ザック・パートン騎手（40歳）は7月9日（日）に171勝目を挙げ、香港におけるシーズン最多勝記録を更新したことで"陶酔感に浸っている"と語った。

　リーディングジョッキーに5度輝いたパートン騎手はシャティン競馬場の1200ｍのハンデ戦でマジックスプリーム（Magic Supreme）を勝利に導き、ジョアン・モレイラ騎手が打ち立てていたそれまでの最多勝記録170勝を上回った。

　パートン騎手の記録への挑戦は香港の競馬シーズンを魅力あるものにしていた。昨年11月27日に最速でシーズン50勝を達成していたこのオーストラリア人ジョッキーは、170勝を突破することを宣言していた。

　パートン騎手は7月11日（火）にこう語った。「あのように宣言したのは勇敢だったかもしれませんし、愚かだったかもしれません。でもそう言ってしまったからには、プレッシャーを感じながらも何とか頑張って結果を出そうとしたのです。少し窮地に陥ってしまったなとも思っていました。だからゴールラインを越えたときには陶酔感に浸りましたね。仕事をうまく成し遂げた満足感があったのです。今シーズンはいつも話題となり、とても注目されてきましたからね」。

　パートン騎手は記録を更新したことでこのうえない満足感を得ていると述べた。来シーズンは柔軟性が高まり海外遠征することで香港での騎乗回数が減る可能性があるからだ。

　「今後も騎乗拠点はやはり香港ですし、ここを中心に騎乗いくことに変わりはありません。しかし来シーズンは香港ジョッキークラブ（HKJC）が少し融通をきかせてくれ、より頻繁に海外遠征することを許してくれるでしょう。だから、おそらくすべての開催では騎乗しないでしょう。今シーズンは二度とないチャンスだったのです。一番大事なシーズンに賭けてみましたが、幸運にもうまくいきました。最高の気分ですね」。

　パートン騎手は昨シーズンの最終日に、ブラジル人のモレイラ騎手を退け5回目のリーディングタイトル獲得を達成した。一方、リーディングタイトルを4回獲得するなどの偉業ゆえに"マジックマン"の異名をもつモレイラ騎手は、股関節と背中の怪我により昨年9月から戦線離脱していた。

　しかしモレイラ騎手の不在がシーズン最多勝記録を打ち立てる契機となったわけではないと、パートン騎手は言う。「香港競馬史上、1シーズンに100勝以上を達成したジョッキーは3人しかいません。それ自体が大台に到達する難しさを物語っています」。

　「ジョアンと競うことでその目標をさらに高くしていくことができました。つい数シーズン前にジョアンを退け168勝を挙げました。彼がいなかったから違うシーズンになったというわけではないのです」。

　「ジョン・サイズ調教師と組んでることでより大きな支柱がもたらされ、多くのサポートを受けています。また以前関係のあった厩舎からのサポートもあります。それらが大きな後押しとなりました。内面的なモチベーションもあり、自分自身で達成したいこともあります」。

　この記録更新はパートン騎手にとって特筆すべき快挙だった。香港の騎手たちはエージェントを使わず、自ら騎乗機会を得るために働きかけるからである。それに感染予防対策が今年の2月まで続いたため、"余計なストレス"が加えられていた。

　多くの騎手がうまく対応できずに帰国し、規制のために香港に来たがらない騎手もたくさんいました。余計な不安が増して、一日の終わりには疲れ果ててしまうのです。疲れを感じているのは自分だけではないし、長い道のりだということも分かっています。だけどようやくシーズンの終わり近くに辿り着きその先には休暇が待っています。皆リセットして充電して、また戻ってくることができるのです」。

　パートン騎手がシーズン最多勝記録を更新し通算1,600勝を突破したことで、香港でダグラス・ホワイト騎手が保持する生涯最多勝記録1,813勝を抜くかどうかに話題が移っている。

　パートン騎手はこう語った。「野望も欲もまだあり、香港でまだサポートが受けられていて、あらゆることがうまくいっているのなら、来シーズンの終わりにはその記録からそれほど差のないところに達していると思います。そうなると狙いを定めることができるでしょう」。

　「ただ現時点ではこの記録に挑むことを約束するつもりはありません。そのことに全力を尽くすことにはならないでしょう。ただ、念頭に置いておくことにはなりますね」。

By Peter Scargill

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