ダーレーのセリ担当部長であるアンディ・マキヴ(Andy Makiv)氏は、アナモーをこの20年間で最もワクワクする豪州の種牡馬だと考えている。競馬&生産帝国ダーレーが2023年の2つの州(ヴィクトリア州&NSW州)の種牡馬群の種付料を発表したさいに、この力強い宣言は飛び出した。
最優秀4歳馬に選ばれたアナモーはまだレースキャリアを終えておらず、6月のロイヤルアスコット開催がラストランとなるようだ。初年度種付料は税込み12万1,000豪ドル(約1,089万円)の予定であり、ダーレーの種牡馬18頭の中で来シーズンの種付料が10万豪ドル以上となる2頭のうちの1頭となる。
アナモーはこの種付料により豪州産の種牡馬として史上最も高額な初年度種付料を誇り、自ら高みに昇ることになる。しかし、それに匹敵するような独自の競走成績も収めている。2歳から4歳までのあいだに競走距離1400m~2000mでG1・9勝を達成しているのだ。
マキヴ氏は、ダーレーのケルヴィンサイドスタッド(NSW州ハンターバレー)に供用予定のアナモーに畏敬の念を抱いている。そして、3歳と4歳のときの偉業が彼を傑出した存在に引き上げたが2歳シーズンも記憶に残るものだったと主張し、本紙(ANZブラッドストックニュース)に対してこう語った。
「私にとっては、この二十数年で最もワクワクする種牡馬ですね。ダーレーの種牡馬群の中ではもちろんのこと、おそらく豪州全体においてもそうでしょう。なにしろG1を9勝しているのですから。今世紀において彼に匹敵するのは、G1・10勝のソーユーシンクとG1・11勝のロンロだけです。しかし、いずれも"妥当な"2歳馬だったとは言えないのです」。
「ここで話しているのは、クリスマス前にステークス勝ちを決めたうえでG1優勝を達成した2歳馬のことです。彼は驚異的な競走馬であり凄い才能の持ち主です」。
「マーソンクーパーS(L)やトッドマンS(G2)で挙げた勝利が最高のものだったと今でも思っています。ゴールデンスリッパー(G1)では大外枠を引いてしまったのが運の尽きでしたね。もう少し内の枠だったら、おそらく勝っていたでしょう。でもそうすると、4歳シーズンでこれほど多く彼を見ることはなかったかもしれません」。
「2歳シーズンや3歳シーズン初めの1000m~1200mでの勝利は、彼がいかに驚異的な2歳馬であったかを物語っています。その点で、同じような勝利成績を引っ提げて供用される多くの種牡馬と彼は一線を画していると思いますね」。
アナモーは2歳時にイングリスサイアーズ(G1)、3歳時にコーフィールドギニー(G1)とローズヒルギニー(G1)を制した。そして4歳時にはコックスプレート(G1)で優勝するなどG1・6勝を達成した。
ベテランのエクシードアンドエクセルは13万2,000豪ドル(約1,188万円)もの種付料を誇りダーレーの種牡馬群のトップに君臨している。今シーズンも2歳産駒の中からステークス勝馬が9頭出て安定した成績を残している。この馬の長年のスタッドメイトであったロンロが今年初めに種牡馬を引退した。
マキヴ氏はこう続けた。「アナモーの種付料については時間をかけてじっくりと考えましたが、トップに君臨するのはリーディングサイアーであるエクシードアンドエクセルがふさわしいと思いました。エクシードは今年も素晴らしい成績を収め、レースやセリなどあちこちに2歳産駒を送り込む驚異的な種牡馬なのです。信じられないほど優秀な種牡馬で抜きん出ていますね」。
「生産者に使ってもらうためには、アナモーの種付料は10万豪ドル(約900万円)より一段階上でなければならないと考えました。なぜなら、それより安いと申し込みが殺到してしまいアクセスに支障をきたす可能性があったからです」。
「この馬の種付料は彼に見合った価格で、市場が尊重するようなものに設定しました」。
アナモーの種牡馬入りに伴い、彼の父ストリートボスはノースウッドパーク(ヴィクトリア州)に戻り、わずかに減額となる種付料6万6,000豪ドル(約594万円)で供用される。ストリートボスは2年間NSW州ハンターバレーにいた。
マキヴ氏はこう語った。「ヴィクトリア州では今年、驚異的な馬であるパウレレ(Paulele)が種牡馬入りすることになっています。しかし実績のある馬、アナモーの父であるストリートボスをヴィクトリア州の種牡馬群の筆頭にすることができれば良いですね。ちょうど彼の産駒、ピンストライプド(Pinstriped)とシーダンシズ(She Dances)がサンダウンのVOBISデーで勝利を収めました」。
「ストリートボスはG2勝馬ペリクルズ(Pericles)も送り出してくれました。牝馬を送りこみたくなるような傑出した種牡馬です。ヴィクトリア州の人々はこの馬のことをよく知っているので、彼がふたたび "故郷 "に戻ってくることは、牧場とヴィクトリア州の生産者にとって大変喜ばしいことです」。
シャトル種牡馬のハリーエンジェルの種付料は1万6,500豪ドル(約149万円)から3万3,000豪ドル(約297万円)にアップした。その背景には、2歳となった南半球での初年度産駒が数々の勝利を収めたことがある。
ハリーエンジェル産駒であるアーカンソーキッド(Arkansaw Kid)は今シーズン、イングリスバナーで優勝しブルーダイアモンドS(G1)で3着に入っている。また4月8日(土)にトムキトゥン(Tom Kitten)がファーンヒルマイルH(L)を最後方から追い込んで制し、4月15日(土)にストレタンエンジェル(Stretan Angel)がドケットヴィルS(L)で優勝したことで、ハリーエンジェルが豪州で送り出したステークス勝馬は3頭になった。
アスターンはコーフィールドギニー優勝馬ゴールデンマイル(Golden Mile)とアローフィールドスタッドS優勝馬アフトキャビン(Aft Cabin)を送り出した。その好調ぶりをうけ、アスターンの種付料は倍増して2万2,000豪ドル(約198万円)となった。
マキヴ氏はこう述べた。「実績のある種牡馬グループであるアスターン・ブレイズンボー・ハリーエンジェルにはかなりの価値があると思います。彼らの産駒は豪州各地のステークス競走で上位入賞を果たしています」。
「ハリーエンジェルは豪州での初年度産駒からステークス勝馬3頭を送り出し、素晴らしいスタートを切りました。ブレイズンもなかなか順調であり、アスターンは3歳産駒の活躍により良好なシーズンを過ごしています。それにケルマデックは素晴らしい産駒を出しました。良い牝馬に恵まれるとG1勝利を決める産駒も出ています」。
来シーズンは以下のダーレーの種牡馬にとって重要なものとなるだろう。
マキヴ氏は、「2021年に豪州で供用し始めた3頭の種牡馬の初年度産駒は2歳に達し、かなりエキサイティングな時期を迎えることになります。彼らの 1歳となった産駒は優良牝馬を母とし、よく売れています。本当に模範的な若馬であり、ぴったりの厩舎に預けられています。だから今後1年間はこれら3頭の種牡馬の産駒をフォローすることで楽しいものになるでしょう」と語った。
なおダーレーは4月中旬、ウィンターボトムS(G1)優勝馬パウレレがクイーンズランド州のウィンターカーニバル終了後にノースウッドパーク(ヴィクトリア州)において1万6,500豪ドル(約149万円)で供用されると発表した。
By Tom Rowe ANZ Bloodstock News
(1豪ドル=約90円)
[Racing Post 2023年4月17日「A record first-season fee of A$121,000 set for Godolphin's nine-time Group 1 winner Anamoe」]