海外競馬ニュース 2023年07月20日 - No.27 - 3
ゴールデンゲートフィールズ競馬場が閉場へ(アメリカ)[開催・運営]

 北カリフォルニアの名声ある競馬史に終止符が打たれることになりそうだ。ストロナックグループ(The Stronach Group:TSG)が7月16日(日)、2023年の競馬開催終了をもってゴールデンゲートフィールズ競馬場を閉場すると発表したのだ。

 TSGの役員はこの発表を行う際、今回の閉場により南カリフォルニアの競馬が活性化すること望んでいると述べた。TSGは南カリフォルニアにサンタアニタパーク競馬場とサンルイレイダウンズ調教センターを所有している。

 TSGの会長・CEO・社長を務めるベリンダ・ストロナック氏はこう述べた。「TSGはカリフォルニア州の競馬のために揺るぎない努力を続けています。競馬界の今後の成功は、北米屈指のサーキット(競馬場の一群)を誇る南カリフォルニアへの投資を促進するビジネスモデルにかかっています。 サンタアニタパーク競馬場とサンルイレイダウンズ調教センターを最先端の施設として重視することは、カリフォルニア州の競馬の競争力を全米レベルで高め、繁栄できるようにするために不可欠です。これらの施設は競馬番組の質を向上させ、競馬開催日を増やし、馬券が購入できる機会を増やし、最高のホスピタリティとエンターテインメントを提供していきます」。

 今回のゴールデンゲート閉場計画の発表をうけ、カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)は声明を出し、カリフォルニア競馬界にとって最善の道を決定するためにすべての競馬参加者および一般の人々とともに取り組むことを約束した。

 CHRBの専務理事であるスコット・チェイニー氏はこう語った。「ゴールデンゲートフィールズ競馬場は、北カリフォルニアで1年のうち9ヵ月間競馬を施行してきました。CHRBの理事会が8月に2024年競馬開催日程について議論を始めるとき、開催日程の割当ては新たな局面に向かうことを意味するものとなるでしょう。閉場によって、CHRBの職員や受託業者、免許保持者、そしてもちろんゴールデンゲート競馬場の従業員など多くの人々に及ぼされる影響を痛感しています。マイナスの結果を改善できるように、また雇用や活動のチャンスが創出されるように懸命に取り組むつもりです」。

 競馬殿堂入りトレーナーであるジェリー・ホレンドーファー調教師は長年にわたり北カリフォルニアの競馬場でトップトレーナーとして君臨してきた。彼は、影響が及ぼされるホースマンや従事者のことを心配していると述べた。

 「私にとっては特別な場所です。初めてリーディングタイトルを獲得した場所ですからね。ゴールデンゲートフィールズで活動するのは特別なことだったのです。ここ数年でいろいろな変化がありました。悲しいことですし、生涯を通じてそこで働いてきた人をたくさん知っています。彼らにとって大変なことでしょう」。

 ホレンドーファー調教師もそのうち何人が厩舎を南カリフォルニアに移転しようとするのかは分からないと言う。

 「分かりませんね。ちょうどそのことを話していたところです。短期的にサンタアニタにとっては良いのでしょうが、長期的にはどうなのかは分かりません。なぜなら、南カリフォルニアで出走できる馬もいますが、向うに行っても勝負にならない馬もいますからね」。

 グレッグ・ギルクリスト元調教師は、後にチャンピオンスプリンターとなる管理馬ロストインザフォッグ(Lost in the Fog)がゴールデンゲートでのデビュー戦で7½馬身差の勝利を収める光景を目の当たりにした。彼はオークランド・レイダース(NFLチーム)がラスベガスに移り、オークランド・アスレチックス(MBLチーム)もラスベガスに移転しようとしているので、サンフランシスコ湾岸地域のスポーツは苦境に立たされていると述べた。

 ギルクリスト氏は、人々が何マイルも駐車場を埋め尽くしてゴールデンゲートまで歩いてきていた1960年代から現在の変わってしまった状態に思いを馳せながらこう語った。「すべてが変わります。サンタアニタも週3日しか開催しなくなって、けっこう明確になってきていますね。馬の頭数は減少傾向ですし、政治的にもカリフォルニア競馬にとって今は厳しい状態になっています。マイナス面ばかりであまりプラス面はありませんね」。

 ギルクリスト氏はゴールデンゲート閉場により、州北部において持ち回りで開催されるフェア(農業見本市)の実施も難しくなるだろうと推測している。なぜなら、それに参加する馬が今後南カリフォルニアに移動してしまうからだ。

 カリフォルニア州のオールバニー市とバークレー市にまたがって立つゴールデンゲート競馬場が閉場すれば、サンフランシスコ/オークランド地区での競馬が終了することになる。近年、ボストンやオレゴン州ポートランドといった大都市やその近郊でライブの競馬が次々と終了しているだけに心配な動向である。2008年までサンフランシスコ/オークランド地区には2つの競馬場が存在していたが、その年にサンマテオのベイメドウズ競馬場が閉場し、1934年からの競馬史に幕を降ろした。

 CHRBのオスカー・ゴンザレス副委員長は、ゴールデンゲートの従業員とホースマンは威厳と敬意をもって扱われ、今後はオープンで透明性のあるプロセスを辿ることを保証すると表明した。CHRB競馬開催日程委員会の議長をつとめるゴンザレス副委員長はこう語った。

 「さらなる詳細と情報を待っていますが、ゴールデンゲートの利害関係者と北カリフォルニアのホースマンたちに理解いただきたいのは、競馬は継続されるということです。競馬産業の移行計画を受理して実施に移すことになります。近いうちにデルマーで開催されるCHRBの会合(8月17日)と競馬開催日程委員会(8月16日)において、より多くの情報を一般の人々と共有できることとなるでしょう」。

 ストロナックグループ(TSG)は、ゴールデンゲートフィールズの競馬開催が終了すれば、北カリフォルニアから南カリフォルニアに円滑に馬を移動させることに重点を置くと発表した。レースの出走頭数を増加させ、2024年1月からサンタアニタの1週間の競馬開催日数を1日増やすことを目標にしている。TSGはこの統合により競馬番組が充実し、潜在的な賭事機会が拡大し、サンタアニタでの顧客の満足度がさらに引き上げられるだろうと述べている。

 ストロナック氏はこう続けた。「今回の決定が弊社の大切な従業員だけでなく、ゴールデンゲートフィールズの馬主・調教師・騎手・厩務員などに大きな影響を及ぼすことを認識しています。TSGは労働者に対する義務を守り有意義な移行計画の策定に専念します」。

 TSGは今後、カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)、カリフォルニア・サラブレッド馬主会(Thoroughbred Owners of California)、カリフォルニア・サラブレッド調教師会(California Thoroughbred Trainers)、デルマー競馬場、ロスアラミトス競馬場などの関係団体と協力して馬と従業員を南カリフォルニアに移動させる計画を策定し、閉場により影響を受けるすべての人々を支援する。

 CHRBのグレッグ・フェラーロ委員長は、ゴールデンゲートフィールズ競馬場のオーナーであるTSGが近年安全性を向上させてきたことを称賛した。

 またチェイニー専務理事は、イーストベイ(サンフランシスコ湾岸地帯の東側)に場外馬券発売所を新設する可能性については、現在進行中の議論に当然含まれることになると述べた。

By Frank Angst

[bloodhorse.com 2023年7月16日「Golden Gate Fields to Permanently Close at Meet's End」]