勇気あるランニングスタイルで有名なゼニヤッタは歴史を作ってきた。2009年に牝馬として初めてBCクラシック(G1)を制したほか、数々のG1勝利を収めた。また2010年の米国年度代表馬に輝き、最優秀古牝馬としてエクリプス賞を3回受賞し、殿堂入りを果たしている。そのゼニヤッタは13年間の繁殖生活に終止符を打ち、次のステージに入ることになった。
ゼニヤッタはジェリー&アン・モス夫妻の所有馬であり、競走引退後はレーンズエンド牧場で繋養されていた。そして長年にわたって妊娠しつづけることに困難をきたし、仔馬にその才能を伝えることができなかった。
競走年齢に達した4頭の仔馬のうちコズミックワン(Cozmic One)とジコニック(Ziconic)だけがデビューを果たしたが、コズミックワンは5戦して掲示板に載らず、ジコニックは2回2着になったものの未勝利を脱することができなかった。
レーンズエンド牧場のトッド・クランチ場長はこう語った。「もう19歳なので、今年も繁殖させることは実際には難しいでしょう。いずれにせよ、アンはゼニヤッタが仔馬を生むたびに1年の休養を与えたがっていました。もし来年に繁殖させようとしたら、次の仔が生まれるときは21歳になっています」。
「年齢とともにリスクファクターは上がっていきます。チャンスに賭けてみる価値はないでしょう。出産に関してはわりと安産ですが、妊娠させ続けるのは少し大変です。獣医師はかつて隔週だったゼニヤッタのモニタリングを隔月に減らしていて、それに応じた治療方法を取っています」。
ゼニヤッタは6月9日に最後の仔となるウォーフロントの牝駒を出産した。クランチ場長によると母子ともに健康で順調だという。この仔馬が離乳すれば、ゼニヤッタはそのままレーンズエンド牧場(ケンタッキー州ヴァーサイルス)で余生を過ごす予定だ。
クランチ場長はこう続けた。「この牝駒は脚が長くて体高が高く、顔には母親とそっくりな作(白斑)があります。素晴らしい仔馬です。ゼニヤッタは競馬界のアンバサダーのような馬で、繁殖を引退した今、ファンには彼女を見るチャンスがあるかもしれません。彼女を世話してきたことを光栄に思います。これまで携わってきた馬とは違います。彼女は人懐こくて注目の中心になるのがとても好きなのです。本当に特別な馬です」。
ゼニヤッタ(父ストリートクライ)の通算成績は20戦19勝(このうち重賞は17勝、G1は13勝)である。ジョン・シレフス調教師により管理され、歴史に残るようなキャリアを送ったが、最後のレースとなる2010年BCクラシックでブレイムの2着となり唯一の敗北を喫した。獲得賞金は730万ドル(約10億2,200万円)以上にのぼる。
彼女が送り出したほかの仔には、6歳のメダグリアドーロ牝駒ゼルダ(Zellda)、3歳のキャンディライド牝駒ジクハ(Zilkha)がいる。
By Corrie McCroskey
(1ドル=約140円)
[bloodhorse.com 2023年6月11日「Zenyatta Retires as Broodmare, Staying at Lane's End」]