引退したばかりのデイヴィ・ラッセル騎手(43歳)を呼び戻した主な要因は、障害シーズンの最重要ステージに豊富な経験を生かすことができることにあると、ゴードン・エリオット調教師は語った。
ラッセル騎手は1月11日(水)の夜、レースでの騎乗を再開するという電撃発表を行った。サーレス競馬場でその輝かしいキャリアに終止符を打ってから1ヵ月足らずのことだ。14日(土)にフェアリーハウス競馬場で2鞍に騎乗予定である。
この劇的なUターンは、ジャック・ケネディ騎手が8日(日)にネース競馬場で落馬して5度目の足の骨折に見舞われたことを受けてのことだ。ケネディ騎手が騎乗を再開するまでどれくらいかかるかはまだわからないが、エリオット調教師はチェルトナムフェスティバル(3月14日~17日)で厩舎の主戦ジョッキーを務めるのに間に合うことを強く望んでいる。そして彼が復帰した暁には即座に厩舎のナンバーワンに据えることになると強調した。
それでも、ラッセル騎手は"引退"をしばらく保留にしてカムバックすることになった。14日(土)にフェアリーハウス競馬場で施行される第1レースのハードル競走でジャジーマティに騎乗する。また同じカードのハンデキャップハードル(約4800m)ではボーディサットヴァ(Bodhisattva)に騎乗する予定だ(訳注:ラッセル騎手は14日に勝利を挙げられなかったが、15日にパンチェスタウンで復帰後初勝利を達成した)。
ケネディ騎手が不運にも負傷に見舞われたことをうけ、ジョーダン・ゲインフォード騎手やサム・ユーイング騎手、あるいは経験豊富なデニス・オリーガン騎手が昇進すると思われていた。しかしエリオット調教師はこの窮地で若い2人を投入するのは時期尚早だと考えていた。
エリオット調教師はラッセル騎手を呼び戻すという決断について本紙(レーシングポスト紙)にこう語った。「厩舎で預かっている馬やそのオーナーにとって適切だと思われることをしなければなりませんでした。今のところジョーダンとサムの若さを考えると、ジャックが離脱しているあいだにデイヴィに乗ってもらうのが正しい選択だと思うのです。しかし、それはジャックが不在のときだけであって、彼が戻ってくればまた厩舎のナンバーワンに返り咲くでしょう」。
また、ゲインフォード騎手やユーイング騎手に不信任投票を行ったわけでないことを力説し、2人にはいずれその時が訪れると述べた。
「11日(水)の朝に2人とじっくり話して、もしデイヴィが戻って来ないのであれば100%サポートすると言ったのです」。
「2人を信用していないわけではありません。心からの信頼を寄せており、2人がトップクラスの騎手になることを信じて疑いません。しかし2人にとって今シーズンは早すぎるのではないかと考えるのです。これからの数ヵ月間で2人が得られる経験はかけがえのないものであり、とても大切なものだと思います」。
「ジャックは長きにわたりデイヴィの2番手であり続けてきて、ついにデイヴィを追い越して主戦ジョッキーになりました。春の大きなフェスティバルにジャックが奮起して挑んでいき、ジョーダンとサムが彼に次ぐ控えとしてそれらのフェスティバルに参加することが最高のシナリオだと思っていたのです」。
「あいにくジャックは骨折してしまいましたが、2人にとっては少し早すぎるような気がするのです。来年の今ごろであったなら、かなり違っていたかもしれません」。
エリオット調教師はケネディ騎手の復帰がチェルトナムフェスティバルに間に合わなかった場合に危うい状況にならないように、早くに行動を起こさなければならないと感じたのである。
「今すぐに決断しなければなりませんでした。数週間ほったらかしにして、気がつけばチェルトナムフェスティバルが迫っていたというわけにはいかないのです。ジャックがチェルトナムに間に合うように戻ってくることを強く望んでいます。それについては13日(金)にもっとくわしいことが分かるでしょう(訳注:ケネディ騎手の担当医は13日、骨折の回復具合に満足しながらも復帰時期については明言しなかった)。しかし、シーズンで最も重要な時期にデイヴィは豊富な経験を生かしてくれます。それこそが彼の復帰を望んだ理由です」。
ダブリンレーシングフェスティバル(2月4日&5日 レパーズタウン)まであと3週間となり、ラッセル騎手はG1競走で有力馬に騎乗することになりそうだ。コンフレーティッドは愛ゴールドカップ(G1)の連覇を狙うかもしれないし、マイティポッター、ジェリーコロンブ、アメリカンマイク、フィルドール、アイリッシュポイントなどもこの華やかなフェスティバルに出走登録されている。
ラッセル騎手は12日(木)、スタースポーツの自身のブログでこう語っている。「エリオット厩舎のチームは結束が固いので、ゴードンが"みんな君を必要としている。戻ってきて数頭の騎乗を手伝ってくれないか?"と聞いてきたとき、答えは1つしかありませんでした。引退してからまだ数週間しか経っていないのですよ。ゴードンのところでたくさん乗ってきました。それに声明の中で冗談で言ったように、実際11日(水)にはここ数年で一番調教のために多く騎乗しました」。
「ジャックの落馬はタイミングが悪いですね。こういうことは決して良いことではありませんが、たとえば2~3ヵ月後に同じことが起こっていたら、決定を下さずにすんだでしょう。ゴードンのところには若くて才能のある乗り手がたくさんいて、彼らの時代は必ずやって来ます。ただ、数頭の優れた有力馬に乗るにはまだ少し早いのです。だからその点で手伝えることを嬉しく思っています」。
「多くの人がチェルトナムフェスティバルで乗るのか、グランドナショナル(エイントリー)で乗るのか聞いてきました。このカムバックはいつまで続くのでしょうか?言っておきたいのは、カムバックでもUターンでもないということです。ジャックの代役を務めるだけで、彼が騎乗を再開できるようになればまた身を引くことになります。チェルトナムの前かもしれませんし、後かもしれません。大切なのは、いつも支えてくれたチームを助けることです。だから戻ってくることにしたのです」。
ラッセル騎手はそのキャリアにおいてチェルトナムフェスティバルで25勝を挙げている。ウィリアムヒル社は今年さらにその記録を伸ばすことに2.5倍のオッズをつけている。また、ダブリンレーシングフェスティバルで勝利を挙げることに1.4倍のオッズをつけている。
ウィリアムヒル社のスポークスマン、リー・フェルプス氏はこう語った。「デイヴィ・ラッセル騎手はジャック・ケネディ騎手の負傷後、ふたたび有終の美を飾るために復帰します。私たちは彼が最高の状態で騎乗するのではないかと思っています」。
「この2度目のチャンスをうまく生かすだろうと想像しているのです。ケネディ騎手の回復のスピードにもよりますが、チェルトナムフェスティバルでラッセル騎手が有力馬に騎乗する可能性は大いにあると思います」。
By David Jennings
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[Racing Post 2023年1月12日「Gordon Elliott: asking Davy Russell back was the right thing to do」]