海外競馬ニュース 2023年04月27日 - No.16 - 1
ケンタッキーダービー、どのゲート番号が有利か?(アメリカ)[その他]

 ケンタッキーダービー(G1)は "スポーツで最もエキサイティングな2分間"として当然知られている。チャーチルダウンズ競馬場のゲートが開くと、何が起こるか分からない(そしてしばしば何かが起こる)。3歳の出走馬20頭にとって生涯で最も重要な瞬間であり、スタートしてから発揮するパフォーマンスは運によって左右されることがある。しかしその運はいくらか、レース数日前に行われる"ゲート番号の抽選"の時点から働き出している。

 ダービーのゲート番号は5月1日(月)の抽選会でランダムに割り当てられる。しかしそのレースへの影響は決してたまたまといえるような話ではなさそうだ。

 ケンタッキーダービーは1930年以来、スターティングゲートを使用してきた。以前は14頭が収まるメインゲートとその外側に取り付けられる6頭収まる"補助ゲート"の2つを使ってきた。2020年に全20頭が収まる単一ゲートをチャーチルダウンズ競馬場が手に入れたことで状況は変化した。

 興味深いことに、2020年には大外の15番ゲートから発走したオーセンティックが優勝した。抽選では18番ゲートを引いていたが、取消あるいは除外となった馬が3頭いたために3つ内側に入ったのだ。

 常識的に考えれば、内ラチ沿いを走れば最短距離でコースを一周することになるので有利なのかもしれない。それは10頭以下のレースでは当てはまるだろう。しかしケンタッキーダービーの場合、20頭もの出走馬がゲートから飛び出て、勢いよく前進して最初のターンに差し掛かるまでに好位置を取りに行く。そのためコースの内側へと馬が圧縮され、ぶつかり合うことになる。つまりすでに内側にいる馬がその影響をもろに受けることになり、馬が委縮したり、ポジショニングに影響が及ぼされたりする可能性がある。

 通常、外側を走っている馬はあまりぶつかり合うことがない。しかし最初のターンに差し掛かる前にコースを横切らない場合、彼らはかなり外を回されることになる。ケンタッキーダービーの1¼マイル(約2000m)においてターンは40%を占める。馬と騎手に必要な横幅を4フィート(約1.2m)と想定すると、内ラチから1頭分離れるごとに、馬は25フィート(約7.6m)以上長い距離を走ることになる。いずれのターンにおいても内ラチから6頭分外にいる馬は内ラチ沿いを走る馬よりも150フィート(約45.7m)長い距離を走ることになり、競走距離はずっと長くなってしまう。十分内側でレースを進めて距離を節約することと、外を回って本当の勝負どころである直線で余裕をもって仕掛けて行くことのあいだのバランスを見つけることが肝要である。

 するとどの位置が理想的なのだろうか?従来の常識では、真ん中あたり(5番~15番)がベストとされてきた。しかし近年では、過去20年に出走頭数が増えて混み合うようになったこともあり、外枠のほうが勝ちやすいという傾向があるようだ。13番ゲートよりも外から発走した馬は過去23回のケンタッキーダービーで12勝している。しかし、2000年より前に行われた70回ではわずか10勝しかしていない。

 近年の優勝馬には、内側のゲートから発走してもどのみち優勝しただろう1番人気馬もいる(ナイキスト・アメリカンファラオ・ビッグブラウンなど)。しかし、そうでない馬もいる。単勝81倍のリッチストライクは間違いなくそちらの方に含まれる。彼はレース前日にダービー出走が決定して、20番ゲートから発走し、このゲートで優勝する2頭目の馬となった(2008年の1番人気馬ビッグブラウンに続く)。

 この外枠有利の傾向を裏付けるのが、内枠から発走した馬の勝利数である。1986年のファーディナンド以来、1番ゲート発走で優勝した馬はいない。それ以降、1番~3番ゲート発走で優勝した馬は、1998年に3番ゲートから発走したリアルクワイエットだけである。この馬はベルモントS(G1)でほんの鼻差で敗れて三冠達成を逃してしまうことになる。1987年より前には1番~3番ゲートから発走した58頭のうち19頭が優勝し勝率は10.9%だった。しかし1987年以降は、その勝率がわずか0.95%となっている(105頭中1頭が優勝)。

 全20頭が収まる単一ゲートが使われた年のデータの数が次第に多くなるにつれ、この統計データの観察は興味深いものとなると思われる。しかし今のところゲートが変更されてから、劇的な変化はない。

 さらに興味深い統計としては5番ゲートの勝率が10.8%を誇っていることである。2017年優勝馬オールウェイズドリーミングと2014年優勝馬カリフォルニアクロームがこのゲートから発走している。10番ゲートも比較的高い10.5%という勝率であり、3着内率は驚異的な29.1%に上っている。それには2022年に3着となったゼンダンが含まれる。なお、10番ゲートからの発走での直近のケンタッキーダービー優勝馬はジャコモである。ジャコモは直近の芦毛の優勝馬でもある。

 注目すべきは17番ゲート発走で優勝した馬がこれまでいないことであり、最後に5着以内に入ったのも2005年のことだった。2020年9月のケンタッキーダービーの大本命となったティズザローは抽選で17番ゲートを引いていた。しかし、数頭が出走取消となったために内側に移動し14番ゲートからの発走になったことで、枠順について歴史的に言われていることに基づけば、勝つチャンスは高まった。しかし14番ゲートの勝率も2.9%であり大した違いをもたらさなかった。このレースではオーセンティック(ティズザローの1つ外のゲートから発走)が早々と飛び出し、内ラチ沿いでゆっくりとして余裕のあるリードを保ち、ティズザローは外側の位置で追走し2着に甘んじることとなった。

 2021年ケンタッキーダービーはおよそ8ヵ月後に正式な着順が発表されることになったが、このレースも注目すべき統計を生み出すことになった。ダービー史上2度目の優勝馬の失格という事態を禁止薬物の陽性反応により招いたのだ。2021年の1位入線馬メディーナスピリットは2022年初めに優勝資格と賞金を剥奪され、ケンタッキー州競馬委員会(KHRC)の裁決委員は2位入線馬のマンダルーンを優勝馬として宣言した。メディーナスピリットとマンダルーンはそれぞれ8番ゲートと7番ゲートという隣り合ったゲートから発走していた。メディーナスピリットの失格をうけ、両ゲートの勝率はいずれも同じ8.7%(92戦8勝)となった(なお、エクイベース社のチャートは上訴が完了していないために約2年経った今も調整されていない)。

 以下がゲート番号別の優勝馬である。今年のゲート番号の抽選会は5月1日に行われ、そのあとに2023年のダービー出走馬をゲート番号順に並べることができるだろう。

ケンタッキーダービーのゲート番号別優勝馬
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By America's Best Racing staff

[bloodhorse.com 2023年4月25日「Kentucky Derby Post Positions by the Numbers」]