ファンタスティックムーンは独ダービー(G1 7月2日)で父シーザムーンと不気味なほどそっくりの華麗なパフォーマンスを披露した。9年前の独ダービーで父が成し遂げた快挙を模倣したのだ。
ゲルスドルフ牧場(Gestüt Görlsdorf)のシーザムーンは独ダービーで大勝利を収めた後、ランウェイズスタッドで供用されることになった。2014年独ダービーでシーザムーンはクリストフ・スミヨン騎手を背に道中先頭で逃げていたが、直線に入るとコースを大きく横切りスタンド側の外柵のほうまで移動した。しかしそのロスにもかかわらず、11馬身差の圧勝を決めたのだ。
今回の独ダービーでの違いは、ファンタスティックムーンが少しばかり折り合いを欠き、鞍上のルネ・ピーヒュレク騎手が同じ作戦に打って出ようとしたとき依然として馬群の後方に控えていたことだ。しかしコースの外側にたどり着いたとき、急速にトップギアに入り、最終的にミスターハリウッドに2¼馬身差をつけて優勝した。
ファンタスティックムーンはすでに父シーザムーンにとって15頭目の重賞優勝産駒になっていたが、今回の勝利でコロネーションS(G1)優勝馬アルパインスター、昨年のコーフィールドカップ(G1)優勝馬ダーストンに次ぐ3頭目のG1優勝産駒となった。
これによりファンタスティックムーンは種牡馬になるためのポールポジションに入った。独ダービーの優勝馬は、アカテナンゴ・ランド・アドラーフルークの3頭だけを見ても分かるように、名種牡馬リスト入りするのはほぼ確実だ。ファンタスティックムーンはすでにドイツの誉れ高い2歳戦、ヴィンターファヴォリテン賞(G3 ケルン)とJRAダービートライアル(G3 バーデンバーデン)を制している。
ファンタスティックムーンの独ダービー制覇はシーザムーンにとって素晴らしい週末の極致となった。ほかにも7月2日(日)に将来有望な3歳牝駒ムスコカ(Muskoka)がブリュマーホーファー牝馬マイル(G3 ハンブルク)で優勝し、7月1日(土)にも4歳牡駒のアシステント(Assistent)がハンザ賞(G2)を制した。
ファンタスティックムーンは生産者のマリオン&フィリップ・シュタウフェンベルク夫妻によりBBAG社9月1歳セールに上場され、リバティレーシング(Liberty Racing)により今では破格の安価4万9,000ユーロ(約760万円)で購買された。
彼はシュタウフェンベルク家の自家生産馬フランジパニ(Frangipani)の第2仔であり、母父はドイツの勝馬ジュークボックスジュリー(Jukebox Jury)である。フランジパニの半姉にはノルウェーのG3勝馬がおり、そのファミリー(牝系)を遡れば、世界で活躍したランニングスタッグ(Running Stag フィリップ・ミッチェル厩舎)の母である仏1000ギニー2着馬フルーリングスタッグ(Fruhlingstag)がいる。
ファンタスティックムーンの半妹である2歳のスタースパングルドバナー牝駒は、ゴフス社オービーセールで主取りにされ、現在ファングミヒ(Fang Mich)と名付けられ、ヘンク・グレーヴェ(Henk Grewe)調教師に管理されている。またフランジパニには現在1歳のマサー牝駒も送り出している。
By Tom Peacock
(1ユーロ=約155円)
[Racing Post 2023年7月2日「Fantastic weekend for Sea The Moon continues in Deutsches Derby」]