プラクティカルムーブは総賞金75万1,500ドル(約1億145万円)のサンタアニタダービー(G1 4月8日)において、最後の勇敢な1完歩で無限の可能性を秘めた異次元の才能を披露した。地元のライバルであるスキナーがこれまでで最高のレースをし、日本から遠征馬マンダリンヒーローが米国三冠の有力馬と肩を並べていることを証明する中、プラクティカルムーブはハラハラする勝利を挙げたのだ。
ピエール-ジャン・アメストイJr.氏はレスリー夫人とロジャー・ビーズリー氏とともにプラクティカルムーブを所有しており、「すごくスリリングでした。残り100mを切ってから他馬を撃退し、自らがどれほど勇敢であるかを見せつけたのです」と語った。
カリフォルニア州で行われるケンタッキーダービー(G1)の重要なプレップレース、サンタアニタダービー(約1800m)に単勝2倍の1番人気で臨んだプラクティカルムーブは、ラモン・ヴァスケス騎手を背に発走後7番手につけたが、伏兵のワンインヴァーミリアンが一気に先頭に立ったときにすぐに内ラチ沿いを上がっていき4番手につけた。
ヘクター・ベリオス騎手が鞍上を務めたワンインヴァーミリアンは最初の6ハロン(約1200m)でペースを主導し、最初の2ハロンを22秒30、4ハロンを46秒30、6ハロンを1分11秒25で通過した。そのときまでにプラクティカルムーブが内ラチに沿って迫ってきており、その差は½馬身に縮まっていた。
ヴァスケス騎手は「少し早めに動いて行ったのです。なぜならベリオスが脇の下からこっちを覗き見ているのが分かったからです。彼が私を内側にやや押し込めようとしているのが分かっていたので、馬を外に持ち出してポジションを取り直し、少しリラックスさせたのです」と述べた。
2つ目のターンでプラクティカルムーブがワンインヴァーミリアンに合流していこうとしているとき、スキナーは4頭の外側を通り大胆に動きだしていた。この馬は発走直後に両側からぶつかれていた。
スキナーと接触した馬の1頭は、コースの内側に入り込もうとしたマンダリンヒーローである。このアクシデントにどちらの牡馬もひるむことはなく、2頭は最後の直線でのプラクティカルムーブとの壮絶なバトルに備えてコーナーを回った。
プラクティカルムーブは残り500mで先頭に立ち、最後の直線の真ん中では1馬身リードしていた。しかしマンダリンヒーローとスキナーが迫ってきて、いずれもこの1番人気馬がそのまま疾走しきるのを阻止しようとしていた。プラクティカルムーブが内ラチ沿いを進み、スキナーが外側の位置を取り、マンダリンヒーローがそのあいだを走った。3頭はいっせいに決勝線を目指して急進していった。
最後の数完歩でプラクティカルムーブとマンダリンヒーローがスキナーをわずかに引き離し、決勝写真でプラクティカルムーブがマンダリンヒーローに鼻差で勝利したことが判った。スキナーは½馬身うしろの3着で、プラクティカルムーブの勝ち時計は1分48秒69だった。単勝の払戻金は2ドル(約270円)に対して4ドル(約540円)だった。
ティム・ヤクティーン調教師は元々プラクティカルムーブを手掛けており、今回4着となったボブ・バファート厩舎からの転厩馬ナショナルトレジャーも管理していた。ヤクティーン調教師は2022年サンタアニタダービーもテイバで制していて、この馬も元バファート厩舎所属馬だった。
「このレースを連勝するなんて、とても素晴らしい気分です。このような快感を得ることができるから、ゲームに参加しているのです」とヤクティーン調教師は語った。
プラクティカルムーブはこのレースを勝ち、"ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー(対象レースの上位馬にポイントを与え、フルゲート20頭のケンタッキーダービーへの優先出走権を付与するシリーズ)"の100ポイントを獲得した。またマンダリンヒーロー、スキナー、ナショナルトレジャー、ワンインヴァーミリアンにはそれぞれ「40-30-20-10」のポイントが付与された。日本馬として初めてサンタアニタダービーに参戦したマンダリンヒーローはこれまで大井競馬場で5戦4勝(2着1回)の成績を挙げていた。
マンダリンヒーローを手掛ける藤田輝信調教師は「ケンタッキーダービーに行きます!」と言ったが、現在の "ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー"の得点表に基づくと、マンダリンヒーローが出走権を獲得するためには今後4週のあいだに米国で転戦することが必要だろう。藤田調教師は「彼のことをとても誇りに思います。序盤のペースに対応できないのではないかと思いましたが、うまく捌きましたね。最後の直線ではいつもどおりに素晴らしい末脚を見せてくれると信じていました。すると本当にやってのけてくれたのです」と語った。
サンタアニタダービーは当日の朝にゴーロケットライド(Geaux Rocket Ride)が出走取消となり、メインキャストを失うことになった。リチャード・マンデラ調教師によると、午前9時ごろにゴーロケットライドは103.2℉(39.6℃)の高熱を出したという。馬の正常な体温は99~101℉(37.2~38.3℃)と考えられている。
ゴーロケットライド(父キャンディライド)はわずか2戦目となるサンフェリペS (G2 サンタアニタ)でプラクティカルムーブの2着に入った。その前には1月29日の未勝利戦(約1200m サンタアニタ)で5¾馬身差のデビュー勝ちを決めていた。
ただキャリアの浅いゴーロケットライドは "ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー"で20ポイントしか獲得していないため、関係者がダービー出走を望んだとしても、今回の熱発ゆえにダービーの舞台に立つことはないだろう。
プラクティカルムーブの通算成績は7戦4勝であり、今回の勝利で重賞3連勝を果たした。ロスアラミトスフューチュリティ(G2)を制して2歳シーズンを締めくくり、2023年の初戦となるサンフェリペSを勝利で飾った。最近の3戦はすべて内側から追い込んで制している。
アメストイ夫妻は、クォーターホースのチャンピオンであるファーストムーンフラッシュ(First Moonflash)を所有するなど馬とのつながりが深い。現在住んでいるニューメキシコ州でもサラブレッドやクォーターホースの競走馬を所有しており、一時期はケンタッキー州で牧場を所有していたこともあった。そのため、所有馬がケンタッキーダービーの最有力馬の1頭とされているのは格別なことなのである。
ピエール-ジャン・アメストイJr.氏はこう語った。「1週間早くケンタッキー入りして、あらゆることを吸収するつもりです。古い友人に会って、おそらく以前所有していた牧場にも行くでしょう。この馬の父、プラクティカルジョークにも会いに行きますし、フライトラインの仔を身ごもっている牝馬を所有しているのでフライトラインにも会いに行くつもりです」。
アメストイ夫妻は、2022年OBSスプリングセール(2歳現役)でプラクティカルムーブを23万ドル(約3,105万円)で購買した。プラクティカルジョークを手掛けたチャド・ブラウン調教師がヘッドオブプレーンズパートナーズ社とともに、ケンタッキー州でプラクティカルムーブ(母アスクノーティー、母父アフリートアレックス)を生産した。2021年キーンランド9月1歳セールで9万ドル(約1,215万円)の値がついたが最低指定価格に届かず、その後アイザマンエクワイン社(Eisaman Equine)によりOBSに上場された。
By Tracy Gantz
(1ドル=約135円)
[bloodhorse.com 2023年4月8日「Practical Move Edges Mandarin Hero in SA Derby」]