クラシック勝利ジョッキーであるマーティン・ドワイヤー騎手(48歳)は7月2日(日)、膝に負った深刻な怪我により騎手生活に終止符を打たざるをえなくなった。それをうけ、彼は"これまで達成してきたことすべてを誇りに思う"と述べた。
ドワイヤー騎手はふたたび騎乗することはないと認めた。2022年3月にブライアン・ミーハン厩舎の馬に騎乗しているときに落馬し、左膝の前十字靭帯を断裂し、同部位の骨を損傷してから、16ヵ月経っていた。
そのあいだに関節の手術を2度受けたが、レースでの負担に耐えられる膝の状態には戻らなかった。
ドワイヤー騎手は7月2日(日)にこう語った。「損傷したのが靭帯と骨の上部だったので、深刻な怪我であることはすぐに分かりました。2ヵ月前に2度目の手術を受けました。その効果を見てから行動に移したかったのです」。
「医師と話したところ、"この膝であればふたたびちゃんとした生活を送れるだろうが、問題を抱え続けて、プロとして騎乗できるほどには強く安定したものにならない"と言われました。もちこたえられないということなのです」。
「あらゆることを試してきました。走れるようになるために、まだリハビリを受けています。バスに駆け寄ることができるほどの状態になりたいのですが、今はそのようなことができません」。
リバプール近郊のエイントリーで生まれたドワイヤー騎手は、15歳のときにイアン・ボールディング厩舎(キングスクレアステーブル)の見習騎手となり競馬界に入った。1996年には見習騎手ランキングの2位となり、平地のビッグレースで定期的に騎乗するまでに成長した。
記念すべきG1勝利は、カジュアルルックの鞍上をつとめた2003年英オークス(G1)で達成した。しかしその3年後の2006年に成し遂げたサーパーシーでの英ダービー(G1)制覇が彼にとって最高の瞬間となった。そして、2021年コロネーションカップ(G1)を義父ウィリアム・ミューア調教師が手掛けるパイルドライヴァーで制したとき、エプソム競馬場のG1競走を完全制覇した。
また、ドワイヤー騎手はフェニックスリーチで香港ヴァーズ(G1)とドバイシーマクラシック(G1)を制し、ナヤラでグランクリテリウム(G1)を制した。さらに伝説のステイヤー、パーシアンパンチのキャリア終盤の騎手として広く知られるようになった。とりわけ2003年にジョッキークラブカップ(ニューマーケット)を制したときの手綱さばきは高く評価された。ドワイヤー騎手はその前年の2002年に自己最多の年間106勝を挙げていた。最終的に昨年2月3日にチェルムスフォード競馬場においてラッキーアヴァ(Lucky Ava)で達成したのが最後の勝利となった。
ドワイヤー騎手は引退後、レーシングTV(Racing TV)のために働き、ブックメーカーのアンバサダーを務めることでメディアの仕事を増やす予定である。彼は"今回の決断に対する反応を謙虚に受け止めており、騎手として歩んできたキャリアを誇りに思う"と語った。
「少し気後れしています。声に出して言ってみると、現実に感じられるものです。大人になってからずっと騎手をやってきましたので、私にとっては一大事なのです」。
「携帯電話は鳴りやみませんし、感傷的になる人間ではないのですが、大変でしたね。みんな私のところに寄ってきて握手してくるのです。本当に恐縮してしまいました。きつい朝でしたが、今なら前に進めると思いますし、準備はできています」。
「ベストを尽くして想像していた以上の結果を残せたことを誇りに思います。中でもエプソムで3つのG1競走を勝てたことは自慢できます。競馬界でのバックグラウンドもなく、家族もいませんでした。ここに到達するまで懸命に働いてきました。私たちが関わっている競馬はそういうスポーツなのです。何でも達成できるのです」。
By Peter Scargill
[Racing Post 2023年7月2日「'I achieved more than I ever thought I would' - Derby-winning jockey Martin Dwyer calls it a day」]