海外競馬ニュース 2023年01月19日 - No.2 - 1
2022年ワールドベストレースホースはフライトライン(国際)[開催・運営]

 フライトラインは通算6戦6勝を達成するスリリングな道のりにおいて、2022年に無敵の存在となり、1月17日(火)に即決でワールドベストレースホースの称号を授与された。

 IFHA(国際競馬統括機関連盟)の授賞式(ロンドンで開催)で、この賞はフライトラインの関係者に授与された。IFHAは世界各国のエリート競走馬の公式ランキングを作成している。

 この称号の授与はいくぶん形式的なものであったが、IFHAの国際ハンデキャッパー会議がフライトラインをフランケルと同格に評価したことは驚きをもたらした。フライトラインにつけられたレーティング140は、1995年に北米調教馬が世界ランキングに初登場してから最高のものである。パシフィッククラシック(G1)での眩いばかりの勝利のあとに、フライトラインにはレーティング139が暫定的に与えられていたが、12月に行われた各国ハンデキャッパーの会合では1ポンド引き上げられた。

 フライトラインを管理したジョン・サドラー調教師は、この馬を所有する馬主グループの代表者4人とともにロンドンを訪れた。フライトラインの生産者であるジェーン・ライアン氏が、テリー・フィンリー氏(ウエストポイント・サラブレッズ)、ビル・ファリッシュ氏(ウッドフォードレーシング)、ステファニー・フロニス氏(フロニスレーシング)とともに出席していた。彼らの受賞スピーチは短かかったが、とても饒舌なものだった。1月26日(木)のエクリプス賞の年度代表馬の表彰式(フロリダで開催)で、彼らはふたたび歓喜の表情を浮かべるに違いない。

 サドラー調教師は表彰台で、「ここロンドンで皆さんが素晴らしいおもてなしをしてくださいました」と述べた。そしてこの称号の世界的な重要性に思いをめぐらせながら、「フライトラインは薬物なしで走りました。だから、今回の受賞は国際的な競馬コミュニティーの発展によくマッチします」と付け加えた。

 フライトラインを生産したサマーウインドエクワインのオーナーであるライアン氏は、当歳の頃のフライトラインを思い起こした。彼は牧場で、米国三冠馬アメリカンファラオの半弟トリプルタップ(タピット)と一緒に過ごしていた。「もう1頭のトリプルタップのほうにかかりっきりになっていました。どの仔馬にもかいがいしく世話を焼くのですが、フライトラインがこれほど素晴らしい馬になるとは想像していませんでした。違うほうの馬に全力を注いでいましたね」とライアン氏は語った。

 フライトラインが厩舎にいるときには、2012年末に14戦14勝で引退したフランケルと同格に扱うようなことはしたくありませんでしたと、サドラー調教師は述べた。そして、「管理馬が走っているとき、みんな少し迷信深くなるものなのです。フランケルのレースを見て彼のことをとても畏れ多く思っていたのです。しかし、すべてが終わった今なら"私たちの馬は凄かったのだ"と素直に言えますね」と語った。

 1996年にシガーがレーティング136を獲得してから約30年後に、フライトラインはシガーから最高レーティングの米国調教馬の座を奪ったことになる。つまりこの2頭が競う"仮想のハンデ戦"では、フライトラインはシガーよりも4ポンド(約1.8kg)重い斤量を背負うのだ。近年高いレーティングを獲得したダート馬には、アメリカンファラオ(2015年: 134)、アロゲート(2016年&2017年:134)などがいる。

 同世代の馬に対してどれほど優位に立っているかについては、フライトラインは2022年の欧州の傑出した芝の競走馬バーイード(135)を5ポンド、豪州&NZの最強馬で世界最高レーティングの短距離馬ネイチャーストリップ(126)を14ポンド上回る。最終的にこの3頭が世界ランキングの1位〜3位を占めることになった(訳注:イクイノックスもレーティング126で3位に入っている)。

 米国馬同士の比較では、フライトラインはエピセンター(125)とライフイズグッド(125)を15ポンド上回った。これら2頭は、仏ダービー(G1 ジョッケクルブ賞)とエクリプスS(G1)の覇者ヴァデニとともに世界ランキング5位に立っている。こうして米国調教馬が上位7頭のうち3頭を占めることになった。

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 上位馬のレーティングにこれほど大きな差が生じた2022年の世界ランキングは実に珍しいもので、フライトラインの素晴らしさを際立たせている。過去19年のうち3年を除くすべての年では、バーイードがマークした135は首位に君臨できるレーティングだった。G1・6勝のバーイードの無敗記録は11戦目となる10月のクイーンエリザベス2世S(G1 アスコット)で途絶えてしまった。しかし2022年に欧州2位と評価されたヴァデニよりも10ポンド上回るレーティングを与えられたのだ。

 ワールドベストレースホースランキングはATPランキング(男子テニス世界ランキング)やワールドゴルフランキングと同様に、エリートの序列を決定するものである。しかしほかのスポーツのランキングと著しく異なるのは、各競走馬のキャリアベストのパフォーマンスを基にしてレーティングがつけられる点だ。

 一度レーティングをつけられると、以後その馬がどんなに成績をあげられなくても数値は変わらない。一方、テニスやゴルフのランキングは1年間の成績によって決定される。

 年間を通じて毎月更新されるIFHAの世界ランキングには、ワールドベストレースホースのほかに2部門がある。

 世界のトップ100 G1競走は、各G1競走の1着~4着馬のレーティングの平均値を出すことにより決定される。2022年は平均レーティング126.75を誇るBCクラシック(G1)が1位に輝いた。

 ブリーダーズカップ協会の会長兼CEOドリュー・フレミング氏は授賞式において、「米国および世界中で素晴らしいサラブレッド競走が行われた年にこの賞を受賞できて光栄です。同時に身の引き締まる思いがします」と述べた。

 そして2022年ワールドベストジョッキーにはニュージーランド出身で豪州を拠点とするジェームズ・マクドナルド騎手が輝いた。ポイント制のこのランキングでライアン・ムーア騎手とウィリアム・ビュイック騎手を大差で破りこの栄冠を手に入れたのだ。マクドナルド騎手には12月の香港国際競馬のガラディナーでこの賞が贈られた。

By Julian Muscat

[bloodhorse.com 2023年1月17日「Flightline, BC Classic Honored at World Racing Awards」]