豪州で競馬の魅力を広げるために、メルボルンカップ(G1)で騎乗するジョッキーたちにマイクがつけられる日が来るかもしれない。そのアイデアに、英国競馬界の関係者たちは興味を示している。
メルボルンカップの舞台であるフレミントン競馬場を統括するレーシングヴィクトリア(Racing Victoria)のCEOアンドリュー・ジョーンズ氏は8月8日(火)に行われたインタビューでそのアイデアを取り上げ、ファンとのつながりを保持することの重要性を呼び掛けた。「私たちはかなり有利なスタート地点に立っていると思います。だから何もしないで競馬が後退していくのを見ているよりも、それを活かして競馬を成長させるべきです」。
そして、F1ドライバーがピットクルーとどのようにマイクを通じてコミュニケーションをとっているかを引き合いに出し、試行して安全とされればの話だが、競馬においても騎手と調教師のあいだでの同様のコミュニケ―ションを行うことを考えている。
元アマチュア騎手のジョシュ・アピアフィ氏は現在、スカイスポーツレーシングのキャスターを務めているほか、競馬界でさまざまな役割を担っている。「いろんなことを取り入れ続けなければなりませんね。競馬は10年前と同じスポーツではありませんし、10年後も同じスポーツであるはずがありません。競馬はほかのスポーツほど革新的ではないと思います」。
アピアフィ氏はゴルフ中継が改善されていることを称賛しつつ、競馬でもエクワイン・プロダクションズ社のジョッキーカメラ(JockeyCam)やトータル・パフォーマンス・データ社(TPD)の追跡データが利益をもたらしていることを指摘した。そして英国では騎手へのマイク装着も実験的に行われていると述べた。
そして、「人々をイノベーションの旅に連れて行くべきです。発走地点への移動中にジョッキーに話しかけ、馬の動きや馬場状態がどうであるかを聞くことができたら最高ですね。競馬はエンターテインメントスポーツであり、楽しませる必要があるのです」と付け足した。
ITVレーシングのおなじみの司会者であるオリー・ベル氏はこう語った。「アイデアが浮かんだら、誰でも試しにやってみるべきです。うまくいかないのであれば、やめれば良いのです」。
「ファンを魅了する方法として新しいアイデアを試すことに反対するわけではありません。ただ、これが最も実践的で論理的な解決策かどうかは分かりません。なぜなら、豪州で話されているほど実際の場においてうまくいくとは思えないからです」。
「それでも、ジョッキーにマイクをつけるのは面白いですし、レースの喧騒を聞けるのは楽しいことです。一方で、インタビュアーが騎手に話を聞くほうが有意義であるとも思います。ルビー・ウォルシュ元騎手がポール・タウネンド騎手に道中どのように走っていたのか、どのように仕掛けようと思っていたのかを聞くほうが、視聴者にとっては得るところが多いでしょう」。
「このアイデアに反対しているわけではありません。つねにいろんなことを試してみるべきですね」。
英国競馬のプロモーションとマーケティングを行うグレート・ブリティッシュ・レーシング(GBR)のCEOであるロッド・ストリート氏はこう語った。「騎手や調教師にマイクをつけるというアイデアは新しいものではなく、英国でも以前から議論されてきました。最近も行われたところです」。
「競馬中継に新しい技術を取り入れることで、新規ファンや若いファンを引き付けるチャンスがもたらされます。しかし、先ほど述べたようなイノベーションを取り入れるプロセスにおいては、どのような利益をもたらされるのか、どうしたら競馬参加者にとって満足のいくものになるのか、また生きた動物が関わることによって考慮すべき安全面の課題は何かについて理解することが必要です。いつものことながら悪魔は細部に宿るものです」。
「もうひとつの重要な要素は私たちの商品であるレースが比較的短いということです。短い競馬中継に詰め込める情報は限られています。情報が多すぎると強化ではなく、ごちゃごちゃしたものになりかねません。新たに追加される技術はライブで伝えるものよりも、振り返って見るときに効果的なことが多いのです」。
「私の考えでは、競馬中継において新技術を取り入れるときの出発点は、映像のプロである放送局と組んで、試行して学び、何がうまくいき、何がそうでないのかを見つけることです」。
By James Burn