米国で競馬の固定オッズ賭事は華々しくはないものの着実に根づいていると言えるが、5月中旬にまた新たな一歩を踏み出した。
豪州のベットメーカーズ・テクノロジー社(Betmakers Technology Group)が、米国で初となる競馬の固定オッズ賭事の合法モバイルアプリ"モンマスベッツ(MonmouthBets)"を発表したのだ。
ニュージャージー州のゲーミング監督課の認可を受け、モンマスベッツは5月13日(土)のモンマスパーク競馬場のシーズン開幕日に間に合うように、州居住者からの賭事を受け付ける準備を整えていた。
ニュージャージー州は米国におけるスポーツ賭事合法化の立役者である。今回このアプリは、プロ・アマスポーツ保護法(Professional and Amateur Sports Protection Act)廃止からちょうど5年後に立ち上げられた。
2021年、ニュージャージー州では競馬のパリミュチュエル賭事の独占運営を終わらせる法案が可決された。その時点でベットメーカーズ社はニュージャージー州サラブレッドホースマン協会(NJTHA)およびモンマスパークを運営するダービーディベロップメント社と、競馬の固定オッズ賭事を提供・管理する10年間の独占契約を締結していた。
昨年5月、モンマス競馬場を訪れたファンは競馬場カウンターで固定オッズの馬券を購入できるようになり、それは段階を踏みながら展開されてきた。
オンライン固定オッズ賭事(monmouthbets.com)は昨年、この競馬場の最大の開催日である7月のハスケルS(G1)から立ち上げられる予定だったが、準備が整ったのは8月になってからだった。
ベットメーカーズ社のCEOジェイク・ハンソン氏は今回のアプリの提供開始についてこう語った。「昨年競馬場で固定オッズ賭事の提供を開始したことで基礎ができました。モンマスベッツのデジタルプラットフォームを通じて競馬ファンに固定オッズ賭事をお届けできることにワクワクしており光栄に思っています」。
「固定オッズ賭事はニュージャージー州などの地域の競馬賭事において健全なエコシステムを構築するのに役立ち、競馬産業全体に大きな利益をもたらす変革の可能性を秘めています」。
ベットメーカーズ社は、最近委託した調査で次のことが分かったと述べた。(1)米国の競馬ファンの83%が長い伝統のあるパリミュチュエル賭事システムと並行して固定オッズ賭事を選ぶのを望んでいるということ。(2)米国のスポーツ賭事客の3分の2が固定オッズが利用できるのであれば競馬賭事を行うだろうということ。
ダービーディベロップメント社のCEOデニス・ドラジン氏は、「この競馬固定オッズ賭事の革新的なアプリを通じて、現在のスポーツ賭事のようにファンがオンラインで簡単かつ手軽に賭けられるようになることにワクワクしています。このアプリが新規顧客を引き付け、成長を促進し、発売金を大幅に増やすことができると信じています」と語った。
米国では競馬固定オッズ賭事はまだ本格的に脚光を浴びているわけではない。ニュージャージー州のほかにはコロラド州が昨年18ヵ月間の試験運用を承認しただけである。
しかし、ニュージャージー州の馬券購入者は、タンパベイダウンズ・カンタベリーパーク・デラウェアパーク・ホーソン・エメラルドダウンズ・センチュリーマイルなどで施行されるレースを対象に固定オッズの馬券を購入できるようになり、今後も対象レースは増え続けると期待されている。
5月13日(土)のモンマスパークのシーズン初日では、10レース中9レースで固定オッズの配当がパリミュチュエルよりも高かった。しかしモンマスベッツを運営するチームは馬券購入者にもっと多くの選択肢を与えたいという考えをさらに強くしている。
ベットメーカーズ社の固定オッズ賭事担当部長であるダラス・ベイカー氏はこう語った。 「昨年、最終的な固定オッズの約70%がパリミュチュエル賭事のオッズを上回っていました。13日(土)はわずか半分でしたが、固定オッズ賭事は最終的なオッズだけが問題なのではありません。オッズの変動を読み、できるかぎり最高のオッズで賭けようとすることなのです」。
「パリミュチュエル賭事と固定オッズ賭事のどちらが魅力的な商品かということではありません。競馬のコアな顧客である馬券購入者に、賭事のエコシステム全体を向上させる拡張的なサービスを提供することなのです」。
By Bill Barber
(関連記事)海外競馬ニュース 2021年No.24「ニュージャージー州、競馬を対象とした固定オッズ賭事の提供を開始(アメリカ)」
[Racing Post 2023年5月15日「Launch of fixed-odds app for horseracing marks a first for the US」]