かつて富と権勢を誇ったシンガポール競馬は、2024年10月に衝撃的かつ唐突な結末を迎えることになった。シンガポール政府が6月5日(月)、競馬場の土地を再開発のために利用する計画を発表したのである。この計画はシンガポールにおける競馬を終了させることになる。
シンガポールターフクラブ(Singapore Turf Club: STC)が発表した声明にはこう記されている。「シンガポール政府は本日、競馬場のあるクランジの約120ヘクタールの土地が再開発のために2027年に政府に返還されると発表しました。STCは2027年3月までにここにある競馬施設を閉鎖します」。
「STCは2024年10月5日に、第100回グランドシンガポールゴールドカップをメインとする最後の競馬開催を実施します」。
1842年のSTC創設以来、シンガポールでは180年以上にわたって3ヵ所で競馬が開催されてきた。しかし、近年は急激な資産の減少に苦しんできた。
入場者の減少や発売金の落ち込みがコロナ禍以降にさらに深刻化しており、シンガポールの賞金は大幅に削減されている。また、2014年から統計が最後に発表された2018年までの4年間で馬の全頭数は4分の1に減少した。
さらにシンガポールでは国際認定されているブラックタイプ競走が激減している。2020年にはそのような競走が24レースあったが、現在の競馬シーズンにおいては8レースしか実施されず、その筆頭は5月に施行されたクランジマイル(G3)である。
土地不足のシンガポールで住宅再開発やレジャーや娯楽を目的とした開発に政府が乗り出すということである。
STCのニアム・チャン・メン(Niam Chiang Meng)会長はこう述べている。「私たちはSTCを閉鎖するという政府の決定に悲しみを感じています。同時に、シンガポールが住宅およびレジャーや娯楽などの潜在的な用途のために土地を必要としていることも理解しています」。
「私たちは最後の競馬開催まで、STCが通常どおり営業できるよう最善を尽くします。同時に国内の競馬がスムーズに撤退できるように関係者と協力し、2027年3月までに土地を政府に引き渡せるように必要な準備を進めていきます」。
2000年からシンガポールのレースが開催されてきたクランジにある競馬場は、3万人収容のグランドスタンドのほか、レースや調教のための広大な施設を備えている。
STCの理事長兼CEOであるアイリーン・M・K・リム(Irene MK Lim)氏は、STCは"段階的なアプローチ"で事業を停止するとし、こう述べた。
「STCは2世紀近くにわたって競馬の本拠地であったことをきわめて誇りに思います。この国の歴史の一部が威厳あるかたちで終結するように専念します。職員・騎手・馬主・調教師・競馬コミュニティなどすべての関係者と、私たちの土地を優美に飾った数々の馬にふさわしい幕引きにしたいと思います」。
「シンガポールをはじめ世界中の人々に懐かしく誇り高いものとして思い出されるような、STCの忘れがたい印象を残せることを望んでいます」。
By ANZ Bloodstock News Staff
[Racing Post 2023年6月5日「Racing in Singapore set to come to an end in October 2024」]