした。これからもこの状態が続きますように」。
「この環境にいると、とてもワクワクします。大好きです。この牡駒は50万ギニーか80万ギニーで購買されるかと思っていましたが、それ以上だとは想像もしていませんでした」。
この牡駒はブルーボートの全弟である。ブルーボートは2020年のブック1でジャドモントファームにより45万ギニー(約7,560万円)で落札され、後に勝馬となった。母ブルーワルツ(父ピヴォタル)は、G3勝馬ファンタジアやギブサンクスS(G3)優勝牝馬ピンクシンフォニーなど勝馬4頭の半姉妹である。なおピンクシンフォニーはG1馬ハイランドチーフ(父グレンイーグルス)の母でもある。
クマーニ夫妻はホワイトバーチファームと一緒に、優秀な自家生産馬アウトフロムアンダー(父ドバウィ)を出走させている。ルカ・クマーニ氏はその関係が数十年前に遡ると説明する。「ピーターは長年の友人で、80年代から90年代前半にかけて彼の所有馬を管理したことがあるのです」。
「実際、彼のためにサンダーガルチの母ラインオブサンダーや、ローゼイトターン(Roseate Tern)という優秀な牝馬を手掛けたこともあります。だから非常に長いあいだお互いを知っているのです。クールモアのM・V・マグニア氏とポール・シャナハン氏にはとても感謝しています。それに、素晴らしい仕事をしてくれたスタッフに特にお礼を言いたいです。彼らは本当に卓越しているのです」。
フィトックススタッドは3日間で1歳馬11頭を合計601万ギニー(約10億968万円)で販売した。平均価格は54万6,364ギニー(約9,179万円)だった。
By James Thomas
(1ポンド=約160円)