日本競走馬協会(JRHA)セレクトセール(7月10日・11日)を訪れた馬購買エージェント、デヴィッド・レッドヴァース氏にとって鍵となる言葉は「コントレイル」だった。彼は目を輝かせながらニューマーケットに戻ってきた。
ファハド殿下率いるカタールレーシングのアドバイザーとして、彼は購買任務を成功させた。極東に進出しつつあるカタールレーシングは、5,000万円で1歳のスワーヴリチャードの牝駒を獲得したのだ。しかしレッドヴァース氏はとりわけ日本の三冠馬コントレイルの初年度産駒に心を奪われており、これらの産駒は当歳セールを大いに盛り上げていた。
「コントレイルが全部持っていきましたね。社台で彼を見たのですが、正直言って、これまで見た馬の中で屈指の美しさでした。理想的な馬というよりは、やや軽めの欧州スタイルの馬かもしれません。でもどの産駒も高値がついて、誰もが手に入れたがっているようでした」。
「本当に気に入った2~3頭を落札しようとしましたが、お察しのとおり、二番手を演じることになりました。というのも、"目ぼしい馬が買えなくてもそれは完全な失敗というわけではないんだ。ここで買うことができたので来春にまたそれを上場することもできるから"というほどの気持ちで臨んでいたからです」。
「当歳馬の取引でこんなに強気なものは見たことがありませんね。桁外れでした。入札はすべて3,500万円ほどから開始され、数億円で落札される産駒もいました」。
カタールレーシングは以前から交流のあった優秀なトレーナー、中内田充正調教師に、落札した栗毛の牝駒を預託するだろう。彼女の父はジャパンカップ優勝馬スワーヴリチャードである。
「1歳セールも信じられないほど好調でしたね。かなり高い売却率でしたが、なんとか美しい牝駒を落札することができました。スワーヴリチャードの初年度産駒は今年デビューし始めたばかりですが、すでに4頭が勝ち上がっています。彼女の半兄は、日本でG2を制して豪州でG1優勝を果たしたトーセンスターダムです。米国で支払わされるような価格で彼女を手に入れることになったので、少々驚いています」とレッドヴァース氏は語った。
また彼は、ファハド殿下が日本で存在感を高めているのはカタールレーシングの戦略の変化を示していると注意を促した。
「カタールレーシングは豪州や米国でもたくさんの馬を走らせていますが、日本の厩舎に預ける馬も増やしつつあります。残念なことに、英国競馬は苦戦を強いられるでしょう。国際的な競馬事業を運営している立場からすると、英国では賞金がなかなか積み上がらないのです」。
「それでも英国で馬を生産して、出走させ、調教しつづけるつもりです。ここでは最高級の馬が生産され、名種牡馬が供用されています。しかし馬の能力がある程度証明されれば、種牡馬や繁殖牝馬として英国で繋養するつもりでないかぎり、賞金を求めてほかの国に移籍させる可能性が高いですね」。
「それは十分に理解できる方針ですし、ファハド殿下の考えとなればそうすることになりますね」。
By Tom Peacock