南カリフォルニアが馬のmRNA研究に参加
血液検体中のメッセンジャーRNA(mRNA)マーカーの分析により競走馬に潜む負傷のリスクを特定および回避することを目的とした革新的研究に、南カリフォルニアが参加することになった。この研究プロジェクトを実施するのは、ケンタッキー大学グラック馬研究センター(University of Kentucky's Gluck Equine Research Center)である。
この研究はmRNA技術を信頼性のある非侵襲的な診断ツールに発展させて、競走馬がより幸せで長生きできるようにする新たな方法をもたらすことで、馬主や調教師を支援することを目標としている。それゆえ研究への参加は、馬主と調教師がこの重要な目標に貢献する契機となる。
全炭酸ガス検査の際にこのプロジェクトのための追加的な血液検体を採取する。それらの検体はその後、致命傷を負うリスクのある馬に固有のバイオマーカーを特定するためにこれまで蓄積されてきたデータを検証するために使用される。カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)の最高獣医責任者でありサンタアニタパーク競馬場で活動するティム・グランデ(Tim Grande)博士がこの研究を監督する。検体採取は2月中旬に開始される予定。
馬に針が刺されているあいだに短時間(5秒)で検体を採取するため、この研究への参加に伴う調教活動への支障や馬へのリスクを最小限に抑えられる。
By Thoroughbred Owners of California Press Release
ケンタッキー州馬薬物調査委員会がmRNA研究への追加出資を承認
ケンタッキー州馬薬物調査委員会(KEDRC)は2月4日、ケンタッキー大学グラック馬研究センターのスタッフサイエンティストであり獣医師であるアレン・ペイジ博士が主導するメッセンジャーRNA(mRNA)研究の第3段階(最終段階)に、4万ドル(約460万円)の追加資金を提供する動議を承認した。
KEDRCはケンタッキー州競馬委員会(KHRC)の諮問委員会であり、KHRC全体に対して勧告を行う。KHRCは定期的にKEDRCの勧告を可決している。
今年で4年目となるこの研究は、血液検体のバイオマーカーを特定して競走馬が致命傷を負う危険性があることを示す分子レベルでの警告を見付け出そうとしている。ペイジ博士がKEDRCに説明したところによれば、プロジェクトの第1~2段階は大成功を収め、バイオマーカーが3つ見つかり、最終段階ではさらに多くのバイオマーカーの特定が期待されるという。
ペイジ氏はKEDRCのメンバーに3つのバイオマーカーが何であるかを明らかにすることを控えたが、まだ論文誌にデータを発表していないもののすべて"興味深い"マーカーだと述べた。
プロジェクトの第3段階は南カリフォルニアで行われ、ホースマン・競馬場・関係団体・カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)が推定1万5,000検体の調査への参加に合意している。それらの検体は全炭酸ガス検査の際に採取される。
ペイジ氏とKHRCの馬医療担当理事であるブルース・ハワード博士はKEDRCに対して、ケンタッキーではなくカリフォルニアでこの調査を行う理由の1つは検体採取の作業上の問題であると説明した。ケンタッキーの馬からラシックス投与時に検体を採取しようとすると、2歳馬とステークス出走馬は除外されるでしょうと彼らは述べた。2歳戦とステークス競走はラシックスフリーで施行されているからだ。
もう1つの理由は、1年を通しさまざまな時期に他州での出走のために輸送されるケンタッキーの馬よりも、複数回出走する傾向が高いカリフォルニアの馬の方がフォローアップ検査をしやすいと、ペイジ氏は述べた。
ペイジ氏はKEDRCに対して、プロジェクトの費用が増大していると伝えた。同氏によると、キーンランド協会、ストロナックグループ、NYRA(ニューヨーク競馬委員会)はこのプロジェクトへの資金提供を口頭で約束しているという。
KEDRCのメンバーは、ケンタッキー州は全米の馬に恩恵を与える研究の大部分を資金提供していると指摘し、ペイジ氏とハワード氏に対してカリフォルニア州競馬委員会(CHRB)に資金援助の分担を働きかけるように要請した。
その会合には参加せず電話で報告を受けたCHRBのスコット・チェイニー専務理事はその依頼に驚きを示した。彼の知るところでは、CHRBは統括機関の役割において研究に直接的に資金提供することはないという。
KEDRCがこのプロジェクトに4万ドル(約460万円)の資金提供を行う動議を承認する前に、ペイジ氏は予測される諸々の必要額に対して約9万ドル(約1,035万円)が不足していることを発表していた。
ペイジ氏との質疑応答の前半で、競馬場の獣医師であるマーク・チェイニー博士は、「研究が終了したのち、mRNAについての知見はどのように受け入れられるのでしょうか?」と質問した。同時に、馬主や調教師は自身の馬が検査でハイリスクと判定されたらどう反応するだろうかと思いをめぐらせ、「調教師にその馬を休養させしばらく出走させないことを納得させるために、どのような手順でこの研究を実行できるとお考えですか?」とペイジ氏に尋ねた。
ペイジ氏はそれに対する明確な回答を持ち合わせていないことを認めながらこう語った。「チェイニー博士、それは良い質問だと思います。内部で何度も話し合ってきたことです。研究者としての私の役割と責任は、競馬産業に対してサポートできることを行い、彼らが疑問を解決してニーズに対応していくのを助けることだと感じています。そして、何が最適な実施方法なのかについて考えるのは彼らに委ねるのが良いでしょう。」。
By Byron King
(1ドル=約115円)
[bloodhorse.com 2022年1月29日「SoCal Horsemen to Participate in Equine mRNA Study」、2月4日「Kentucky EDRC Approves Additional Funds to mRNA Study」]